第3話
普通、転校生といえば既存の集団からすると訳もなく英雄であり希望の星だ。しかしそんな期待は裏切られ、なんだか侵略されている、そんな気持ちが僕たちに蔓延していた。いつしか彼女を影で「宇宙人」と僕たちは呼ぶようになった。
雨の日のことだった。昼休みに外遊びが出来ずに退屈だった僕たちは暇を持て余す術を探していた。誰かが言い出した。
「じゃんけんで負けたやつが宇宙人のランドセルにカッターで傷をつけてやろうぜ」
誰も反対しなかった。僕たちはあまりにも幼く純粋で邪悪だった。もはやじゃんけんなどしなかったように思う。翡翠のようだったランドセルは醜く肉をむき出した。
「なんだか雑草みたいだな」
ぼくたちはそれを元のロッカーに戻し、それぞれ席についた。
昼休みが終わり、五時間目のチャイムと同時に彼女が戻ってきた。まだ気づかれてはいない。いつもと変わらず窓の外に目をやる彼女の横顔を見やると、より一層雨足が強くなり、窓ガラスを叩く雨粒が彼女を通り抜けて全て僕を目掛けている気がしたんだ。
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