番外編 私のお気に入り

とある大陸の外れに位置するとても小さな村。

この村には「ロゼ」という絶世の美青年と謳われている青年が住んでいました。

ロゼの噂は様々な所に広まっており、彼の姿を一目見るために村にやって来る人々の歓声で朝からとても賑やかになっていました。


ロゼ「やあ、おはよう。ハニー達」

「ロゼ様!おはようございます!」

「はあ…いつ見てもお美しい…」

ロゼの住む家の前はお弁当箱を持った女性や自分ができる限りのおしゃれをして来た女性でいつも殺到していました。

ロゼ「おや…そこのレディは昨日私に朝ごはんをおすそ分けしてくれた子じゃないか?あの朝ごはん、とっても美味しかったよ。ぜひ今度も食べさせてほしいな」

「~~~!!あ、あああ、ありがとうございます!」

「ロ、ロゼ様!私も朝ごはんを作ってきました!よろしければ…」

「ずるい!私も作ってきたんだから!」

「ロゼ様は私と一緒に朝ごはんを食べるの!」

ロゼ「そう争わないでくれ、君達は私と朝を過ごしたいのだろう?私は君達のような美しい女性と過ごせるなら何人でもかまわないさ」

ロゼの一言で争っていた女性達は一斉に静まり、その優しさにうっとりしていました。

「ロ、ロゼ様…なんて心優しいお方…」


たくさんの女性と朝を過ごしたロゼはいつものように女性を引き連れて近くの海岸を散歩していました。

その海岸は人気こそないものの、太陽の光が海面に反射して美しく輝く隠れたデートスポットでした。

ロゼ「やはりここはいつ来ても綺麗に輝いているな…」

ロゼは輝く海面をただじっと見つめていましたが、女性達は海面を爽やかな笑顔で眺めているロゼに釘付けでした。

そんな中、一人の女性が勇気を振り絞ってロゼに質問をしました。

「あ、あの…ロゼ様…」

ロゼ「おや、どうしたんだい?」

「ロゼ様は…その…どのような人がタイプなのですか?」

ロゼ「タイプ…?」

ロゼが考えている中、周りにいる女性はドキドキしながら答えを待っていました。

ロゼ「…そんな事は今まで考えたことがなかったな…。私の答えによっては君達を傷つけてしまうかもしれないから、考えたくはないな…」

「い、いえ!こちらこそ変な質問をしてしまい申し訳ございません!」

周りにいる女性はロゼのタイプを知れずガッカリしている一方で、心のどこかで安心していました。

ロゼ「はははっ、気にしないでくれ」


ロゼはそう言って再び綺麗に輝く海に目を向けました。

ロゼは太陽の光を反射して輝く海面に目を奪われていると、向こう側の浜辺に何かが漂着しているのを見つけました。

ロゼ「…?あれはいったい…?」

ロゼはおもむろに立ち上がり何かが漂着した浜辺に向かって行き、女性達もロゼに続いて続々とついていきました。

ロゼ「…!?こ、これは…!?」

「嘘…!?」

「な、何で…!?」

ロゼや周りの女性達はその漂着物を見てあまりの驚きにその場で硬直していました。

そこには大怪我を負った髪の長い子供が倒れていたのでした。

「や、やだ…何でこんな酷い怪我を…!?」

ロゼ「ここで驚いている場合ではない…!すぐに医者を呼んでくれ!」

ロゼは倒れていた子供を自分の家まで運び、駆けつけた医者にその子供の容態を見せました。

医者がその子供を介抱している中、ロゼは心配そうに子供を見ていました。

ロゼ「先生…その子は大丈夫なのですか…?」

医者「うむ、大怪我こそ負っているが辛うじて息はしている」

ロゼ「…良かった」

医者「奇跡的だよ…。普通なら死んでいてもおかしくないからね…」

子供は怪我した所を包帯で巻かれ、目を閉じて眠ったままでした。

医者「怪我をしている箇所は全て治療した。後はこの弱りきった体が回復するのを待つだけだ…」

ロゼ「分かりました。先生、ありがとうございます」

医者はロゼに今後も定期的に診にいくと告げて、ロゼの家を出ました。

ロゼも続いて家を出て、外で待っていた女性達に事情を伝えて帰ってもらうことにしました。

ロゼ「せっかく来てもらったところすまないが…私はあの子の側にいてあげないといけないんだ…」

「そうですか…。分かりました、私達はもう帰ります…。何か私たちにでも出来ることがあれば言ってください」

ロゼ「ああ、ありがとう。気をつけて帰ってくれ」

女性達を見送ったロゼは自分の家に戻り、寝たままの子供をずっと見守っていました。


ロゼは日も暮れて外が暗くなり始めてもずっとその子供を見ていました。

本当に目を覚ますのかと不安になっていたその時、子供はゆっくりと目を覚まして長い髪と頭を持ち上げて起き上がりました。

ロゼ「…!!」

子供「あれ…?」

ロゼ「良かった…目を覚ましてくれて…」

子供は寝ぼけ眼で辺りを見回していました。

子供「ここは…?どこなの…?」

ロゼ「ここは名も無き村。君はこの村の近くの海岸で倒れていたんだよ」

子供「海岸で…?」

ロゼ「それにしても…君に何があったんだい?そんな大怪我をして海岸に流れ着くなんて普通じゃ有り得ないが…」

ロゼにそう聞かれた子供は少し考えると突然頭を抱えて怯えだしました。

子供「うぅ…」

ロゼ「…?どうかしたのかい?」

子供「思い出せない…」

ロゼ「思い出せない…?」

子供「何でこんな事に怪我をしてるのか…どこから来たのか…何も思い出せない…」

ロゼ「なっ…まさか記憶喪失…!?」

子供は話す度に声が怯えていき、どこからかやって来た恐怖で目に涙を浮かべていました。

子供「や、やだ…思い出したくない…怖いよ…」

ロゼ「思い出したくない…!?それはどういう事なんだ…?」

子供「こ、来ないで…!!」

その子供はロゼを恐ろしいものを見る目で見て、布団で体を包んで震えていました。

ロゼ「…すまない、怖がらせてしまって…。落ち着いたらでいいから、話をさせてくれ…」

ロゼはそう言うと席を外して、子供の視界に入らない場所まで移動しました。

子供はロゼが離れた後も布団にくるまったまま怯えていたのでした。


翌日になっても子供はまだ怯えていて、ロゼは検診に来た医者に今の状況を説明しました。

医者「何かに怯えていた…?」

ロゼ「はい…私がその子から事情を聞こうとすると、思い出したくないと言って怯えだしてしまって…」

医者「うーむ…今は下手に干渉しない方があの子のためかもしれないな…。私はしばらくこの村にいることにするよ。何かあったらすぐに私を呼んでおくれ」

ロゼ「はい…お願いします」

医者と別れたロゼは自分の家に戻り、子供の様子を見ました。

子供は少し落ち着いたらしく医者が用意したご飯をちまちまと食べていて、ロゼはその様子を離れた場所から見ていました。

ロゼ(医者からは干渉は避けた方が良いと言われたが…。いや…やめておこう)

しかし子供は来る日も来る日も何かに怯え続け、一向に落ち着く様子はありませんでした。


医者「今日も変わらず…か。困ったものだね…」

ロゼ「…先生、私に何かできることは無いのですか?」

何日経っても平常心を取り戻さないため、ロゼはついに行動に出ようとしました。

医者「そうは言われてもね…。怯えが消えて平静に戻りつつある彼の心に下手に触れるわけにはいかないんだ…。早く治したい気持ちも分かるが、焦らずに回復を待つことが今の君に出来ることだよ」

ロゼ「…分かりました」

医者はいつものように子供に食べさせるご飯をロゼに渡して、その場から去っていきました。

ロゼは子供が寝ているうちにご飯をそっと置いて起きる前に部屋を出ていきました。

ロゼ(本当に私には見守ることしかできないのか…?)

ロゼが悩んでいるうちに寝ていた子供は目を覚まし、黙々と用意されたご飯を口に入れました。

少し落ち着いたとは言え、そのご飯を食べている姿はまだ何かに怯えている恐怖心と一人ぼっちの寂しさで悲しそうな雰囲気を醸し出していました。

ロゼ(…やはり放ってはおけない)

ロゼは子供のそんな姿を見るに見かねて、ついにその子の前に現れたのでした。

ロゼ「やあ、ご飯は美味しいかい?」

子供「…!」

ロゼ「そう怖がらないでくれ。ちょっと君とお話しようと思っただけさ」

子供「…何も思い出せないよ…」

ロゼ「記憶の話じゃないさ、君としたいのはご飯の話さ」

子供「ご飯…?」

子供はてっきり記憶について探られると思われて怖がりましたが、突然持ちかけてきたご飯の話に驚いてロゼの方に顔を向けました。

ロゼ「ここのところ似たような物ばかり食べていて、少し飽きていると思ってね。リクエストをしてくれれば私が作ってあげるよ」

ロゼは髪をかきあげて自信満々の態度で言いました。

子供「ううん…いい…」

ロゼ「おや、そうなんだね。食べたかったらいつでも私に言ってくれてかまわないよ」

ロゼはそう言うとその場から離れました。

子供「なんだったんだろ…」


子供はご飯を食べ終わり、また寝ようとした時でした。

ロゼがまたもや現れ、今度は本を何冊か持ってきていました。

ロゼ「寝るつもりなのかい?それなら私が本を読み聞かせてあげようか?」

子供「え…?」

ロゼ「色んな本があるよ。どれを聞きたいか君が選んでいいよ」

ロゼは笑顔で本の表紙を子供に見せましたが、子供はその本から目をそらしていました。

子供「いいよ…聞かなくても…寝れる…」

ロゼ「はははっ、遠慮しないでいいのに。本を置いておくから聞きたくなったらいつでも呼んでくれ。」

ロゼは来る日も来る日も閉鎖的な子供に積極的に接していました。

暑いなら窓を開けようか、お茶かジュースどっちが飲みたいか、布団を交換しようかなど例えその子に断られようとも止めることなくとにかく世話をし続けました。

そんなある日いつものようにロゼが世話をしていると、子供からロゼに話しかけてきました。

子供「ねえ…何でそんなにかまってくるの…?」

子供はいつものか細い声でロゼに質問しました。

ロゼ「…迷惑だったかい?」

子供「ううん…気になったの…。この前まであんまり話しかけてこなかったのに…急にいっぱい話しかけてくるようになったから…」

ロゼはそう言われると、優しく微笑んで答えました。


ロゼ「…君のような子供は放っておけなくて…」

子供「え…?何で…?」

ロゼ「…私には、君と同じくらいの妹がいたんだ」

子供「妹…?」

ロゼ「ああ。ロザリナという名前で、私に似てとても美しく、君のように純粋な目をした素直な子供だった…」

ロゼは話していくうちにだんだんと寂しげな顔になっていきました。

ロゼ「…でも、ある日ロザリナは重い病気にかかってしまったんだ…」

子供「えっ…?」

ロゼ「今でも忘れられないよ。あんなに美しかった顔が日に日に痩せこけていって、純粋だった目も虚ろな目になっていって…私の知るロザリナはもうそこにはいなかったんだ…」

子供「…!」

ロゼ「私は…ロザリナのために何かをしてあげたかった…。でも、私は見守ることしか出来なかった…。結果的に私は何もしてやれず一輪の美しい花を散らしてしまったんだ…」

子供はロゼの話を聞いていくうちに、まるで自分にその不幸が降りかかったかのように気分を沈めていました。

ロゼ「美という物は儚いもの…。生み出すのには計り知れない苦労が必要だと言うのに、消える時は呆気なく消え去る物さ…」

ロゼは思わず流れた涙を袖で拭おうとすると、ロゼの目には涙を流している子供の姿がありました。

ロゼ「はははっ…君は本当に純粋な子だ…。私の悲しみを共感してくれるだなんて…」

子供「…お兄ちゃんは…あの時みたいになりたくないから…見守るだけなのは嫌だったからかまってきてくれたの…?」

ロゼ「それもあるが…、君のような美しい人を見捨てる訳にはいかなかったからね…」

ロゼは子供の頭に手を乗せて優しく撫でてあげました。

子供「…ありがとう、お兄ちゃん…」

ロゼ「…!」

ロゼは子供が自分に心を開いてくれたような感触を確かに感じ、再び優しく微笑みました。


子供「…あのね。名前、思い出したんだ」

ロゼ「名前を…?」

子供「うん、名前は…【ホライ…】」

ロゼ「ホライ…か。君の純粋さにぴったりの名前だね…」

ホライと名乗った子供はロゼにそう言われると少し照れていました。

ホライ「でも…名前以外は何も思い出せない…」

ロゼ「気にしなくて良いよ。後でゆっくり思い出せばいい」

ホライ「…うん、分かった」


ホライがロゼに心を開いてから早数日。

ホライが負っていた怪我も完治して、すっかり動けるようになったホライはロゼに連れられてどこかへ出かけに行こうとしていました。

するとそこにロゼに会いに来た女性達がロゼの前に現れました。

「ロゼ様!そこの子はすっかり元気になったようですね!」

ロゼ「ああ、この通り普通に歩けるようになったよ。ホライ、挨拶をして」

ホライ「…こんにちは」

ホライは人見知りのようで、ロゼの後ろに隠れて恥ずかしそうに挨拶をしました。

ロゼ「はははっ…恥ずかしがり屋だな…」

「ふふふっ…ところでロゼ様、その子を連れてどこへ出かけるつもりなのですか?」

ロゼ「ああ、この子に服を買ってあげようと思ってね」

「お洋服ですか。良ければ私達もついていってもよろしいでしょうか?」

ロゼ「いや、大丈夫。もうこの子に着せる服は決めてあるんだ」

「まあ、さすがはロゼ様。いったいどのようなお洋服を着せるのですか?」

ロゼは女性にそう聞かれると、隠れていたホライを前に出して質問に答えました。

ロゼ「そうだな…。ホライには水色の服が似合うと思うんだ。だから水色のワンピースを着せようと思っているんだ」

「え?ワ、ワンピース?」

ロゼ「そしてこの長い髪を結ぶリボンも付けてあげたいかな」

「リ、リボン…!?」

ロゼ「後はこの子の髪型はどうしようかな。ツインテールかポニーテールか…。まあホライはどんな服を着てもどんな髪型になっても可愛いくなるから色々試してみてもいいんだけどね」

「あ、あの…ロゼ様…」

ホライ「…ロゼ。早く行こうよ…」

ホライは恥ずかしさが限界まで行き、ロゼの服を引っ張って催促してきました。

ロゼ「おっと、すまないねホライ。それじゃあ行こうか」

「あっ…ロゼ様…!」

ロゼ「それじゃあハニー達。今度会った時は可愛くなったホライを見せてあげるから、楽しみにしていてくれ」

ロゼはそう言うとホライを引き連れて村を出て町の方に向かっていきました。


「ねえ…まさかとは思うけど…」

「もしかして…ロゼ様は…あの子の事を…」

「ロ、ロゼ様に限ってそんな事は…多分…」

「まさか…よね…」


ロゼとホライが町で買い物を終えて村に戻り家に着いた時には既に夕暮れ時でした。

ホライ「色んな所歩き回って疲れた」

ロゼ「ああ。ご飯を食べてお風呂に入って、今日はゆっくり休んでくれ」

ホライ「うん」

ロゼがご飯を作るとホライは余程お腹が空いていたのか、いつもより早くご飯を食べていました。

ロゼ「はははっ、そう焦らないでくれ。喉に詰まってしまうぞ」

ホライ「…だってお腹空いてたから…」

ロゼがまだ半分も食べていないのにホライはご飯を食べ終えてしまいました。

ホライ「ごちそうさまー。ロゼ、先にお風呂に入っちゃうね」

ロゼ「ああ、良いよ」

ホライは食器を片付けると、タオルと着替えを持ってお風呂場へ行きました。

ロゼ(それにしても、ホライは本当に元気になったな…。でも元気すぎるところもあるから、もう少しお淑やかに振舞ってもらいたいところだけど…)


しばらくしてホライがお風呂から上がり、続いてロゼもお風呂に入りました。

ホライはロゼがお風呂から上がるまでの間、一冊の本を見つけて読んでいました。

ホライ(なんだろうこの本…。勇者とか魔王とかよく分からないことばっかり書いてある…)

ホライは内容が分からずともその本をずっと読んでいました。

ロゼの長風呂が終わっても尚、ホライはその本を読んでいました。

ロゼ「おや…?ホライ、何をそんなに一生懸命に読んでいるんだい?」

ホライ「あっ…ロゼ…。この本に書いてあることがよく分からなくて…」

ホライは読んでいた本をロゼに見せました。

ロゼ「…これは勇者の冒険譚だね」

ホライ「勇者?」

ロゼ「ああ、この世界にはかつて魔王と呼ばれる者が世界を支配していたんだ」

ホライ「…!」

ロゼ「魔王は私達の世界と魔族の世界【魔界】を繋げて、人類を全滅させて魔族だけの世界を作ろうとしたんだ」

ホライ「えっ…!?」

ロゼ「そんな時に現れたのが勇者と呼ばれる者が現れて、精霊から授かったと言われる光の力を…ん?ホライ、どうかしたのかい?」

ロゼはホライが何かを恐れて震えていることに気がつき、話を途中で止めました。

ホライ「…怖い」

ロゼ「怖い?」

ホライ「大昔にそんな恐ろしいのがいたなんて…。考えただけで怖くなってきた…。もし勇者って言う人が魔王を倒してなかったら…みんな死んじゃってたのかな…」

ホライが怯えている中、ロゼはそんなホライの頭を優しく撫でてあげました。

ロゼ「…ホライ、怖がらせてしまってすまない。でも、もうそんな悪い人はこの世界にはいない。ホライは平和な世界に生まれた幸運な子なんだ。安心してくれ」

ホライ「…うん」

ロゼ「さあ、もう寝ようか」

ホライ(…でも怖いな…)

ホライはロゼにそう言われても不安な気持ちは晴れずにいました。


村の人々が寝静まり、近くの海岸の波の音が静かに鳴り響く夜。

ロゼは既に眠りについていましたが、ホライはロゼの体を揺すってロゼを起こしたのでした。

ホライ「ねえ…起きて…」

ロゼ「ん…、ホライ…?どうしたんだい?」

ホライ「トイレ…怖くて行けない…」

ロゼ「…ふふふっ…仕方が無いな…。やはりさっき話した魔王の話しが怖かったのかい?」

ホライ「…うん」

ロゼは起き上がり、ホライに連れられてトイレに行きました。

ロゼ「じゃあ、私はここで待ってるよ」

ホライ「…嫌だ、一緒に入って」

ロゼ「なっ…そ、そんな…。困ったものだな…」

ロゼはホライの方は見ないと言い、ホライと一緒にトイレに入りました。

ロゼ(…あんな小さな子のを見たとなったら…確実に犯罪になるか…)

ロゼはホライに背を向けて立っていました。

ホライ「…ねえ、ロゼ…もうちょっと奥に立ってくれない…?」

ロゼ「…?な、何でだい?」

ホライ「狭くて立ちづらいくて…おしっこしにくい…」

ロゼ「え…?そう言うのは座ってやらないのかい?」

ホライ「え?座ってもやれるけど…おしっこは立ってやるものじゃないの?」

ロゼ「だ、だって…立ってやるのは男の人だけで君のようなレディは…」

ホライ「え…?何言ってるのロゼ?」

ロゼ「へ?」


ホライ「僕男の子だよ?」


ロゼ「!?」

ロゼは後ろを向いたまま硬直していました。

ロゼ「なっ…はっはっはっ…変な冗談を言うなあ…」

ロゼはそう言いつつも内心では有り得ないほど焦っていて、あまりの焦りに汗を大量に流していました。

ホライ「冗談じゃないよ」

ロゼ「いやいやいや、嘘は良くないよホライ。その長い髪、純粋な目、美しくも可愛らしい外見。君のどこが男の子だと言うんだい?」

ホライ「ホントにホントだって、じゃあこれを見てよロゼ」

ロゼ「ん…?」

ロゼはそう言われて後ろを振り返りました。

ロゼの目に映ったのはホライの股の間にある小さな一物でした。

ロゼ「!?!?!?!?」

ロゼはこれまでに無いほどの、かつてないほどの衝撃の事実を目のあたりにして言葉にならない声を出して驚きに固まっていました。

ホライ「これって確か男の人にしか付いていないんでしょ?これで僕が男の子だって分かってくれた?」

ロゼ「そ…そんな…ホライが…あんなに麗しいホライが…お…と…こ…」

ロゼは気を失いその場で倒れてしまいました。

ホライ「わっ!?ロゼ、どうしたの!?しっかりして!!」




翌日の朝

「ロ、ロゼ様が倒れた!?」

ホライ「うん、ずっとうんうんうなされていて…」

「な、何で…?どうしてそうなったかわかる?」

ホライ「うーん…分からない…。昨日一緒にトイレに行った時に倒れちゃって…」

「ト、トイレ…ああ…やっぱり…ロゼ様はやっぱりこの子のことを女の子だと…」

ホライ「え?どうかしたの?」

「あ、ううん、なんでもないわ。とりあえずロゼ様にこの朝ごはんを渡してくれないかしら?」

ホライ「うん、ロゼが目を覚ましたらお姉ちゃんが作ってくれたって言っておくね」


その頃倒れたロゼは未だに顔色を悪くしてうなされていました。

ロゼ(そんな…ホライが…男の子だったなんて…。私は今まで…ホライを1人のレディとして相手をしてきたのに…それなのに…お股に…あんなものを…。この私が…絶世の美青年と謳われたこの私が…そんなミスを…ああああ…)

ロゼは布団を全身に被せて頭を抱えていました。

しかしその時ロゼの中でひとつの考えが浮かびました。

ロゼ(待て…落ち着いて考えてみよう…。ホライは男の子だった…それは揺るぎない事実…。しかし男の子でありながらこの私に美しいと言わせた…ロザリナに近い雰囲気を醸し出していた…私はあの子に興味を持ってしまった…ホライが男の子でありながら…!!

…これまでどんな女性でも私にそんな気持ちを抱かせることは出来なかった…。この絶世の美青年の謳われた私を…ここまでその気にさせるとは…。面白い…ホライ…私は君を気に入った…。例え君が男性であろうと女性であろうと私は君を…)


ロゼは起き上がった時、ホライが女性達から預かった朝ごはんを持ってきました。

ホライ「あれ?ロゼ気がついたんだ?」

ロゼ「…」

ホライ「これ…女の人達が作ってきてくれたんだって。食べられそう?」

ロゼ「…ふふふ」

ホライ「え?どうしたの?」

ロゼ「さあ、ホライ。こっちにおいで。私が食べさせてあげるよ」

ホライ「?」

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