第8話 更なる陰謀

とある村に立ち寄ったホライ達は、そこにいた青年ヴィンから人さらい事件についての情報を聞きました。

そこで聞いた情報はかつて魔王に対抗するために造られた魔道兵器の復活を企む存在がいるという話でした。

ホライ達は魔道兵器の復活を阻止するため、人々が捕えられている魔道士の遺跡へと向かっていきました。


ホライ「…ねえ、ロゼ」

ホライはニコルとヴィンから離れ、ロゼだけに聞こえる声で話しかけてきました。

ロゼ「…?」

ロゼもホライに釣られて静かな声でホライに返事をしました。

ホライ「魔道兵器ってさ…魔王を倒すために造られた物なんでしょ?」

ロゼ「そうだが…それがどうかしたのかい?」

ホライ「もしかして…魔道兵器を復活させようとしてる人達も魔王が復活することを知ってて、それで魔道兵器を使おうとしてるんじゃないかな…」

ロゼは魔王が復活するという話を思い出し、少し俯きながら考え始めました。

ロゼ「…私たち以外に魔王の復活を知っている人がいるのだろうか…」

ホライ「…分からない、でももしそうだったら事情を説明すれば大事にならないで済むんじゃないかな…?」

ロゼ「そうなればいいが…」

ホライとロゼは小さな希望を抱いて、再び遺跡へと向かいました。


ホライ達はしばらく歩いて、ようやく目的地である遺跡に到着しました。

ホライ「ここが魔道兵器が眠る遺跡?」

ヴィン「ああ、ここからでも強い魔力を感じるな…」

遺跡から発せられた魔力はかなりのもので、ホライ達は遺跡の大きさも相まって思わず息を飲みました。

ニコル「…怯んでいる暇はありません。早く行きましょう」

そんな中ニコルただ1人が落ち着いた雰囲気で先へ進んで行きました。

ヴィン「…冷静を装っているが、焦っているな…」

ホライ「うん…だってここにはニコルのお父さんとお母さんがいるかもしれないんだ」

ヴィン「家族絡みか…焦る気持ちも分からなくもないが、こういう時こそ冷静でいられないものか…」

どんどん先へ進むニコルを追ってホライ達も遺跡へと入っていきました。


何も無い部屋が続き、特にホライ達の行く手を阻む物も無く足早に遺跡内部を進んでいくホライ達。

しかし何も無いことすら不気味に思え、むしろ警戒心は高まるばかりでした。

そんな中、ホライ達が奥の部屋に入ると壁の一部にガラスが張られている他とは違った部屋に着きました。

ロゼ「この部屋はいったい…?」

4人は張られたガラスに近づき、その奥を見ようとしました。

ホライ「…あっ!!人がいる!!」

ホライ達は目を凝らして下を見ると、捕らわれた人々がボロボロになりながら重労働をしている光景を目にしました。

ロゼ「これは…まさか魔道兵器を造らせているのか…?」

ヴィン「恐らくそうだろう…」

ニコル「…!!」

ニコルは顔をめいいっぱいガラスに近づけて必死に見下げました。

ニコル「父上!!母上!!」

ホライ「えっ!?ニコルのお父さんとお母さんがいるの!?」

ニコルの目線の先には石材を運ぶ眼鏡をかけた男性とフラフラになりながらハンドルを回す女性の姿がありました。

ニコル「…くっ!!」

ニコルはホライ達を置いて駆け足で先へ進んでいきました。

ロゼ「待て!!ニコル!!」

ホライ達はニコルを追いかけて、同じく駆け足で進んでいきました。


相変わらず何も無い部屋が続きましたが、ホライ達がしばらく進んでいると大広間のような所に到着しました。

ホライ「何?この部屋…」

ニコル「くっ…出てこい!!姿を現せ!!そしてここに捕えられている人々を解放しろ!!」

ニコルは息を切らしながら広間中に響き渡る大きな声で叫びました。


「…またお客人?」


ニコルの声を聞いて、奥から何者かが現れました。

そこに現れたのはウェーブのかかったピンク色の髪をした女性でした。

ホライ「女の人…?」

ニコル「貴様が首謀者か…?」

ニコルはその女性を睨みつけ、普段より低い声で女性に問いました。

「首謀者…もしかして人さらいの事かしら?」

ニコル「そうだ!お前が首謀者なのか!!答えろ!!」

ニコルはさらにその女性を睨みつけました。

「ええ、そうよ。私の名前はカルテ。この事件の首謀者よ」

女性はカルテの名乗り、毅然とした態度で怒るニコルとホライ達の前に立ちました。

ヴィン「…お前に聞きたいことがある。まず人さらいをした理由は何だ?やはりここに眠る魔道兵器を復活させるためか?」

カルテ「あら、そんなことまで知っているのね。その通り、私が人をさらったのはここに記録された魔道兵器を復活させることなの」

ヴィン「…そうか。それで、その魔道兵器を使っていったい何をしようとしている?」

カルテ「…」

カルテはこれまで毅然とした態度で話していましたが、ヴィンのその質問に答えることを拒むかのように口を開きませんでした。

ヴィン「…どうした?」

カルテ「…その質問に答えることは出来ないわ」

カルテがそう答えると、今度はニコルが低い声でカルテに質問しました。

ニコル「…さらった人達を解放する気はないのか?」

カルテ「ええ、まだ魔道兵器は完全に復活させてないわ」

ニコル「…まだ人々にあんな酷いことをさせるつもりなのか…!?」

ニコルはカルテに詰め寄ろうとしますが、そんなニコルをホライが呼び止めました。

ホライ「待って…!ニコル!僕も聞きたいことがあるから…今は落ち着いて…」

ロゼ(…あれを話すつもりなのか…?)


ホライ「ねえ、あんたは魔道兵器がどんなものか分かっているの?」

カルテ「もちろん分かっているわ。魔王に対抗するために魔道士達によって造られた兵器、でしょ?」

ホライ「分かってるんだ…じゃあもう1つ聞くけど…あんたは魔王が復活するって知ってるの?」

ニコル「!!」

ヴィン「!」

カルテ「…!」

ロゼ「ホライ…!」

ホライの魔王復活という言葉にその場にいた全員が驚きホライを見つめ、事情を知っていたロゼもホライの方に目を向けました。

ニコル「魔王が…復活…!?」

カルテ「…驚いた、そんな事まで知っているなんて…」

ホライ「…やっぱり知ってるの!?魔王が復活することを!?」

ホライはカルテに詰め寄り、さらに質問を続けました。

ホライ「ねえ、魔王が復活するって本当なの!?魔道兵器を造る目的は魔王を倒すためなの!?」

カルテ「…」

詰め寄ってきたホライの問にまたも黙り込むカルテ。

しかしホライはカルテに質問を続けます。

カルテ「もし本当なら、僕達も魔道兵器の開発に協力するよ!だからもう港町や向こうの村の人達にこれ以上辛いことをさせないで!」

しばらく黙っていたカルテはホライの方に開いた手を差し出してきました。

ホライ「え…?」

カルテ「…2つ答えてあげる。

まず私は魔道兵器を魔王のために使おうとなんてしていないわ」

ホライ「な、何で!?」

カルテ「…そしてもう1つ…魔王復活について知っているなら…あなたを放っておくわけにはいかないわ!」

ニコル「…!!ホライ!伏せて!!」

ホライはニコルの指示を聞いて咄嗟に伏せると、ホライに向けていたカルテの手から魔力の玉が一直線に飛んできました。

ホライ「わあっ!?」

ロゼ「ホライ、離れるんだ!」

ホライは急いでその場から離れ、ロゼ達がいる方へ向かいました。


ホライ「ど、どういうことなの!?魔王のために使うんじゃないの!?」

カルテ「…」

ヴィン「ホライ、今は聞きたいことがたくさんあるだろうが今は抑えていろ」

ニコル「ホライ、あなたからも聞きたいことがありますが今は奴を倒し、捕えられた人々を助けることが先決です!まずは奴から離れてください!」

詰め寄ろうとするホライをヴィンが止めて、ニコルの指示で全員がカルテから離れました。


ホライ(何で…?魔王が復活することを知っていながら、何で魔道兵器を魔王を倒すために使わないの…?

それにあの人…何かを恐れているような…どこか悲しい目をしているような…)

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