第2章 神が見守る穏やかな日常
第4話 少し成長した僕の日常 - Ⅰ -
- スターチス子爵 屋敷 -
今僕は箒片手にだっだぴろい裏庭の掃き掃除をしている。
緑の季節で芽吹いた木々からの落ち葉が溜まり、庭掃除が非常に大変になる季節だ。
昨年までは毎年屋敷で働く下僕総出で定期的に掃除を
「…はぁ」
ため息をつきながら、僕は"風"を操作して落ち葉を集めつつ、魔法の練度が足りず集めきれなかった落ち葉を箒で掃いていく。
スキルの儀から既に5年以上経過し、僕は10歳となった。
最初の2年は
いきなり森に連れていかれたと思ったら、魔獣に追い掛け回されて泣いてしまったのは思い出したくもないしょっぱい思い出だ。
そのおかげで、"肉体強化<風>★"の取得とスキルこそ発現していないが森の浅い部分に生えている薬草や森の恵みを、魔物から隠れつつ出会わない様に避けながら往復出来る様になった。
調合の勉強をしている現在、下位とはいえ薬草を自分で入手出来るのは懐に非常にありがたい。
しょっぱい思い出だが有用ゆえに良く思い出してしまう悲しい循環が出来てしまっている。
人間死の恐怖が迫ると頑張れと学んだ。脳筋怖い。
「…はぁ」
もう一度ため息をつきながら、生活魔法:土を使用して集めた落ち葉を囲う様に土壁を作成していく。
『3年頑張っても僕の腰程度しか高く出来ないのは才能の問題なんだろうか。執事長の"ルーカス"さんの生活魔法:土は屋敷の壁くらいの高さが出来てたのに、、』
3年程前から生活魔法の勉強のため、週4日程度屋敷の下僕として仕事をしながら生活魔法の使い手であるルーカスさんから指導を受けている。
仕事を始めた初日に、2年努力して一番自信があった生活魔法:風を見せた時の、ルーカスさんの残念な物を見た様な視線を思い出してしまう。
そんな僕にも丁寧に生活魔法の指導と、鬼の様な厳しさで執事としてのなんたるかを叩き込んでくるルーカスさんをさらに思い出してしまい、震えが止まらなくなる。
「…はぁ」
さらにため息をつきながら、付与:耐火(弱)を土壁に施していく。
『ダメだ、ダメだ。屋敷の裏庭とはいえルーカスさんにため息なんてしているのを見られたら、、ベルガ神父のやさしさを思い出すんだ!』
やはり、なんだかんだで一番お世話になっているのは、"封印"スキル持ちのベルガ神父である。
"封印"こそ覚えられていないが、"付与★"が発現し熟練度上げの日々が続いている。
普段は穏やかで優しい神父様だが、お酒が好きなくせに滅法弱い。
酔っぱらって宿舎に押しかけてきたとおもったら、教会宿舎中に"解呪"スキルを使ってせっかく自分で施した"封印"を解除する始末。
これが原因で、僕は朝起きたら自分が死の淵にいる経験をした事が
この頃からだろうか、週に1~2日薬剤師の"ミント婆ちゃん"の元で修業を開始したのは。
必死に酔い覚ましの薬を作って、ディルク神父仕込みの罠を宿舎周りに仕掛けて安全確保に勤しんだのは良い思い出だ。
『この世界で僕だけじゃないかな、罠に掛かった相手に酔い覚ましをぶっかけるだけの罠を真剣に作り続けていいるのは。』
「……はぁ」
最後にため息をやっぱりついて、土壁の中に溜まった落ち葉に生活魔法で火をつける。
次に風を操作して周りに飛び火しないよう結界を張りつつ、広範囲に薄い結界を張り目視出来ない範囲に人が居ない事も確認する。
風の単属性操作とはいえ、結界を複数層貼り続けるのはやはり大変だ。
どのくらいの時間が経ったろうか、落ち葉は燃え切り残りは太い枝が残っているだけとなった。
『熱い。でも、もうちょっとだ。温度差で風邪引かないようにしないと、、んっ』
屋敷の方から誰かが向かってくる気配がして、そちらに顔を向ける。
安全確保用に展開した薄い風の障壁が、屋敷から僕の方向へ順番に壊されていっているので間違い無いだろう。
僕は火を目視確認出来る状態を維持しつつ、屋敷の方に向かっていく。
「あら、トキト君もう終わっちゃった?」
「リージアさん!いえ、まだ集めた落ち葉を燃やしている最中です。
危ないので近づかないでくださいね。」
そういうと、僕の背後を注視する仕草をし、驚いた表情を見せつつも、少し怒ったフリをしながら言う。
「私は君より年上のお姉さんで一人前のメイドです。
ちょーと年上相手のセリフに聞こえないのは気のせいかな?確かに火凄そうだから、少し見に行きたい気もするけどね。」
「今年一人前になったばかりの14歳じ、、すみません。
そうですね、年上のお姉さんなら注意なんてしなくてもわかっている事でした。
この寒いなかどうしました?」
リージアさんの額が痙攣してきたのを見て、僕はすぐさま撤退を決意。
メイドさん達に年齢の話は禁句だと言う事は子爵様含めて共通認識だ。
若い人にも禁句なのは意味がわからない。
「はぁ、いいわ。メイド長が執事長の指示とは言え、子供一人に任せる仕事じゃないから心配してらっしゃてたから見にきたのよ。その様子なら大丈夫そうね。」
「レイアズさんが!「わざわざありがとうございます、もうすぐ終わりそうです。」と伝えてもらっても良いですか?」
「はいはい、伝えとくわ。メイド長じゃないけど、あなたはまだ子供なんだから無理はするんじゃないわよ。
終わったら報告して、食堂で暖かい飲み物でも飲んで休憩しなさい。それじゃあね」
そう言い残してリージアさんは来た道を戻っていった。
"レイアズメイド長"は、屋敷に来た時から色々と世話を焼いて非常に可愛がってくれている。
僕にとっては、孤児院でお世話になっていた助祭のおばちゃん達と同じ母親みたいな存在だ。
『怒る時は怖いけど、、』
『問題無いって自分で言いに行きたいけど、ルーカス師匠からの課題を放り出すのは後々まずい。
うん、頑張って早く報告に行こう。がんばろー』
先ほどまでため息ばかりついていたのが嘘の様に、僕は急いで仕事に戻った。
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