第1章ー8 苦しい状況


「私を舐めているとォォォォォはぁはぁ、痛い目を見るわよぉぉぉ…」


「これが蛇女の本来の姿かよ…もう戦う体力なんて残ってねェ…」


晃孝あきたか!ここは全員で協力するぞ!!」


「分かったベリト!!」


「よし!絶対取り返す」


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ、あァァァァァァァァ!!イライラするぅぅぅ!!」


エキドナの体はどんどん肥大化している。口はさけ、髪の毛は伸び、目は真っ赤に染まった。下半身の蛇の模様はマダラ模様になっていてどんどんその模様も大きくなっている。声帯も低くなっている。


「………なにかおかしくないか?」

少しの異変に気づきだしたのはベリトだ。本来の姿を取り戻したエキドナだったが全く攻撃を開始しないのだ。


「どういう事だよ…これじゃ俺たちも迂闊に動けねェ…チェルノどうする?…」


「だが攻撃してこないってことは今がチャンスなんじゃないか?」


「いや晃孝ちょっと待ってくれ…ここは様子を伺って戦った方がいい…」


「それは無理だベリト。礼羽れいはは今あいつに囚われてるんだから一刻も早く助けないと…」


礼羽は肥大化したエキドナにまだ囚われていた。そんな危ない場所に礼羽を晃孝は放っておけるわけがなかった。


「それもそうなんだけど…」


ベリトが悩んでいるうちに晃孝はさっさと走り出して行ってしまった。「ちょっと」と止めてももう晃孝には声が届かなかった。


「今すぐ助けるぞぉ!!待ってろ礼羽!!」


礼羽に向けて一直線に走り出すが、エキドナは50階もあるビルぐらい大きくなっていた。


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ、ああァァァァァァァァ」


エキドナはどこか苦しそうにしている。

自分の肥大化に意識が追いついていってないのだ。自分の子供達を目の前で殺されたエキドナは今までにない怒りをおぼえていた。今すぐ殺してやるという殺気を隠しきれていない。


「動かないんだろ!!エキドナ!!もう終わりだ!!」


晃孝はエキドナの近くにいる礼羽を見据えて勝利宣言をする。それを感じ取った礼羽はすっと立ち上がる。


「頑張って!晃孝!私はここにいる!ここで待ってる!!」


「ああ!待ってろ!」


晃孝はそう言ってニッコリと笑った。だがそう簡単にエキドナは倒されてくれないようだ。体を動かそうと必死で自分の意志に抵抗する。


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ、今すぐに…今すぐ…今…敵を…アアアァァァァァァァァァァァァァァァァ..............」


エキドナはまだ肥大化をやめない。エキドナは最後の悪あがきで自分の蛇の尻尾で晃孝の右耳をムチの様にしならせて狙う。晃孝はそれに反応することはできずそのまま飛ばされてしまう。晃孝の覚醒状態にもガタがきていた。


「くそ…体が動かねェ…くそ!くそ!!」


「人間でそこまでできれば上出来だよ晃孝!逆に生きてるのが不思議だよ…あとはチェルノと僕に任して!」


「すまねェ…頼んだ…」


晃孝はこの戦いから途中退出をした。

エキドナは晃孝が逃げたことが許せなかったのか体を震えさせている。


「なぜ?なぜなぜなぜなぜなぜなぜェェェェェェーーー!!!はぁはぁはぁはぁ、ここまでしといて途中で逃げるのは許さないィィィィ殺してやるわァァァァァァァァ!!」


エキドナの体は肥大化をやめない徐々に徐々に大きくなっていく。だがエキドナは怒りもどんどん肥大化していく。


「許さないィィィィ許さないィィィィもう1人になってしまったじゃない……153年前のこと思い出してしまったじゃない……ああああ」


「なんだ…153年前って…」


倒れていながらもエキドナの話を耳を立てて聞く晃孝。


「はぁはぁ、そうね…丁度あんたらみたいな歳の奴だったわね…私の旦那は殺されたのよォォォォォ!!多重人格者ポラプレスにねェェェェーーー!!!」


「えっ!?ポラプレスに!?」


「うそ…」


晃孝と礼羽は二人揃って驚きの顔を隠せていない。チェルノボグとベリトもまた驚いている。


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ、許さないィィィィ私の旦那はねェ…カオスティア(8人の悪魔)だったのよォォォォォ」


「蛇女の旦那がカオスティアだったのかよ!じゃあ蛇女が受け継いだのか…」


「そうよォォォォォ、はぁはぁはぁはぁ、あの人は殺された。そして子供達も殺された。はぁはぁ、もう私には何ひとつ残っていない….」


「待て待てじゃあ蛇女の年齢は153歳以上ってことか…」


「そうよォォォォォ、私は250歳よォォォォォ、はぁはぁはぁはぁ」


「こいつ…凄い生きてやがる…ベリト!気をつけろ!」


晃孝が改めてエキドナの怒りの強さを再確認し、ベリトに気をつけるように言う。


「だから貴方達は必ず殺す…そしてこの女の子(礼羽)を捕らえておけばいつかポラプレスと出会う運命にあるのよォォォォォポラプレスを殺すことが出来るぅぅぅぅ」


「なんでその事を知ってんだよ!」


晃孝は礼羽の祖母に教えて貰っていた事を自分達しか知らないと思い込んでいたようだ。


「知ってるわよォォォォォでもこれ以外のことは何も分からないわ、はぁはぁ、私はこれだけ旦那から聞いたのよぉはぁはぁ」


「そうか…くそ!!やっとあいつらの目的がわかった…あいつらの目的は礼羽じゃない…ポラプレスなんだ…でも何でだ…」


晃孝は必死に考えるが現状の情報量では答えを導き出すことはできなかった。


「まぁそうよォォォォォ私達の目的はポラプレスなのよォォォまぁこれ以上の情報は与えないわァァァァァ」

「そうねェ…ポラプレスの名前は賢治と言ったけねぇ、あとその時にサクレ族もいたわね…はぁはぁ、確か名前は留子だったかしら?はぁはぁ」


「私のひいおばあちゃんの名前…」


「なんだと!?礼羽のひいばあちゃんもその時にいたのかよ!?」


「まぁいい晃孝!今は礼羽さんを助けることだけ考えればいい!」


ベリトはエキドナに向けて走り出す。エキドナはそれを見てでかい尻尾でベリトの腹を突き刺そうとしてくる。しかしベリトは小さくジャンプをして左手を尻尾におき、次は右手をおき、側転をするかの様に尻尾の攻撃をかわした。こんなのまだまだよけられるそんなことを言っていた矢先エキドナは次の一手に出ていた。突き刺そうとして空振りした尻尾をベリトが地面につくと同時にベリトの横腹を強打させた。ベリトは横方向に吹っ飛ばされる。


「ぐはァァァァ、くそ!僕ももうさっきの戦いで力が…」


それを見たチェルノボグが次は俺の番だと走り出す。エキドナはさっきの攻撃態勢から立て直し今度はチェルノボグの真上から何度も叩きつけようとしてくる。チェルノボグはそれを左右に避けていくが、避けた場所に続けてエキドナは叩きつけようとしてくる。


「くそ!!こんなんじゃ埒が明かねェー!」


しかしチェルノボグに気を取られすぎてエキドナは背後から攻めてくるベリトに気づくのが遅れた。


「チェルノが稼いだこのチャンス!貰った!!」


ベリトはエキドナに攻撃を仕掛ける。


「うるさァァァァァァァァい!!殺してやるぅぅぅぅぅぅぅぅはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」


ベリトは攻撃を完全に入れたと思ったが何故か自分がチェルノボグの方向へ飛んでいた。チェルノボグはベリトとぶつかってドミノの様に倒れた。


「なんだ…何が起こったんだ…絶対攻撃は当たったはず!」


なぜか、それはエキドナを見ればすぐに分かった。それはエキドナの伸びた髪の毛が蛇の様なものになっていた。ベリトはその蛇の様なものに捕まり投げ飛ばされていたのだ。あまりにも瞬間の事でベリトは分からなかったのだ。


「くそ!!もう僕も体が…」


ベリトにも限界が近づいていた。ケルベロスとの戦いで受けた毒が今となって物凄い効果を発揮してきたのだ。


「ああァァァァァァァァァァァァァァァァ、はぁはぁはぁはぁはぁはぁ、憎いィィィィ憎いィィィィ」


エキドナは肥大化をやめない。


「おい、まじか…なんだよ」


チェルノボグは変な光景を見てしまった。その後ベリトと倒れている晃孝もその光景に見入ってしまった。そこに映っていたのは、エキドナの目からたくさんの涙が流れていた。しかもその涙は赤い血の涙だった。


「フゥーふっふっふっふっふっフゥーふっふっふっふっふっフゥーふっふっふっふっふっフゥーふっふっふっふっふっ」


エキドナは急に笑いだしおかしくなったように殺してやるを連発して言い出した。


「なにこれ…怖い…」


エキドナの傍にいた礼羽はエキドナに対して恐怖感が溢れ出した。晃孝達もそれを見て少しの間硬直状態に陥ってしまった。


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ、あああァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」


エキドナは肥大化しながら血の涙を流し、それにエキドナの尻尾はボコボコと沸騰した時の様に盛り上がったりし始めた。


「ああァァァァァァァァ、はぁはぁはぁはぁ」


エキドナは叫び続ける。それをチャンスだと見たチェルノボグは棍棒を握りしめてエキドナに攻撃を仕掛ける。


「アアァァァァァァァァ、やめろォォォォォォォォォォ」


エキドナはどでかい悲鳴をあげて、チェルノボグを尻尾でムチの様に狙う。その攻撃をチェルノボグはエキドナの尻尾の上を沿って転がり避ける。チェルノボグは避けたあとグッとエキドナとの距離を詰めエキドナの顔の所までジャンプした。


「てめェェの人生も可哀想だとは思うぜ…だがこの勝負を放棄する理由にはならねェェー!!この勝負勝って礼羽を取り戻す!!」


チェルノボグは肥大化したエキドナの鼻の辺りをボールを打つバットのようにかっ飛ばそうとする。


「嫌ァァァァァァァァァァァァァァァァ、嫌だァァァァァァァァァァァァァァァァ」


エキドナは蛇の様な髪の毛をチェルノボグに向けてみだれづきを喰らわせる。


「もうお前の悪あがきは飽きたんだよ!!蛇らしいよ!!」


チェルノボグはそのみだれづきを1本ずつ叩き割っていく。しかしチェルノボグは空中での勢いが次第に消えていって地面に落ちてしまう。それを逃さないエキドナは地面にいるチェルノボグに対して蛇の様な髪の毛を突き刺してくる。チェルノボグは当たらないように必死に避けるがエキドナの乱舞は終わらない。


「もう貴方達の好きにはさせないわァァァ」


「くそ!!避けるだけで精一杯だ!!」


そしてチェルノボグはエキドナの攻撃をもろに喰らってしまう。そして何度も何度もチェルノボグの腹の部分を突き刺した。周りはその乱舞で砂ぼこりがたっていてチェルノボグを見ることはできなかった。


「チェルノ!!!チェルノ!!!大丈夫か!!」


晃孝は必死にチェルノボグに声をかける。しかし砂ぼこりが消えて見えたのは、ボロボロになり倒れていたチェルノボグだった。


「チェルノォォォォォ!!!」


晃孝とベリトはボロボロになったチェルノボグを見て声をあげる。


「はぁはぁはぁはぁ、このままあんたらもやるわよォォォォォ!」


「晃孝!動けるか!?」


ベリトは倒れている晃孝に対して声をかける。


「だめだ…休んだとしてももう動かねェ…」


「僕ももう完全に毒がまわって動けない…でも最後の力を振り絞れるなら…」


少しの力を振り絞り立ち上がるが、エキドナは動かさまいとベリトに尻尾でぶっ飛ばす。

そしてベリトも動けなくなってしまった。


「はぁはぁはぁはぁ、もう終わりよォォォ私の勝ちィィィィ、はぁはぁ、1人ずつ殺してやるぅぅぅぅ」


「やばい!やばい!やばい!」


岩陰で隠れてみていた了は絶体絶命を確信する。


「どうするのよ!!殺されちゃうよ!!」


その隣にいた愛も不安を隠せていない。


「くそ!!ベリトもチェルノももう動けねェ!!完全につんだじゃねェーか!!」


晃孝は敗北を確信した。もうここで自分の人生が終わるのだとそう思った。


「やだ…やだ…晃孝…みんな…」


悲痛な声を出したのは礼羽だみんなボロボロなまま動かずもう限界だということを知った。みんながボロボロになり戦って殺されることは自分が殺されることより嫌だった。


「わかった…わかったから…お願いします晃孝達を助けて下さい!!私は捕まりますから言うこと聞きますから…」


礼羽は自分を投げ打ってでもみんなを助けたかった。ずっと自分は守られてきたから、もうそれだけで充分嬉しかった。みんなを守るため死ぬなら悔いはなかった。


「フゥーふっふっふっふっふっフゥーふっふっふっふっふっ、何を言ってるのォォォ?生かすわけないでしょォォォォォ!?全員もう終わりよはぁはぁはぁはぁ」


礼羽の願いは届かなかった。礼羽は悔しくてたまらなかった。自分はなにもできずにただ助けられるだけだった。そう考えたら涙が溢れて止まらなかった。そんな礼羽に声をかけたのは晃孝だった。


「なに泣いてんだよ!もう諦めたのか…?俺たちが負けると思ってるのか…?」


「もう…だってみんな動けないじゃない…」


「だからって負け確定なのかよ…俺は負けない…絶対負けない…俺を信じろ!きっとなんとかなる!!」


「なんで…なんでここまで追い詰められてるのに…」


「まだ負けてないからだ…まだ生きてる…生きてるうちはまだ負けない!!それにあいつはずっとでかくなってやがる…なんかあるだろ」


「わかった…」


礼羽はこの一言だけを残して口を閉じた。晃孝の気持ちはまだ負けていないことを知り少し安心したのもあるだろう。


「晃孝!大丈夫か?」


そう背後から声をかけたのは了だった。心配になり愛と一緒に出てきてしまった。


「すまねェ…立たしてくれ」


「何言ってんのよ!そんなボロボロな姿で立てると思ってんの!?」


「そうだよ晃孝!お前は人間なんだよ!!ベリトやチェルノとは違うんだ!!」


「2人ともありがとう…でもそれが俺が逃げる理由にはならない…」


「お前はいつも人助けが好きだよな…ここまでだとは思わなかったよ…でも俺はだからお前と一緒にいるんだ」


了と愛で晃孝を立たせる。晃孝の足はふにゃふにゃで力が抜けていて2人の補助がないと立つことはできない。


「くそ!!くそ!!動け!!動け!!動け!!動けェェェェェェェェェェェェーーー!!!」


晃孝の足は元には戻らなかった。晃孝は人間であるため必死に体が拒んでしまっている。晃孝は両足を両手で殴る。晃孝は、また地面に倒れ込む。


「所詮は人間よォ人間は悪魔には勝てないわァそこにいる2人も殺してあげるからねェェー!!」


「了!!愛!!俺を置いて早く逃げろ!!早く!!」


エキドナの標的は傍にいた了と愛に向いた。エキドナは血で真っ赤に染まった目で2人を睨みつける。


「晃孝を置いていくなんて出来るわけないだろ!!」


「そうよ!早く逃げるわよ!!」


「俺はもう動けない完全にもう終わりさ...」


2人が逃げるのを躊躇している間にエキドナは2人の傍にきていた。そしてエキドナは殺さない程度に2人を髪の毛でぶっ飛ばした。


「ぐぁぁぁぁ、痛てぇ…痛てぇ…こんな痛み初めてだ…」


「もう…だめ…」


2人は気を失ってしまった。それを見た晃孝は悔しくて涙が止まらなかった。


「なんで逃げねェ…どっちが助けるのが大好きだよ…」


「フゥーふっふっふっふっふっ、まずはあんたからよ、はぁはぁはぁはぁ、女の子に絶望をしてもらうわァァァァァァァァ」


「信じる…晃孝…」


礼羽は晃孝の勝利を願い続ける今晃孝の命が取られそうでも晃孝が死ぬまでは敗北ではないと。まだ晃孝は勝つことが出来ると。


「そうねェェ…死ぬ前に私の昔話を聞きなさい…はぁはぁはぁはぁ、これを墓場まで持って行ってちょうだい」


そう言ってエキドナは自分の過去について話始めた。

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