ある親子の夢と希望
霧乃文
前編 こども
前世の記憶を持って生まれる人は、はたして世界にどれくらいいるのだろうか?
私は前世の記憶持ちだ。
前世の私は、我ながら最低だった。子供の頃からとても残虐で、体が大きいことを活かしてガキ大将というかいじめっ子だった。ケンカが日課の思春期、暴走族からギャング、ヤクザへと不良のエリート街道まっしぐら。親にお金を借りようとし、拒否されてカッとした私は両親、祖母、姉を撲殺した上で放火。その事件で足がつき、ケンカでバラした遺体の件でも逮捕。刑務所内でも威嚇していたら、他の囚人に殴り殺された。最低だ。
目を開けた瞬間、新しい目覚めを感じ取った私は、今回こそは人のために生きて親孝行したいと覚悟を決めた。
そんな私に母が涙を流して語りかけてくれた。
『ごめんね』と。
どういうことだろう?お母さんも前世の記憶持ちだったのかな?私がおしゃべりできるようになったらたくさん話そうね、そんな想いを込めて力強く泣いた。
泣いて泣いて、気が付いたら真っ黒だった。いや、正確には生まれたての私はあまり目が見えないので、雰囲気で感じ取った。ここは、真っ黒な世界だと。
ギィっと耳障りな音の後で、バタンとドアが閉じられた音がした。
私は理解した。
私の今回の人生は閉じられた、ということに。
たくさん泣いたらお母さんは迎えに来てくれるかなぁ?親孝行するチャンスも得られないなんて、前世の報いなのかしら。あぁ、段々息苦しくなってきた。もう泣く元気もない。
息が苦しいよ、お母さん…
『ごめんなさい』
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