第9話 圧倒的な力
ニコル「奴がどんな魔法を使ってくるか分かりません!しばらく様子を見て、奴がどんな行動をとるのかが分かるまで逃げ回っていて下さい!」
ホライから魔王の復活の話を聞いたカルテは内秘めた魔力をホライ達に向けて放ってきました。
もはや戦いは免れられない状況に陥ったホライ達はカルテを倒すために彼女に戦いを挑みました。
カルテ「様子を見る…?そんな余裕あるのかしら?」
ヴィン(…!さっきとは違う魔力…)
カルテ「ガニトロ!!」
カルテが距離を離したニコルに手を向け呪文のようなものを唱えると、突然爆発音が鳴り響きました。
ホライ達が爆発音が鳴ったニコルの方を見ると、ニコルの足が爆発に巻き込まれその場で倒れていました。
カルテ「君がこの子達の司令塔のようね…。でもまだまだね。熱くなりすぎて、指示が粗雑になっているわ。司令塔はいついかなる時も冷静でいるものよ」
ニコル「ぐっ…」
ホライ「ニ、ニコル!!」
ロゼ「足をやられている…ホライ!急いでニコルを運ぶんだ!」
ホライが持ち前の足の速さでニコルの元に向かい、颯爽とニコルを担ぎその場を離れようとしました。
カルテ(あの子…とっても足が早いのね…あれだと爆発魔法を使ってもすぐに避けられる…ならばこの魔法ね…)
ヴィン「…来る!ホライ!」
ホライ「え!?」
カルテ「ストーク・ビズィム!」
カルテが呪文を唱えると、指先から光線が発射されホライに向かって飛んでいきました。
ホライ「ビーム!?でもそれほど速くない…これなら避けられる!」
ホライはニコルを担ぎながら光線を素早く横にかわし、カルテから遠く離れました。
ロゼ「…!!ホライ、油断するな!まだ光線が追いかけてきている!!」
そう言われたホライが後ろを見ると、光線が曲線を描いてホライを追尾していました。
ホライは追尾してくる光線から逃げようとしますが、どんなに逃げても光線はホライを逃がしませんでした。
その時ホライに担がれていたニコルがホライに指示を出しました。
ニコル「ホライ…奴の使った魔法は「ストーク系」です…。どんなに避けても何かに当たらない限り永遠と追ってきます…」
ホライ「じゃ、じゃあどうすれば…」
ニコル「まず僕をロゼ達がいる所に置いて下さい…。僕を担いでいては動きが遅くなります…。その後は今と同じように逃げ続けてください…。」
ホライはニコルの指示通り、ロゼ達の元までニコルを運び出すと部屋中を走り光線から逃げ回っていました。
ロゼ「ニコル…あれはどうすれば…」
ニコル「僕が合図を出します。ロゼは僕の合図に合わせて光線に魔法を当てて下さい」
ロゼ「ああ、分かった」
ヴィン「待て」
追尾する光線に狙いを定めようとした2人の前にヴィンが立ちました。
ロゼ「ヴィン?いったい何を…」
ヴィン「カルテの魔力は相当のものだ。お前達の魔法があの光線に当たったとしても止めることは出来ないだろう」
ニコル「…この際やってみなければ分かりません」
ヴィン「冷静になれ。お前は今奴の圧倒的な力に気づいて焦り始めている。例えその場にいる全員が熱くなっていても冷静でいろ、それが司令塔の役割だ」
ヴィンがニコルにそう言うと、持っていた銃を光線に向け始めました。
ロゼ「何をしているんだ!?銃弾ではあの光線は止められないぞ!?」
ヴィン「ただの銃だと思うな」
ヴィンが引き金を絞ると、魔力を帯びた銃弾が放たれ光線に向かって真っ直ぐ飛んでいきました。
その銃弾は光線に当たると光線と相殺して無くなっていました。
カルテ「…あら、それは魔導銃…珍しいものを持っているのね」
ホライ「はあ…はあ…た、助かった?」
ヴィン「ロゼ、ニコルを頼む。私はホライと共に奴と戦う」
ロゼ「無茶だ!2人だけで戦うと言うのか!?計り知れない魔力を持っているのだぞ!?」
ヴィン「…大丈夫だ。私達が戦っている間にお前は…分かるな?」
ロゼ「…!分かった。だが無茶はしないでくれ…」
ヴィンはニコルをロゼに任せると、魔導銃を手に構えてホライの元に向かいました。
ロゼ「ニコル…足以外は大丈夫なのかい?」
ニコル「なんとか…でもこの怪我ではまともに歩けません…。申し訳ございません…あなた達に指示を出さなければいけないはずの僕がこんな体たらくで…」
ロゼ「そう気を沈めないでくれ…今はあの二人がカルテに勝つことを信じよう。…私も黙ってはいないが…」
ヴィン「ホライ、ニコルはロゼに任せた。私達で奴を倒すぞ」
ホライ「うん!」
カルテ「戦うのはあなた達2人だけかしら?そんな少数精鋭で大丈夫?」
ヴィン「余裕のようだな…だが…」
ホライ「僕達は負けない、どんな事情であってもこんな酷いことをするあんたを許すわけにはいかない!」
カルテ「………」
ホライとヴィンは二手に別れ、右方向と左方向からカルテを攻撃する作戦に出ました。
ヴィン「私の魔導銃なら遠くからも攻撃はできるが、離れていてはニコルの二の舞を踏むことになる。ここは私とお前で挟み撃ちで攻撃するぞ!ただし無理に攻撃を使用とするな!奴の隙を見て攻撃をしろ!」
ホライ「分かった!ヒットアンドアウェイだね!」
カルテ「…そう上手くいくかしら?私は手加減はしないわ…
トリグ・フレイア!」
カルテの手が光ったと思うと、無数の火球が連続して手から放たれました。
ホライ「うわわっ!あんなにたくさん出せるの!?」
ヴィン「怯むな!火球ではなく奴の手を見るんだ!」
ホライはヴィンに言われた通りに火球を避けつつ、ヴィンと挟むようにカルテに近づいて行きました。
ヴィン「さっき言った通りだ!行くぞ!」
ホライとヴィンは素早く動き回ってカルテを撹乱させようとしました。
しかしカルテも素早く入り交じる2人の動きに合わせて手を動かし、狙いを定めていました。
ホライ(嘘…!?こんなに素早く動いても手がこっちの動きに追いついている!?)
カルテ「フレイガン!」
カルテは向けていた手から大きな火球をホライに目掛けて放ちました。
ホライは一瞬早く火球を避けて、この隙を狙ってヴィンと共にカルテに攻撃を仕掛けました。
しかし攻撃を仕掛けようとした瞬間、カルテの右手がホライを、左手がヴィンを掴み攻撃の手を封じていたのでした。
ヴィン「…!」
カルテ「フレイア!」
ホライ達が腕を掴まれたと気づいたその時にはカルテの両手から火球が放たれ、胴体に直撃していました。
ヴィン「…わざと隙を作ったな」
直撃しつつも何とかヴィンは体制を立て直しました。
カルテ「ええ、あなた達をおびき寄せるためにね」
ホライ「くうぅ…」
ヴィンがホライの方を見ると、ホライはまだ立ち上がれずにいました。
ヴィン「ホライ!早く立て!奴の攻撃が来る前に!」
ホライ「ま、待って…何だか…力が入らない…」
ヴィン「何…?俺と当たった箇所は同じなはずなのに何故…?」
カルテ「あら?心当たりがないのかしら?私はさっきあの子に追尾する光線を撃ったのよ」
ヴィン「…それがどうした。それは俺の魔導銃で相殺したはずだ」
カルテ「あなたが相殺するまで、あの子は部屋中を駆け回っていたのよ。この意味が分かる?」
ヴィン「…まさか、初めから当てるつもりは無くホライのスタミナを削るために…」
カルテ「ご名答」
カルテはそう言うともう一度ホライとヴィンのいる方向に手を向けて魔法を放とうとしました。
ヴィンはそれを察して直撃を免れようと遠く離れましたが、ホライはやっと立ち上がったところでした。
ヴィン「くっ…ホライ!急いで離れろ!」
ホライ「分かってるけど…体が思うように…」
カルテ「フレイガン!」
カルテが2人に向けて魔法を放とうとしたその時、カルテの両腕が真上に向いて魔法は天井に当たりました。
カルテは後ろを見ると、ロゼがいつの間にか後ろに周りカルテの両腕を掴み上げていました。
カルテ「あら…」
ホライ「ロ、ロゼ…!」
ロゼ「…あまりレディにこんな乱暴なマネはしたくないところだが、ホライが傷つくのを黙って見ていられない。こうして君の掌を上にあげていればホライ達に魔法が当たることは無い…!」
カルテはロゼに腕を掴まれたまま微動だにしませんでした。
ヴィン「よくやった…奴をそのまま離すな」
ヴィンが魔導銃をカルテに向けた時、カルテは不敵な笑みを浮かべました。
カルテ「ふふふっ…甘い子ね…」
ロゼ「…!?」
カルテ「魔法は少し応用すれば、こんな事もできるのよ」
ヴィン「…まずい!!ロゼ、奴から離れろ!!」
カルテ「アマドゥ・ガニトロン!!」
カルテが呪文を唱えると突然カルテを囲うように周囲から爆発が起こりました。
ホライ「…か、体から魔法を…!?」
爆発で巻き上げられた煙が晴れると、ロゼがカルテの後ろで倒れていました。
カルテ「女性には優しくしないと…でしょ?」
ロゼ「くっ…す…すまない…ホライ…」
ホライ「ロゼ!!ロゼーーーー!!」
カルテ「これで…あの司令塔の子と合わせて2人目ね…次はどっちかしら?」
倒れたロゼを背にしてカルテがホライとヴィンにじりじりと近づいてきました。
ホライ「…くっ…そ…もう…我慢出来ない…」
ヴィン「ホライ!」
疲労でろくに動かない体を無理して起こしたホライ。
しかし走り続けたことで足は震えており、火傷を負った体は焼けついて思い通りに動こうとしませんでした。
そんなホライをヴィンは助けようとしますが、ホライは駆け寄ったヴィンに掌を向けました。
ホライ「ヴィン…!来ないでいい…!」
ヴィン「何故だ…そんな体だと奴の格好の的だぞ!」
ホライ「大丈夫…こんな状態でも…あいつを倒す手段が…一つだけあるから…」
カルテ「私を倒す手段?」
ホライ「ヴィン…離れてて…あんまり使ったことないから…巻き込みかねないかも…」
ヴィン「…」
ヴィンはホライにそう言われるとホライから離れ、カルテの様子を見つつホライを見守りました。
ニコル「…!まさかあれを…!」
ホライ「これ以上人が傷つくのを見てられない…」
カルテ「…!」
ホライが両手を前に出すとホライの手から光が集まりはじめ、1つの大きな光を作り出しました。
カルテ(まさか…この子が盗賊の頭領が言っていた光の魔法を使う子供…?)
ホライ「あんたを…絶対に止める…!!
ーーーーライズ!!」
カルテ「…!!」
ホライはあの時の呪文を度唱えると、あの時と同じように両手に集まった大きな光が一直線にカルテに向かって放射されました。
放射された光はカルテを包み込み、大きく輝きながら辺りに広がっていきました。
ヴィン(ホライ…こんな術を覚えていたのか…?)
ホライ「…や、やった…上手くいったよ…」
疲労した体で魔法を撃ったためホライはさっき以上にフラフラになって立っているのがやっとの状態でした。
「…本当に驚いたわ。」
ホライ「…!?」
「魔王復活のことを知っている上にこんな強力な魔法まで使えるなんて…」
ホライの放った光が消えていくと、その場には魔法が直撃したはずのカルテが立っていたのでした。
ホライ「な…何で…!?直撃したはずなのに…」
カルテ「確かに直撃はしたわ。でもただ単に君の魔法が私を倒すまでに至らなかった、という事よ」
唯一対抗出来る手段も通じなかったホライは諦めたかのように俯いていました。
ホライ「…」
カルテ「魔王復活を知ってる事といい本当に謎が多い子…君がどんな事を知っているのか興味が湧いてきたわ」
カルテはホライに近づいていきますが、ホライの目の前に立ったところで向こうにいたヴィンに目線を変えました。
カルテ「…私は今からこの子と話がしたいの。しばらくそこで大人しくしてもらえないかしら?」
ヴィン「…話をした後ホライはどうするつもりだ?」
カルテ「…分かるでしょ?口封じよ…」
ヴィン「それを知って俺が大人しくしていられるか…?」
ヴィンが魔導銃をカルテに構えると、カルテも魔導銃の銃口に手を向けました。
カルテ「分かってくれないのなら…あなたもあの子達と同じ目にあってもらうわ…
トリグ・フレイア!」
ヴィン「その術はもう見切った…」
ヴィンはカルテの放った無数の火球に銃口を向けて、一発一発に銃弾を当てて火球を拡散させることで全ての火球を避けきりました。
カルテ「フィング・ビズィム!」
カルテは指先から10本の光線を撃ち、四方八方から飛び交う光線がヴィンを襲いました。
ヴィンは銃弾を光線に向けて撃ちますが1本だけ相殺されずヴィンに被弾してしまいました。
カルテは隙間なく呪文を唱えヴィンを詰将棋のように徐々に追い詰めていきました。
ヴィン「まだだ…」
カルテ「…魔導銃を攻撃ではなく迎撃に使い、自分へのダメージを最小限に抑えるように撃っている…。君には適当な小技で攻めていたら時間がかかってしまうわね…」
ヴィンがカルテの手を見ると、カルテの手はさっきよりも大きい魔力に覆われていました。
ヴィン「…!?」
ホライ「ま…まずい…!ヴィン…!」
カルテ「ワージュ・ガニトロン!」
カルテが呪文を唱えた瞬間、辺り一面を覆う爆発がヴィンを包み込みもうとしました。
ヴィンは爆発から逃れようと逃げようとしましたが、積み重なったダメージが体を蝕み思ったように体を動かせず、為す術もなく爆発に飲み込まれてしまいました。
ホライ「ヴィン!!」
爆発が止み、爆発で生じた煙が晴れるとそこにはうつ伏せになって倒れているヴィンの姿がありました。
ヴィン「こ…ここまで…か…」
カルテ「ごめんね…。あんなに頑張ったのに呆気なく終わらせちゃって…
さて、そろそろ君の番よ。君には聞きたいことが沢山あるわ…」
カルテはホライに向けていた背を戻して再びホライにじりじりと近づいてきました。
ホライは傷と疲れ、そしてカルテに対する恐怖心で絶体絶命の危機だと分かっていてもその場から一歩も動けずにいました。
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