第1話 プロローグ - 1 -
-孤児院 [礼拝堂]-
孤児である幼い少年が、礼拝堂で一心不乱に祈りを捧げていた。
周りに目を向ければ、同様に祈りを捧げる少年少女が多数存在する事がわかる。
この世界"エルダー"は、神々からの影響を基盤に成り立っている。
人は神からスキルを授かる事で、魔獣との戦いに勝利し、日々の生活が彩り豊かになった。
人々は感謝を込めて日々神に祈りを捧げる事が習慣となっている。
"スプリングス王国"では、5~7歳になった少年少女に神々からスキルを授かる事を推奨している。
この日スキル発現に体力・魔力が耐えられると判断された子供達が、"導きの神:カランコエ"からスキルを授けて貰う事となっている。
得られたスキルによって、職業もある程度決まってしまう事もあり、幼い少年少女の祈りが、"感謝"から"願い"になってしまうのは仕方のない事であろう。
冒険者を夢見る少年は願う「強くかっこいいスキルをください」
神父に憧れる少女は願う「神父様のようないやしのスキルをください」
そんな少年少女を苦笑しながらも優しく見守る神父が誘う。
「さぁ、祈りの時間は終わりです。食事にしましょう。
スキルの儀を受ける子は、食事の後移動になります。
準備をしてから食堂に行くように」
-教会 [
小さい村等は、一つの教会に複数の神々を祀ってる場所も多いが、ここは交易都市としてはそれなりに大きな街である"タイム"。
人気のある神々はそれぞれ別々に教会があり、多くの参拝者が朝の祈りを捧げている。
神父に連れられてやってきた少年少女も、普段の騒がしい状態から一転して、希望と不安が合わさった表情で緊張している事がわかる。
導きの神に仕える神官は慣れた様に、安心させる様に、穏やかに子供達に話掛けながら、案内を開始した。
ここで、物語が始まる前に国の制度について説明させてほしい。
ここは普人種が多く暮らし、四季彩が豊な国"スプリングス王国"。
数十年単位で人種同士の戦争が無く、魔獣のスタンピートが起こってしまう事があるが、比較的平和が続いている国だ。
この国では、子供達に発現したスキルに適した仕事を斡旋する方針を国が主導している。
スキルの方向が合った職業に就く事で品質向上を狙い、自国への帰属意識の芽生えといった狙いがあっての事だが、スラムの人口は減少を続け、他国への人の流出も減っている。
当然家業を継ぐ者・夢を追いかける者を無理に従わせる方針では無く、自分の適正がある職業を知ってもらう事も狙いのひとつになっている。
すべての地域で正常に機能しているかと問われれば、正常に機能している地域の方が少ないだろう。
タイムの様に、日々東西南北あらゆる人々が中継点としている大きな土地のある街だからこそ、今は"機能している"レベルで行えている。
王都やタイムに似た中継地以外の場所では、"家業を継ぐ"か"兵士に志願する"か"冒険者となり夢を追いかける"かの大きな括りで3択程度しか無いだろう。
また、タイムを治めるスターチス子爵により、様々な理由で孤児になった者達を支援を行っている事で、子供の浮浪者・犯罪者が極端に居ない街でもある。
当然子供とはいえ無料で支援が受け続けられる訳ではなく、スキル発現前に以下の契約を"契約の神:ゼラニウム"に誓う事が条件となっている。
Ⅰ. スキル発現後は、スキルに適した職場で13歳になるまで下働きとして経験を積む事
Ⅱ. 将来孤児の子供達への支援に協力する
Ⅲ. 街が危機に陥った場合に、徴兵を受け入れる
Ⅳ. 領主及び下働き受け入れ側は、各々の活躍・功績によりⅢ項を免除する事とする
Ⅳ項に記載がある通り、孤児側だけでなく、領主及び受け入れ側にも契約が発生している。
活躍・功績と記載されているが、基本的には1人前と認められればⅢ項の免除対象となり、成人である13歳になるまでに毎年平均して8割程度が免除されている。
残りの子供達も、普通に生活を送っていれば10代の間には基本的に免除となる場合がほとんどだ。
- 記録の神殿 -
本で埋め尽くさてれいる部屋の中で、男が空中に浮かぶ鏡に映る映像を見ながら言う。
「基本的に身寄りのない孤児の子は、契約を交わしてスキルの儀の代金を街から出してもらうしか選択肢は無いんだけどね。
どうしても、魔獣や盗賊になってしまった子供達が居る以上、戦いが起こり日々多くの命が消えていく。
戦いに子供は連れていけない以上、戦果によっては孤児が当然生まれる。
街中の治安低下を回避し、支援してくれた街への恩義を感じる子供も少ない、中継地故に行商人が多かった街に
先代領主はやり手だね。
色々制約があるかもしれないが、他の街で孤児になるよりタイムは生活が送りやすいのも確かだろう。」
男が鏡に向かって手を翳すと、一人の子供がスキルの儀を執り行うシーンに切り替わる。
「さぁ、長い長い説明はここまでにして
僕は誰かって?そうだね、せっかくだし自己紹介をしておこう。
僕は"記憶の神:エーデルワイス"。
君たちと同じ、
"運命の神"が言うには、今日僕は[のんびりだらだらした主人公が成長する物語]に出会って、今後お気に入りの物語になる運命らしいんだが、、。
あぁ、楽しみだ!王道の英雄系が趣味の僕がお気に入りになる脱力系とはいったいどんな物なのか!?
さぁ、さぁ、会話はここまでだ。物語を一緒に読みに行こうか」
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