第二章 全てを守る
第13話 心を力に
攫われた町の人々を助けて、人さらい事件を解決したホライ達。
しかしホライ達が村に戻ると、留守番をしていたはずのリーゼが突如現れた黒衣の男に攫われてしまったという情報を耳にしました。
攫われたリーゼを助けるため、そして黒衣の男の正体を掴むため、ホライ達は南の地へと足を運びました。
ホライ「…」
ロゼ「…?ホライ、どうかしたのかい?そんな不安な顔をして」
ホライ「え?ああ…リーゼが心配になって…」
ロゼ「そうか…」
ヴィン「…リーゼを攫った黒衣の男も、お前が言うにとても危険な奴らしいな」
ホライ「うん…あんな奴にリーゼが攫われたら、何をされるか…」
ホライの顔は段々と不安に満ちてきました。
ニコル「…今ここで不安になっていても仕方がありません。まずは有益な情報を手に入れることが先決です」
ロゼ「ああ、それもそうだ。ホライ、ここで気を沈めていてもリーゼは助からない。今は無事を信じて情報を集めよう」
ホライ「…うん、わかったよ」
ホライは一旦気分を落ち着かせて再び歩き始めました。
ホライ(…もしリーゼを攫った奴があの時に会った奴だったら…いったい何のためにリーゼを攫ったのかな…)
ホライ「あ…町だ!」
ホライ達がしばらく歩いていると町を見つけました。
その町は港町に比べると小規模な町でしたが、大きな時計塔が特徴的な町でした。
ニコル「ひとまずあの町に行きましょう。ずっと歩いていて皆さんも疲れているはずです」
ヴィン「休憩を兼ねて…ここで情報を集めるとしよう」
ホライ達は情報を集めつつ休める所を探して町を散策していました。
ヴィン「小さな町だが…かなり入り組んでいるな…」
ロゼ「ホライ、迷子にならないように注意するんだよ」
ロゼはそう言ってホライの手をしっかり繋いでいました。
ホライ「子供じゃないんだから大丈夫だって…ん?」
ホライは強く握られた手を振りほどこうとしたその時、ホライの目に黒い服を着た人が映り、その黒い服を着た人はそのまま人気のない裏路地へと入っていきました。
ホライ「…あれ?」
ニコル「ホライ、どうかしたのですか?」
ホライ「今、黒い服を着た人がいたような…」
ロゼ「本当か!?どこにいったんだ!?」
ホライ「あっちに行ったけど…まさかあの人がリーゼを攫った人…?」
ヴィン「追いかけてみる価値はありそうだな。急ごう」
ヴィンは黒い服を着た人を追いかけて裏路地へと向かい、それに続いて3人も裏路地に入っていきました。
ホライ「そこの黒い服を着た奴!待て!」
「…!!」
黒い服を着た人はホライ達が追いかけていることに気がつき、ダッシュで逃げていきました。
ニコル「逃げた…!という事はやはり…!」
ヴィン「まだ追いつける。追うぞ!」
ホライ達は狭い路地裏を通って黒い服を着た人を追い続けました。
しかし入り組んだ路地裏で撹乱されて、中々追いつけずにいました
ロゼ「…ダメだ!奴はこの町の裏路地がどこに繋がっているか熟知している!これでは早さが上回っていても捕まえられない!」
ホライ「…よし!ここは僕に任せて!」
そう言ってホライは自分の手に光を集め始めました。
ロゼ「なっ…!?ホライ、まさか魔法で仕留める気なのか…!?」
ニコル「き、危険です!もしもあの人が無関係の人だったら…!」
ホライ「大丈夫!もしもの事を考えて、威力は最小限に抑えるよう頑張るから!」
ホライは小さく輝く光を手に追いかけ続け、自分と黒い服を着た人が一直線に並んだ所で魔法を放ちました。
ホライ「もし人違いだったらごめん!
ライズ!」
「何…!?」
小さな光の波動が黒い服を着た人に向かって一直線に飛んでいきました。
しかし黒い服を着た人は間一髪それを避け、体勢を立て直して再び逃げていきました。
ホライ「しまった避けられた!」
ヴィン「まだ見失ったわけじゃない!追うぞ!」
ホライはもう一度光を集めて、いつでも放てる準備をしていました。
「くっ…しつこい奴ら!」
すると黒い服を着た人は壁を蹴って登りだし、屋根の上まで行ってしまいました。
ニコル「なっ…上に登った…!?」
ロゼ「…まずい。あれでは登ってるあいだに逃がしてしまう上にホライのライズも…」
ホライ「いや…大丈夫。任せて…」
ヴィン「…?何か策があるのか?」
ホライ「1回見ただけだから上手くいくか分からないけど、やってみるしかない!」
ロゼ「…!?何をするつもりだ…!?」
ホライ「奴はまだ視界に入ってるから…まだ間に合う!…ライズ!!」
ホライはさっきよりも少し大きい光の波動を放ちましたが、うまく狙いが定まらなかったのかまたもや避けられてしまいました。
ニコル「くっ…やはり狙いを定めないと…!」
ホライ「まだまだ…!ここだ!!」
ホライが光を放った手を曲げると、避けられた光が曲がって黒い服を着た人に直撃しました。
「ぐあっ!!」
ヴィン「!」
ロゼ「追尾した…?」
ニコル「ホライ、今の魔法はまさかカルテの…」
ホライ「うん。カルテさんの追尾する光線の術を思い出して、もしかしたら出来るかもって思ったんだ。確かストーク系が追尾をする術だってニコルが言ってたから…【ストーク・ライズ】かな?」
ロゼ「しかし…ぶっつけ本番で成功させるとは…」
ヴィン「お前達、感心している場合ではない。奴を縛り上げるぞ」
ホライ「あ、そっか」
ホライ達は屋根に登り、そこに倒れていた黒い服を着た人を縛りあげようとしました。
ヴィン「大人しくしろ…。洗いざらい話してもらうぞ…」
「か、勘弁してくれ…」
ホライ「?」
「も、もう下着は盗んだりしないから…」
ロゼ「し、下着!?」
「盗んだ下着はちゃんと返すから許してくれ…」
4人は深々と頭を下げる黒い服を着た男の前で唖然としていました。
ニコル「…どうやらこの人は関係がない人のようですね」
ホライ「なんだ…ただの下着泥棒か…」
「な、なんだ?あんたら俺を下着泥棒だと分かって捕まえに来たんじゃないのか?」
ニコル「はい…実は…」
ニコルは自分たちがなぜ追いかけていたのかをきっちり説明しました。
ホライ「魔法、当てちゃってごめんね」
「い、いいってことよ。へへ…安心したぜ…」
ロゼ「…だからと言って君の盗んだ下着は君のものになるとは限らない…」
ロゼは怒りの表情で下着泥棒を睨みつけていました。
「お、おいおいおい!そんな怖い顔で睨まないでくれよ!」
ホライ「まあまあ、ロゼ落ち着いて。この人ももうしないって反省してるし…」
ロゼ「レディを敵に回したこの下着泥棒を許すわけにはいかない…」
「ちゃ、ちゃんと返すって!許してくれよ!な?な?そ、そうだ!あんたら攫われた仲間を助けるために情報を集めてるって言ってたよな!?」
ホライ「そうだけど…それがどうかしたの…?」
「俺はもしかしたらそれの手がかりになる情報を知ってるんだ!教えてやるから下着泥棒については見逃してくれ!」
ホライ「本当!?本当に知ってるの!?」
「カタギにゃ嘘はつかねえよ!」
ホライ「だってさ、ロゼ。許してあげよ?」
ロゼ「…君がそう言うなら。ただし、後で必ず盗んだものは返してくるんだ。わかったな?」
「わ、わかったわかった!」
ロゼ「さあ、情報をもらおうか」
下着泥棒はロゼに恐縮しながら自分の知っている情報をホライ達に教えました。
「あいよ、それは俺が下着泥棒を終えて屋根で一眠りつこうと寝そべっていた時だった…。そしたら空を猛スピードで飛ぶ黒い影が俺の視界に入ってきたんだ!しかもよく見たらそいつは帽子をかぶった金髪の女の子を担いでいたんだよ!」
ホライ「えっ!?それってまさか…リーゼ!?」
ヴィン「間違いないな…」
ニコル「…その男が、どこに飛んでいったのか分かりますか?」
下着泥棒の男はそう聞かれると少し頭を悩ませてから答えました。
「うーん…場所は分かってんだけどよ…ちょっと分からないところがあるんだ…」
ヴィン「…分からないところ?どういう事だ?」
「いや…その黒い男が南の古城の方に飛んでったのは分かるんだけどよ…。その後すぐに黒い男が似たような格好をした奴連れて東の方に飛んでいったんだよ…」
ロゼ「似たような格好をした奴?」
「ああ…濃い青の服を着たひょろっちい男だったような…」
ホライ「濃い青の服を着たひょろっちい男…?」
ヴィン「もっと詳しい情報はないのか?」
「いや、悪いがこれ以上知ってることはないな…」
ホライ「誰なんだろ…そいつも黒い男の仲間なのかな…?」
その場にいた全員が頭を悩ませていた時、ニコルが下着泥棒の男に質問をしました。
ニコル「…一ついいですか?その黒い男は東に向かった際に金色の髪をした女性を連れていませんでしたか?」
「いや、連れていなかったな…。東に向かったのは黒い男と青い男の2人だけだったはず…」
ニコル「…なるほど。この人の証言が正しければ、リーゼは南の古城にいるということになりますね」
ヴィン「古城か…確かに古城なら人を監禁する牢屋があってもおかしくない。攫った人を逃がさないようにするのには最適な場所だ」
ロゼ「…そして奴は東に向かった。助けに行くのなら今が絶好のチャンスなのかもしれない…」
ホライ「じゃあ、早く古城に向かおう!リーゼの身に何かが起こる前に!」
ニコル「ええ、一刻も早くリーゼを助けましょう」
ホライ「それじゃあ僕達もう行くから!ありがとね下着泥棒さん!」
「そ、そんな名前で呼ばないでくれ…」
ホライ達は下着泥棒の男に礼を述べて、リーゼが捕まっていると思われる南の古城へと向かっていったのでした。
ヴィン(…濃い青の服を着た男…。まさかな…)
その頃どこかで幽閉されていたリーゼは、一人寂しく助けを待っていました。
リーゼ「…ホライ君達、今ごろどうしてるのかな…。ちゃんと村の人達を助けれたのかな…。…私がいなくなって心配してるかな…」
リーゼはホライ達の事を考えながら牢屋の隙間から見える狭い景色を呆然と眺めていました。
リーゼ「…助けて…ホライ君…」
リーゼは思わず泣きそうになり、こぼれそうになった涙を拭って塞ぎ込んでしまいました。
その時鉄格子の向こう側が突然眩く輝きだし、真っ白な光が辺りを覆いました。
リーゼ「えっ!?な、何…!?」
リーゼが眩く輝く光に顔を向けると、その光からフードで顔を隠したローブを羽織った人が現れたのでした。
リーゼ「あなたは…誰…?」
「………」
リーゼ「私を…助けに来てくれたのですか…?」
「…今の私は君を助けられない」
リーゼ「え…?」
「君を巻き込むわけにはいかない」
リーゼ「ど、どういうことですか…?」
「理由は話せない。何も言わずにこれを貰ってくれ」
ローブを羽織った人はローブから赤い宝石がはめられた白い杖を取り出して鉄格子の間を通してリーゼに渡しました。
リーゼ「この杖は…?」
「それは君の心を力に変えるもの。君の意志が強ければ力もそれに応えてくれる」
リーゼ「心を…力に?どういう意味…?」
「…」
ローブを羽織った人はリーゼの問いに答えようとせず、その場から去ろうとしました。
リーゼ「あ…!待って!」
「…これ以上ここにいることは出来ない。もう少し待てば君の仲間が助けに来る。その時まで我慢していてほしい」
リーゼ「え…!?仲間ってホライ君達の事…!?」
「…今は答えることは出来ない。リーゼ、私はまた君のところに現れる。その時が来るまで…無事でいてくれ」
そう言うとその人の体は段々と光に包まれていきました。
リーゼ「ま、待って!行かないで!あなたの目的は何!?何でホライ君達の事まで分かるの!?あなたはいったい何者なの!?」
光に包まれた謎の人物はリーゼの問いに答えることなくそのままどこかに消え去ってしまいました。
リーゼ「…あの人はいったい何者なの…?それに心を力に変えるって…?」
リーゼは貰った杖を握りしめながらじっと眺めていました。
リーゼ「え…?足音…?」
リーゼが杖を眺めていると、奥の入口から足音が聞こえてきました。
リーゼはとっさに杖を自分の後ろに隠して足音が聞こえる方角を見ると、そこには大剣を背中に担いだ小柄な女性がいました。
「おや、アンタがゼオ様の言っていた女かい?」
リーゼ「だ、誰ですか…?」
「ふふっ、アタシはシノイ。ゼオ様にアンタを助けに来た奴を始末するよう命じられたんだ」
リーゼ「えっ…!?」
シノイ「アンタはここで、アタシが仲間を始末するのを指をくわえて見てなよ」
リーゼ「そんな…!」
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