第3話 盗賊の隠れ家
港町を占拠した盗賊達を懲らしめるため、そこに1人で向かって行った学者ニコルとさらわれ人質にされた町の人々を助けるため、ホライとロゼは盗賊に変装して盗賊達の隠れ家へと向かっていた。
ロゼ「ふう…」
ホライ「ロゼ、どうかしたの?まさか船酔い?」
ロゼ「いや…ちょっと…盗賊達の汗臭い臭いや不潔な環境に息が詰まりそうになってね…」
そう言うロゼの顔は青ざめていて、生気をあまり感じ取れませんでした。
ホライ「ロゼ、ごめんね…こんな大変なことに付き合わせちゃって…」
ロゼ「君が謝る必要は無いさ
君が行くところなら私はどこへでもついて行く、昔からそうだったろう?」
ホライ「…そうだったね」
ロゼは青ざめた顔をホライに向けて優しく微笑みました。
ホライ「…ところでさ、今頃村のみんなは僕達の心配をしてるかな…何も言わずに出ていっちゃって」
ロゼ「ああ、きっと心配しているだろうな…
一応私は置き手紙を残しておいたが、それでも一日村に帰っていないからな…」
ホライは今になって何も言わずに出たことに罪悪感を感じました。
ホライ「せめて何か言った方が良かったかな…」
ロゼ「ははは…何を心配しているんだい?そんなこと言っても今更村に戻るわけにはいかないだろう?」
ホライ「…でも」
ロゼ「ホライ、私達が村に戻る時は魔王の復活を阻止して勇者になった時だ
そこまでの道のりは辛く険しいものだと思うが…共に頑張ろう」
ホライ「…うん!」
ロゼの言葉を聞いたホライは立ち直り、改めて町の人達を助けようと意気込みました。
「おいお前ら!アジトに着くぞ!降りる準備をしろ!」
ホライ「あ、着くみたいだよ」
ホライ達が周りを見渡すと、目の前に古びた灯台が見えました。
ホライ「あれが隠れ家?」
ロゼ「今は使わなくなった灯台のようだ…身を隠すにはもってこいの場所だ」
船の錨を沈め、盗賊達が奪っていった金品と食料を持って次々と船を降りていきました。
ホライとロゼが船から降りた時、灯台から1人の盗賊が慌てて飛び出して来ました。
「た、大変だ!侵入者だ!仲間が何者かにやられた!」
ホライ(!…まさか…)
ロゼ(ニコルか…)
「お前ら!奪ってきたものは船に置いておけ!侵入者をとっ捕まえるぞ!」
船に乗っていた大勢の盗賊が灯台の中になだれ込んでいき、ホライ達はニコルを助けるため遅れて乗り込んで行きました。
ホライ「早く見つけよう!こんなに大勢が相手じゃどんなに強くても無事じゃ済まないよ!」
ホライ達が先へと進んでいくと崩れた瓦礫の下敷きになってる盗賊や網に捕えられもがいている盗賊を目にしていきます。
ホライ「これってニコル先生がやったのかな…?」
ロゼ「なるほど、下手に戦わず敵を罠にはめて先に進んでいったのか…
ホライ、私達が盗賊の服を着ていると敵だと間違われて罠にかけられる可能性がある
盗賊達も罠にかかって数が減っているからここはひとまず元の服に着替えておこう」
ロゼ達は盗賊達の目に入らないところで普段着に着替え、先へ進むことにしました。
ホライ「うーんどこにもいないなー…
もしかして捕まっちゃったのかな…」
ロゼ「早く見つけないといけないのに、さっきから行き止まりが多いな…
灯台だと言うのに何故こんなにも複雑な設計にしたんだ…?」
ホライ達は迷路のように入り組んだ通路を進んでいきますが中々ニコルを見つけることが出来ませんでした。
「おい!見つけたぞ!侵入者だ!」
突然後方から盗賊達が現れ、ホライ達に迫ってきました。
ホライ「あっ!まずい!」
ロゼ「くっ…多勢に無勢だ…ここは撒けるまで逃げよう!」
ホライ「ま、待って!ロゼ!この先は行き止まりだよ!」
ロゼ「なっ…!?」
ホライ達は大急ぎで逃げたものの進んだ先は壁に囲まれた行き止まりでした。
「へへっ観念しな!」
ロゼ「ホライ…」
ホライ「どうしよう…こんな所で…」
盗賊達がジリジリと2人を追い詰めてきました。
ホライ達がここまでかと思ったその時突然盗賊達がいる床が崩れ、盗賊達は真下に落ちていきました。真下に落ちた盗賊は体を強く打ちつけ、あまりの痛さにその場でもがいて動けずにいました。
ホライ「へ…?た、助かった…?」
「怪我はありませんか」
向こう側の角から人の声が聞こえてきました。そこに現れたのは眼鏡をかけた青い髪の青年でした。
「どうやら無事なようですね」
ホライ「あれ…?もしかしてあなたがニコル先生…?」
ニコル「なぜ私の名前を?あなた達は何者ですか?」
ホライは魔王についての情報を得るためニコルに会いに来たこと、ニコルが1人で盗賊の隠れ家に向かったことを聞いて助けに来たことを説明しました。
ニコル「なるほど、あなた達の事情は分かりました」
ロゼ「私達も協力する、一緒に町の人達を助け出そう」
ニコル「あなた達も…?
ですが、関係の無いあなた達を巻き込むわけにはいきません」
ホライ「でも1人だともっと危険だよ
僕も少しは剣術を使えるしロゼも魔法が使えるから足でまといにはならないと思う」
ニコルはホライの話を聞いて、少し考えた後ホライ達に条件を持ちかけました。
ニコル「分かりました、こちらの戦力が増えることはありがたい事です
ですがいくら力を持っていても、闇雲に戦っては力尽きてしまうだけです」
ホライ「じゃあどうすればいいの?」
ニコル「僕があなた達に指示をします、あなた達は僕の指示に従って行動してください」
ホライ「先生の指示通りに?」
ロゼ「なるほど…頭の冴えている君の指示通りに動けば無駄な体力の消費や戦いを避けて通ることが出来る、という事かい?」
ニコル「そういう事です、まだ敵の数はかなり多いので無駄な消費は命取りです」
ホライ「そっか…分かったよ
お願いね、ニコル先生!必ず捕まった町の人達や先生のお父さんとお母さんを助けてあげるから!」
ニコル「…ええ、ありがとうございます
それでは行きましょう、あまりここに長居は出来ません」
こうしてホライ達はニコルと合流し、人さらいをする盗賊達を懲らしめるため共に行動することになりました。
「…やっぱり俺達もうダメなんだ…」
「他の奴らのように知らないところに飛ばされて働かされるんだ…」
「うう…家に帰りたい…」
「皆さん!そんなに落ち込まないで下さい!待っていれば必ず助けは来ます!」
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