第4話 光の力

ニコル「ホライ!僕の方まで敵を引きつけてください!」

ホライ「うん!」

ニコル「ロゼ!敵が来たところを魔法で天井を崩してください!」

ロゼ「ああ、分かった!」

ニコルの的確な指示をホライとロゼは容易くこなし、最低限の体力の消費で次々と敵の足止めを成功させていました。

ホライ「すごい!あんなに沢山相手にしたのに全然疲れてない!」

ロゼ「しかし学者だと言うのに、戦術を練るのが上手い…。もしかしてそのような事も知識として蓄えているのかい?」

ニコル「はい。父上が昔軍師を務めていて、僕も多少父上から戦術の練り方を教わったことがあります。」

ホライ「そうなんだーあんなに的確な指示を出せるのも納得だね」

ニコル「あなた達の身体能力が僕の知識を活かしているだけですよ」


3人は襲いかかってくる盗賊達を次々と除けて、最上階の盗賊達の頭領がいると思われる部屋に着きました。

そこには金色に塗り固められた大きな扉と盗んできた装飾品が一面に飾られた悪趣味な部屋でした。

ロゼ「ここに盗賊の頭領がいるはずだ…」

ホライ「うん、気を引き締めないと…」

ニコル「…何としてでも奴を止めて、町の人達を助けましょう」

ホライはニコルの雰囲気が変わったことに気が付きました。

ホライ(助手さんが言っていた…家族のことになると後先考えなくなるって…大丈夫かな?)

ニコルは金色の扉を力強く開け、先陣を切りました。


「ケッ、来やがったな…」

そこには大きな髭を蓄え、いかにも盗賊達の頭領らしい顔をした大男がふんぞり返っていました。

「こんなガキ共にやられたってのか…?役に立たねえ子分共が…まあそんな事はどうでもいい、よくも俺のシマで好き勝手やってくれたな?…覚悟は出来てんだろうなあ!?」

盗賊の頭領は大声でこちらを威圧してきました。

しかしニコルはその威圧をものともせず、盗賊の頭領に言い放ちました。

ニコル「大人しく町の人達を解放してください。抵抗しなければ我々も何もするつもりはありません」

ニコルの言葉を聞いた頭領は手にサーベルを持ち、足を大きく前に出してきました。

頭領「てめえ…生意気なこと抜かしやがって!!そんな事二度とほざけねえようてめえらの体をバラバラに切り刻んでやらあ!!覚悟しやがれ!!」

ニコル「なるほど、抵抗を続ける気ですか…ならばあなたを徹底的に懲らしめるまでです!」

頭領は乱暴にサーベルを振り回してこちらに迫ってきました。

ニコル「ホライ、ロゼ!奴の攻撃が届かない範囲に分散して下さい!」

ホライ「うん、分かった!」

ロゼ「…!ニコル!頭領がそっちに向かっていってるぞ!」

頭領はニコルに目標を定め、大声をあげながら斬り掛かろうとしていました。

ニコル「ホライ!僕かロゼの方に奴が来たら背後に回って攻撃してください!ロゼはホライか僕の方に奴が来たら魔法で応戦してください!」

頭領「何をごちゃごちゃと言ってやがる!その石頭叩き斬ってや…」

頭領がサーベルを振りかざした瞬間、ホライが素早く近づいて背中を大きく斬りつけました。

あまりの早さに何が起こったか分からなかった頭領は今度はホライに斬り掛かろうとしていました。

頭領「舐めたまねしやがってえええ!!」

その時背中から魔法弾が飛んでいきました。

頭領は痛みに硬直しながら魔法弾が飛んできた方向を見ると、ロゼが自分がしたと言わんばかりのウインクをしていました。


その後もホライ達はニコルの戦術に従い、四方八方から攻撃をし続けました。

頭領はホライに斬られた痛みで思わずサーベルから手を離し、その隙を見たロゼとニコルから魔法弾を喰らいついに頭領は倒れたのでした。

ホライ「…ちょっとやりすぎちゃったかな?」

ニコル「罪の無い人々を苦しめた、当然の報いです」

ロゼ「どうする?今は気絶しているが、念の為縛っておいた方がいいか?」

ニコル「そうですね。何か縄か縄の代わりになりそうな物を探しましょう」

3人は縛れそうな物を探して部屋中を捜索しました。


その時突然部屋中に銃声が響き渡りました。

ホライとロゼはその音に驚き、倒れた頭領の方に目を向けると頭領が隠し持っていた拳銃をニコルの方に向けており、その先にいたニコルは肩から血を流して倒れていました。

ホライ「ニコル!!」

頭領「へっへっへっ…油断したな…」

あれだけの攻撃を受けたにも関わらず、頭領は簡単に立ち上がりました。

ニコル「き…気絶したフリをして…」

頭領「お前らカギとは違って、くぐり抜けてきた修羅場が違うんだよ。あんな攻撃、屁でもねえぜ」

頭領は倒れたニコルの体に大きな足を乗せ、頭に拳銃を突きつけました。

ホライ「やめろ!ニコルから離れろ!」

頭領「安心しな、すぐに仕留めはしねえよ。もうちょっといたぶってからこいつの頭に鉛玉をぶち込むぜ!」

頭領はそう言うと乗せていた足に力を入れて、ニコルを苦しめました。

頭領「クソガキのくせに生意気なことしてくれやがって…てめえの顔を見てると前に俺刃向かってきた生意気な夫婦を思い出すぜ…」

ニコル「ふ、夫婦…!?まさか…!!」

ニコルは驚いた顔で頭領の方を見ました。

頭領はニコルのその顔を見て何かを感じ取りました。

頭領「ん…?てめえの顔…あの夫婦にそっくりだな…まさかあいつらのガキか?こりゃあおもしれえ!」

ニコル「くっ…父上と母上に何をした…!」

ニコルは体にかけられた体重に苦しみながら盗賊の顔を険しい表情で睨みつけます。

頭領「へへへ…あいつらはよお、生意気に刃向かってきたから俺が叩きのめしてやったのさ!」

ニコル「…!」

頭領「あいつらに便乗して刃向かってきた住人共も何人かいたな…まあそいつらもボコボコにしてやったがな!」

ニコル「…!!」

頭領が口を開く度、ニコルの表情はさらに険しくなっていきました。

頭領「親も親なら子も子だな…

そうだ…お前はまだ殺さないでおいてやる、捕まってる親の前で、たっぷりいたぶってから殺してやる!がっはっはっはっ!!」

ニコル「き、貴様ああああ!!」

ホライ「ふざけるなああああああ!!!」

ニコルが頭領にかつてない怒りを示すと突然ホライがそれ以上の怒りを顕にしました。

ニコル「!?」

頭領「な、なんだ!?邪魔すんじゃねえ!!」


ホライ「…さっきから聞いていれば…自分勝手事ばかりして…罪の無い町の人達を傷つけて…いつまでこんな酷いことをする気なんだああああああ!!!!」

ホライは頭領が犯してきた悪行にその場にいた誰よりも怒りだしました。

その時ホライの両手が光に包まれ、部屋中に輝きを広げていきました。

ロゼ「ホ、ホライ…!?」

ホライ「…!?何…これ…?」

突然の出来事にホライ自身、何が起こったのか分からずにいました。

ホライが困惑していると、突然脳内に優しくも勇敢な声で何かが聞こえてきました。


(…………ラ…イ…ズ)


ホライ「ラ…イ…ズ…!!」

ホライが脳内に聞こえた呪文のような言葉を力強く唱えると両手を覆っていた光がさらに輝き始め、光の波動となって放たれました。

頭領「な、なんだあ!?」

光の波動は頭領に向かって一直線に飛んでいきました。

頭領は慌てて逃げようとしますが、背を向けた瞬間に眩い光に飲み込まれていったのでした。


今度こそ頭領は倒れ、ピクリとも動こうとしませんでした。

ホライ「あれ…?やっつけたの…?」

ロゼ「ホライ…?何ともないのか…?」

ホライ「…ああっ!そうだ!ニコル先生!!」

呆然としていたホライはニコルが撃たれたことを思い出し、ロゼと共に大急ぎでニコルの元に駆け寄りました。

ホライ「ニコル先生!しっかりして!」

ニコル「大丈夫です…肩を撃たれただけです…命に別状はありません…」

ロゼ「とにかく今は止血しないと、ちょっと待っていてくれ」

ロゼは盗賊から盗んだ盗賊の服を破いて、包帯替わりにニコルの肩に巻きました。

ニコル「ありがとうございます…。そう言えば盗賊の頭領は?」

ホライ「あ、あっちで倒れてるよ」

ニコル「…また気絶したフリをしているかもしれません。油断しないでください」

ロゼ「…いや、あんなに強烈な攻撃受けてまだ意識があるとは思えないな」

ニコルが慎重に頭領に近づき顔を覗くと、頭領は白目を向いていました。

ニコル「完全に気絶しているようですね…」

ホライ「じゃ、じゃあ目を覚まさないうちに縛っておこう」

ニコル「はい、目を覚まし次第捕まった人達の居場所を吐かせましょう」

ロゼは盗賊の服をもう一度破き、縄状にして頭領の手足を縛りました。


ロゼ「ホライ…1つ聞きたいことがあるのだが、さっきの光はいったい何なんだ…?」

ホライ「え?えーっと…分からないんだ…」

ニコル「分からない…?呪文のようなものを唱えていたのに?」

ホライ「本当に何なのか分からないんだ。両手が光ったと思ったら頭の中にさっきの呪文が聞こえてきて…」

ニコル「そうですか…ホライ自身も何なのか分からないのであれば詮索しても無駄のようですね…」

そう言ってニコルは頭領が目を覚ますのを再び待ち続けました。


ホライ(…でも、なんでだろう。初めて聞いたはずなのに…初めてな感じがしない…本当に何なんだろう…)

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