後編 おとな
どうしよう、赤ちゃん産まれちゃう、どうしようどうしよう、さすがにヤバいよ。
なんでこんなことになったんだろう。
先生の転勤前に、思い出作りでちょっと遊んだだけじゃん。先生の赤ちゃん、育てたいけど親になんて言えばいいか分かんないよ。
私は前世で弟に殴り殺された。チャランポランな弟で、親の期待はいつも私に向けられていた。弟の分まで一生懸命勉強して、親のお手伝いもして、頑張ったのに最期はあっけなかった。真面目な人が損をする世の中なんだなぁって、薄れていく意識のなかでぼんやり考えてたこと覚えてる。
それで、今回。一度限りの人生だし、思いっきり楽しもうって思った。やりたいことはやって、やりたくないことはやらない。我慢なんてしない。楽しければいいの。だって、いつ何が起こるかなんて分かんないんだよ?世の中不条理なのだ。
先生に奥さんがいることは知ってた。写真を見せてもらって、すっごくキレイな人だったこと覚えてる。でも、だから何?私だってずっと先生のこと好きだったんだもん。奥さんがいるからって嫌いになれないよ。どうせ会えなくなるんだしって思ったら、なんか大胆になれた。先生も拒否しなかったよ。
たった一回だったのに、先生と私って相性よかったのかな。
あ、これまずいかも、めちゃくちゃお腹痛い…
──────────
生まれちゃった、赤ちゃん。あーもう、そんなに泣かないでよ、泣きたいのは私だよ!どうしよう、どうしよう…やっぱりこんなに泣く赤ちゃんなんて無理!ごめんね、育てらんないよ。
あのロッカー、ちょうどいい大きさかな…誰かに見付かって助けてもらえるといいね。元気でね、バイバイ。
『ごめんなさい』
ある親子の夢と希望 霧乃文 @kirinoaya
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