第1章ー9 思い出したくない過去
今から250年前エキドナは異世界の外れのヘル街というところで生まれた。ヘル街はとても汚く荒れていた。家は立っているのだが全体的に暗くたくさんのゴミが散らかっている。その時全種族の少ない人が人間世界にうつって人間と結婚していた。エキドナの両親はエキドナが幼い時人間のいる世界に行ったまま帰ってこなかった。食べ物もなく痩せこけた姿、下半身の蛇はとても小さい蛇でその蛇さえもいつ死ぬか分からないぐらいシワシワによわっていた。エキドナの鋭い目は小さい頃からの様だ。エキドナは空腹でヘル街を夜な夜な徘徊して落ちているものを必死に探しそれを食べていた。ある時愚痴をこぼしながら夜を徘徊していると
「私はどうしたらいいの?みんなに会いたいよぉ」
「おい、そこのお嬢さん何をしているのかな?」
エキドナは声をかけられた。その声はとても太く低かった。エキドナは振り返るとそこには真っ黒な男が立っていた。顔のパーツは真っ黒で確認することはできず完全にシルエットのようだった。
「君は何族だい?」
「私はディアーブル族のエキドナ…」
「そうかい…私もディアーブル族なんだ…同じだな」
そのシルエットおじさんは痩せこけたエキドナを見てにっこり笑うと。
「これを食べるかい?」
「う、うん......」
そうして差し出されたのは丸いクッキーの様な食べ物で、バスケットの中にたくさんはいっていた。それはとてもいい匂いで空腹でたまらなかったエキドナにとっては美味しいご馳走にしか見えなかった。
「口に合えばいいんだけどね」
そうしてエキドナはその丸いクッキーの様なものを貪り食いました。
「う、美味い…美味い…美味いぃぃ…」
エキドナはこんな美味しい食べ物初めて口にした。美味しくて次第に涙が出てきた。
「じゃあね、おじさんは帰るよ…元気でね」
そのシルエットおじさんと別れるのはとても悲しかった。出来れば自分もついて行きたかった。しかしこれ以上だれかに迷惑をかけるわけにはいかなかった。エキドナは涙を手で擦り笑った。
「お腹いっぱい…ありがとう」
そう答えてシルエットおじさんと別れた。その直後エキドナは泣いた大粒の涙を流して泣いた。今までその変にいる虫を食べてきたから、誰かに優しくされたのは初めてだったからこのことは一生忘れないと思った。それからエキドナは生きる勇気がついたのか店から食べ物を盗んだりして生活していた。そうして月日は過ぎエキドナは65歳になっていた。65歳といっても人間の世界でいったら15歳ぐらいに当たる。まだ体は痩せこけていて弱々しい目は幼い時と変わらず鋭い。下半身の蛇は段々と成長してきていた。盗みの生活に限界を考えていたある日ある男と出会った。
「やめてください…やめてください…」
「うるさいこの蝮女!!あんたはもうくたばりな!金もない奴が何故生きてる!?」
盗みをしていたエキドナは帰る家でさえももう戻ることができなかった。なのでヘル街の隅の暗い隠れることができる場所で寝て過ごしていたがそこにいつも通りかかる女に暴力を振るわれていた。それも仕方が無い事だとエキドナは思っていた。エキドナは小さい時は考えないようにしていたがこの世界は弱いやつはいらないものと扱われると知った。
「なんで!?なんで生きてんのよ!早く答えなさいよ!!」
「ごめんなさい…ごめんなさい…生きててごめんなさい…」
「何をしている?離れろ」
その声が聞こえた時目の前にいる女が何者かに吹き飛ばされていた。
「暴力を振るうやつの方がよっぽど生きてるのが不思議だが?」
そこに立っていたのは茶髪で短髪の爽やかな少年だった。肌の色は白くて身長は165ぐらいの細マッチョだ。
「まぁ女に手をあげてる僕はもっとクズ人間になるんだけどね…」
吹き飛ばされた女は声も出すこともできずに青ざめて一目散に逃げていった。その青年はにっこりと笑いエキドナを起こした。
「あ、ありがとうございます…」
「あぁいいって…どうやって助けようかなって思ったけど思いつかなかった」
エキドナは殴られたあとを右手でさする。手に冷たいものが流れる。涙だ、恩人の前で泣くのは失礼だと思い必死にこらえるがもう止めることはできなかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁん、怖かったぁ怖かったぁぁぁぁぁ」
「大丈夫だ…もう大丈夫だ…」
その青年はエキドナの背中を泣き止むまで擦り続けた。エキドナが泣き止む間で相当時間がかかった。
「もう平気かい?」
「すみません…改めてありがとうございます…」
「ああ、僕の名前はティポンよろしく」
「私はエキドナといいます…よろしくお願いします」
ティポンはエキドナにたくさんの質問をした。種族は何か、何故いつも外で寝ているのか、何故1人なのか、好きな場所はどこか、好きな食べ物はなにか、たくさんの質問をした。
「そうか、君もディアーブル族なんだね!僕もディアーブル族だよ!君にそんな過去があったとはね…」
「貴方は悪魔っぽい所が見当たりませんが…悪魔なら何かしら形として出ているのでは?」
「うーん…そうだね…普通の人だったらね…でも僕は体を鍛えてる!いつか僕はカオスティア(8人の悪魔)になるんだ!いつか選ばれた悪魔に僕はなりたい!!」
あまりこの世界のことについては知らないがカオスティアについては盗んだ本で見たことがあった。いつか全ての世界を操る事がそいつらの目的だった。その一員にティポンはなりたかったのだ。
「立派な目標を持ってるんですね…応援します!絶対ティポンならできます!!」
「ありがとう!エキドナにそう言われると嬉しいよ」
ティポンとエキドナの話はとても弾んだ。あっという間にもう周りは夕方になっていた。街灯すらも壊れているこの荒れたヘル街では夕方はとても気味が悪かった。もうティポンとの別れが近づいてきていた。エキドナはもう別れたくなかった。1人になりたくないそう思った。しかしエキドナはそれを口に出すことはできなかった。
「もう夕方ですね、じゃあ私は行きますね…本当に今日はありがとうございました」
「また今日も外で寝るのかい?」
「はい…私の家はもう無いですから…」
「じゃあ家に泊まりなよ…美味しいご飯もある…あったかいベットもある…」
「だめだよ…私が行ってしまったらティポンの両親に迷惑をかけてしまうもちろんティポンにも…私は泥棒なのですから」
「大丈夫だよ…僕は平気…あと僕も両親はいないんだ君と似たもの同士だよ」
ティポンはエキドナと同じだった。エキドナは可哀想な気持ちと嬉しい気持ちが出てきてしまった。自分と同じ境遇に立たされている者が今目の前にいることが嬉しかった。しかし不幸を嬉しいと思うことは悪いことだと思い必死に自分の嬉しい気持ちを殺した。
「ありがとう…じゃあそうさせて貰う…」
エキドナはその日からティポンの家に泊まるようになった。美味しいご飯を食べ、あったかい寝床があって、何もかもが初めて体験する幸福で毎日とても楽しく感じるようになった。そんな生活を繰り返し送っていた。
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それから20年たちエキドナは85歳になっていた。人間の世界でいうと20歳になる。エキドナは美味しいご飯を食べて過ごすことで痩せたこけた体から普通の痩せた綺麗な女へと姿をかえた。下半身の蛇は立派な蛇になった。髪の毛も長く伸びた。ティポンは全く変わらず好青年へとなった。エキドナとティポンははれて夫婦になっていた。たくさんの年月を一緒に過ごすことによって互いに好きになっていった。
「今日も修行にいくの?」
エキドナは敬語から親しい喋り方になっていた。長い年月を過ごすことによってティポンに心を完全に開いた。
「ああ、絶対に夢を叶えてやるからなエキドナも応援してくれよ!」
ティポンのカオスティアになるという目標はもう間近に迫っていた。カオスティアの1人である者がカオスティアをやめたという噂がたちその残りの席に誰が入るかが日々語られていた。しかもヘル街に強い奴がいると噂がたちその強い奴というのはティポンのことだったのだ。
「じゃあ行ってくる!」
「うん!頑張ってね!!」
ティポンが外へ出ていこうとすると誰かが家のドアをノックした。ティポンが外へ出るとそこには真っ黒な人が立っていた。
「すいません…どなたですか?」
「あ、貴方は…あの時…あの時の…」
「ほう、貴方はあの時のお嬢さんではないですか!なんという偶然…」
「で…何の用件で今日は来たんですか?」
「貴方がティポンさんですね…私はカオスティアのダンダリオンというものです」
「えっ!?貴方がカオスティア!?」
「そういえばあの時…貴方はディアーブル族と言ってましたね…」
「そうなんです…それでティポンさんにぜひカオスティアの1人になってもらいたいのです」
遂に念願のカオスティアになることができた。自分が小さい時から思っていた夢をやっと叶えることができた。
「やったぁぁぁぁ!!!遂に!!遂に!!僕はカオスティアに!!」
「うん!!やったねティポン!!やったね!!」
ティポンは喜びを隠せなかった。エキドナも自分のことのように嬉しかった。自分の夫がやってきたことがやっと報われたと思った。
「さっそく明日から作戦本部にきて下さい。カオスティアのことについて全て説明します」
「はい!明日からよろしくお願いします!!」
そうしてティポンは今日の修行は無しにしてパーティーを開いた。エキドナとティポンは夫婦水入らずで仲良くその日を過ごし眠りについた。その次の日ティポンは朝早く起き早くから用意をした。
「頑張ってね!」
「頑張ることなんて無いさただ話を聞きに行くだけなんだから、じゃあ行ってくるね!」
「うん!行ってらっしゃい!!」
ティポンは真剣な顔をしてドアノブにゆっくりふれ出ていくまでははやかった。エキドナはティポンが出ていったあともドアをずっと眺めていた。外にはダンダリオンがいて作戦本部まで案内され一緒に行った。作戦本部に着くまでティポンは心臓の音しか聞こえていなかった。物凄い緊張がティポンを襲った。緊張と戦っている間に作戦本部に着いていた。
「ここが作戦本部だよ」
「ここが…作戦本部…」
作戦本部はとても大きい要塞のようになっていて、たくさんのコンクリート製の建物になっていて全体的に紫色の要塞だ。何となく不気味で1回入ったら出られないようなものになっていた。
「さっそく入ろう」
「はい…」
ダンダリオンは鉄の柵を開けティポンに中に入るように指示する。ティポンは唾を飲み込み1歩を踏み出し中を進んでいく。中は壁掛けのロウソクがかかっていて薄暗いしかし周りは綺麗で良く掃除されていた。下にはレッドカーペットが敷かれており敷かれていない場所にはたくさんの大砲の様なものが外を狙って並んでいた。廊下はたくさんの曲がり角がありティポンはダンダリオンが案内しないと完全に迷ってると思った。中をある程度進むと光が見えたやっとこの廊下も終わりかと思ったそしてある部屋に辿り着く。
「ここが作戦本部の会議室だよ」
「ここが…」
そこには自分とダンダリオンを入れた8人の悪魔達が円卓を囲むように座っていた。円卓の真ん中だけに光が当たっていて緊張な状況にあった。
「おう…お前が新入りか宜しくな」
そうティポンに声をかけたのは髪が長く肌の色は小麦色で鼻が長い男の悪魔だった。
「こいつはルベーザル、禿げだ」
「うぉぉい!!禿げって酷いな!!普通の悪口だよ!!」
一気に緊張の雰囲気から楽しい雰囲気になった。
「よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく!頑張ろうぜ」
「 早くお前ら座れよ」
そう3人に言ったのはドゥイだ。ドゥイは体が大きくおでこが出ている。筋肉がムッキムキで鼻も大きい。髪の毛は金髪で顔は強面だ。
「す、すみません…」
「あぁ大丈夫だぞ…こいつは強面だがここの中で1番優しい」
「そうなんですね…」
そうしてティポンとダンダリオンは席へとついた。
カオスティアはダンダリオン、ルベーザル、ドゥイの他にアラル、ウコ、バク、スニウという悪魔がいた。アラルは髪は短く茶髪肌の色は黒い目は一重で少し細い。ウコは目がぎょろりとしていて鼻も縦に大きく長い眉毛もげじまゆだ。バクは真っ赤な髪の毛で目は普通の目をしている。体は青色の火の様な色をしている。そして耳がとんがっている男性だ。スニウは鋭い目をして体から羽のようなものが出ている髪の毛はとても長く鳥のような女だ。
「じゃあさっそく始めさせていただく」
そう言って指揮を取り始めたのはダンダリオンだった。一応この中で1番偉いようだ。
「まず初めに…抜けていたカオスティアの席にティポンを推薦する…意義はないですか?」
みんなで揃えてはーいと言った。
「じゃあティポンに全てのことを話そう。僕達の目的を」
「何ですか…本当の目的とは?」
ダンダリオンはティポンに目的を話し始める。
「俺たちの目的は全ての世界を支配する事だ」
このことについては噂で聞いたことがあったので驚きの顔もせず聞いていた。
「やることはたった一つ人間世界にいるポラプレスを捕まえることだ」
「何故ポラプレスを捕まえるのです?」
「それは俺にも分からない......」
「何を言っているのですか!?そんなんじゃポラプレスを捕まえる意味がわかりません!!しかも世界を支配するのにその支配する方法が分からないなんて!!」
「支配する方法は分かる…ただ言われた通りに動けばな…」
「意味が分からないですよ!!」
ティポンはずっと目指してきたカオスティアになることが達成されたにも関わらず失望していた。自分が目指していたものがこんな意味わからないまま動くものだと。
「おい!新人!うるさいぞ!俺たちだって意味わからねェーままなんだよ!!お前だけだと思うなよ!!」
バクが怒鳴ってティポンに言いつけた。それを見たスニウが目をしかめた。
「バクうるさいよ…新人君にそんな怒鳴らないであげてよ…あと新人君に一つ豆知識、ここにいるカオスティアはいつでも好きな時に辞めることができる」
「つまりどういうことですか?」
「つまりここにいるカオスティア達はあと100年もすればみんなカオスティアやめちゃうのよ」
「なんで!?せっかくなったのに!寿命だって人間より多いはずではないですか!!あと100年なんてこれっぽっちのことではないですか!」
「えっ…えっとだから…ね、ここの人たちは…みんなあまり乗り気じゃないんだよ…」
ウコが弱々しい言葉でそう答える。今ここにいるカオスティア達は誰もがこの環境について納得していないことを知った。しかしティポンは絶対に自分は辞めたりなんかしないと心に誓った。こんな意味がわからないままカオスティアとして生きていくのに疑問も生じてしまったのも確かにあった。
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