第2話 プロローグ - 2 -


-導きの教会 [導きの神カランコエ]-


目の前の祭壇には消える事無い青い炎が浮かんでいる。


僕は神父様からの教え通り、最大級の礼を取り願いを伝える。



「導きの神カランコエ様、私の行く末を導き賜え」



 僕の声が聖堂に響き渡る。

『(緊張して喉がからからだ。カランコエ様お願いします。戦闘系以外のスキルをください。痛いのは嫌なんです。)』

声には出さず、ひたすら願い心の中で叫び続ける。



 次の瞬間僕の体が一瞬光を放ち収まった。



「おめでとう"トキト君"。今君にスキルが発現したはずだ。祭壇のから降りて確認してみなさい。」

「わかりました、神父様。ありがとうございました」

僕は神父様に一礼し後へ下がる。



 早くスキルを確認したいが、聖堂内で走ったりしたら怒られる。

なんとか走りたい欲求を自制して、まっすぐと最短距離で歩いていくと、既に儀式を終わせた組で御祭り騒ぎ状態の部屋へと入っていく。


 扉を抜けた先で部屋を見回していると、急に人影が僕の前を塞ぐ。

「トキト!聞いてくれよ!"槍術"に"火魔法"が発現したんだ!しかも、槍術は☆☆☆☆クインテットスターだぜ!」

「クインテットなんて凄いじゃないか、リッド!騎士見習いに抜擢されるんじゃないか!?」

「任せとけ、この街を守る騎士になってみせるからさ!トキトも確認したら教えてくれよな」

「いやいや、スキルって教えちゃダメだって神父様が、、って次はアルクに自慢しに行っちゃた。

 うん、僕も早く確認をしてもらっちゃおう。」


 スキルを確認する方法は何通りか存在しているが、基本となるのが"鑑定"スキル持ちに確認してもらうパターンだ。

"制約の神:ゼラニウム"と[守秘義務及び鑑定結果の虚偽申告の禁止]と言う制約している"鑑定士"と呼ばれる職業の人が居るので、お金を払い確認してもらう。

 今回僕達孤児の"スキルの儀"及び"スキル確認の代金"は街からの支援という形で支払われている。

そうでなかったら、鑑定代だけで1M1マースなんて、逆立ちしても払えなかったと思う。


「次の子はこちらにきてください。」

『って、考え事してる間に順番がきてたみたいだ。神様お願いします。生産系のスキルをお願いします。』


「それでは鑑定を実施します。

 一応簡易だけど、仕切りに防音のエンチャントがかかっていますので、ここで話す内容は外に漏れません。

 スキルはあなたの生命線になります、職場を斡旋する都合上ある程度は開示する必要があるけど、自分の信じられる人以外には教えてはいけないよ。」

「わかりました。よろしくお願いします。」

「うん、君は礼儀正しいね。

 他の子は元気いっぱいだったから逆に新鮮だよ。

 それじゃ肩の力を抜いてね。」

そう言って、苦笑しながら僕の頭に手を置き呪文を唱える。


*鑑定*ステータススキャン


何かを確認する様に、目線を動かしていた鑑定士が少し焦った様に言う。


「っと、これは中々やっかいなスキルが発現したね。

 今からスキルの説明をするんだけとちょっと待っていてね。」

そういって鑑定士は仕切りの奥へと向かい、何か指示を出している。


『え?何か変なスキルが発現されちゃった?なんだ、何が発現しちゃったんだ?』


【セルフチェック実行:

 ・魔力量 > 18/20

 ・スキル1>生活魔法☆☆☆

 ・スキル2>セルフチェック☆☆☆

 ・スキル3>吸魔☆☆

 ・制約スキル>亜空☆☆☆☆☆☆

  →制約1>他人に制約スキルに関する事を喋る・伝える事を禁ずる

  →制約2>試練を完了するまでは、寝ている間にのみ亜空に干渉する事が可能(寝ている時に身につけている物を亜空へ持ち込み・保管・設置等は可能。)

  →制約3>他者からのすべての鑑定・遠見系スキルを完全に無効化する

  →試練>亜空に魔力を1000000捧げる(捧げた魔力は亜空の拡張・環境整備に使用可能)】


「へ?せ・・!?」

『せ、制約スキル!って声が出ない。

 喋る事も出来ないって厳し過ぎないか?

 急に目の前に文字が現れたけど、セルフチェックって確か自分限定でステータスを確認するスキルだったはず。

 文字は難しくて読めないけど、書かれてる内容がなんとなくわかる!』


「あれ?でも・・・」


「待たせたね、さっそくスキルの説明を・・ってその表情はセルフチェックが発動したのかな?

 それなら話は早い、君に吸魔のスキルが発現している。

  これは常に自分の周りの魔力を吸い続けるスキルだ。

 これだけ聞けば魔法職の人は誰もが欲しがるスキルの様に思えるが、人には魔力を溜める許容量がある。

 そして許容量があるという事は、限界が存在し、それ以上魔力を蓄えようとすると内側から体が壊れてしまう。

 まだスキルが発現したてだから問題無いと思うけど、この先スキルはどんどん強化されていく。」


「スキルの"昇華"でしょうか?」


「その通り!簡単に言ってしまえば、スキルは使えば使うほど熟練度が上がっていく。

 そして一定の熟練度に達するとスキルの冠位スターが上がり一段階強化される。

 吸魔は発動を止める方法がわかっていないスキルだ。

 君が使いたくなくても、どんどん熟練度が上がり周りから魔力を吸い取る効率が良くなり、いつか君の器が耐えきれなくなる時がきてしまう。

  幸運な事にこの街には"封印"スキル持ちの魔法使いが教会に所属している。 

 過去の事例から完璧に吸魔を止める事は出来なくても、熟練度上昇を遅延させる事は出来る。

 君にはこの後スグに"魔法の神:カトレア"の教会で見習いとして働きながら、魔力の許容量の増加と魔力消費の多い魔法や魔術を勉強して将来に備えて貰う事になる。

  早口での説明になってしまったが、生活魔法については向こうの教会で教えてもらうと良い。

 魔法教会カトレア神の教会には先ほど前触れを出したので、今すぐに向かってほしい。案内は呼ぼう。」


僕は急いでいる様子の鑑定士の様子から、色々説明を聞きたい衝動を我慢する。

「魔法を早く覚えなきゃいけないって事ですよね。

 先に神父様達に挨拶をしたいのですが、ダメでしょうか?」


「気持ちはわかるが、君の年では魔力許容量が非常に少ない。

 スキルが発動してしまっている今、なるべくすぐに行く方が良いだろう。

 なに、同じ街に居るんだ直ぐに会えるさ。

 もちろん、君が住んでいた孤児院には責任をもって事情の説明はしておくから安心してくれ。」


「そうですか・・。ありがとうございます。」


「君にゼラニウムの導きがあらん事を。頑張りなさい。」

そういって頭を撫でてくれた。



こうして鑑定士に呼ばれた案内人と共に、僕は魔法教会カトレア神の教会に向かった。


『吸魔で得た魔力を亜空に送り続けられるって事だから、僕にとっては有用なスキルじゃないか!』


なんて、頭の中で吸魔対策が出来た事に安堵を覚えながら。




実際に"吸魔が有用"なんて考えは甘かったと、僕は散々思い知らされるのは別の話だ。








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