第2話 ニコル
魔王の復活を阻止するため旅に出たホライとロゼ。
2人はまずどこへ向かうべきか相談をしていました
ロゼ「ホライ、君はまずどこに行こうと思っているんだい?」
ホライ「あっちの港町で情報を集めようと思っていたんだ
港町なら色んな所から人がやって来るし、きっと有益な情報が聞けると思って」
ロゼ「なるほど…」(何も考えずに旅出たかと思ったが…さすがにそれは無かったか)
ホライ「もし何も聞けなかった時は船に乗って他の大陸に行くつもりだし」
ロゼ「確かに良い方法かもしれないね
でも私からもちょっと考えがあるんだ」
ホライ「考え?」
ロゼはホライの持ってきた地図に載っている港町を指で指して説明しました。
ロゼ「港町にこの辺りでは有名な学者がいるらしい
港町に着いたら、まずこの学者を訪ねてみるのはどうだい?」
ホライ「学者さんかー…」
ロゼ「当てずっぽうに情報を集めるよりも、確実に知れるとは思う」
ホライ「そっか、それじゃあ港町に着いたらその学者さんに聞いてみよう」
次の目的地を港町に決定した2人は早速港町へと向かいました。
しばらく歩いて、ようやく港町に到着したホライ達。そこは沢山の店が立ち並ぶ賑やかそうな町でした。
ホライ「ロゼ、すごいよ!船ってこんなにおっきかったんだ!」
ロゼ「ははは、あまりはしゃいでどこかに行かないでくれよ」
今まで遠目でしか見たことが無かった船の大きさに目的を忘れて感動するホライ。それを見ていたロゼも港町でデートをしている気がして満更でもないみたいです。
ホライ「あっ、そうだ情報を集めるんだった
ロゼ、学者さんの所に行こう」
しばらくしてようやく目的を思い出したホライはロゼを引き連れて学者の家に急ぎます。
ロゼ「そう急かさないでくれ」
(…それにしても妙だ
港町は商売人や他の大陸からやって来る人々でもっと賑わっていてもおかしくないはず…
気のせいだといいが…)
ホライとロゼは学者が住む家に着き、ドアをノックしました。
しかし出てきたのは小柄な青年でした。
「何か御用でしょうか…?」
ホライ「えーっと…あなたが有名な学者さんですか?」
「い、いえ…私はニコル先生の助手です」
ロゼ「ニコル先生?
もしかしてその人が私たちが探している学者ですか?」
助手「はい」
ホライ達は助手にもてなされ、客間で話をすることにしました。
助手「わざわざ遠方からご苦労様です
ですが今、先生は留守にしていまして…」
ホライ「えー留守かー…タイミングが悪かったな…」
ロゼ「先生はいつ頃お戻りになられますか?」
助手「…」
助手はロゼの質問を聞いてうつむき、しばらく経ってから答えました。
助手「先生は…しばらく帰ってきません…」
ホライ「え?ど、どうしてですか?」
助手「…今、この町では人さらいが起こっているのです」
ホライ「人さらい!?」
助手「はい…数日前、見たことがない船が港町にやって来たのです…
そこに乗っていた盗賊達が次々と人をさらっていってしまい、さらわれた人達を人質に取り毎日金品と食料を献上しないと人質を殺すと私たちに言ったのです…」
ロゼ「そうか…この港町は妙に静かだと思っていたが…
まさかそんな事が起こっていたなんて…」
町に起こっていた惨状を知った2人は驚きを隠しきれずにいました。
ホライは身を乗り出して助手に質問を続けました。
ホライ「じゃあ…ニコル先生も…?」
助手「いえ、先生はさらわれていません
ですが先生の御両親が盗賊達にさらわれてしまって…
先生は御両親を助けるため、1人で盗賊達の隠れ家に…」
思わずロゼも身を乗り出して助手に詰め寄りました。
ロゼ「1人で…!?
無茶だ!非力な学者が盗賊達を相手するなんて!
彼も学者ならそのくらい分かるはずだ!」
助手「おっしゃる通り先生もその事は十分分かっていました…
ですが先生は御両親の事となると、冷静さを失い、後先考えず行動してしまう方なのです…」
ロゼは乗り出した体を一旦戻し、どうしようかと頭を悩ませました。
有益な情報を持っているかもしれない学者が盗賊達の隠れ家に無謀にも向かっていき帰ってくるかも分からない、他の人から情報を絵ようにも人さらい騒ぎで住人は情報を提供する場合じゃない、船で他の大陸に行こうにも盗賊達に見つかって捕虜にされることは目に見えている。
ロゼが考え込んでいると、隣に座っていたホライが手を握ってうつむきながら口を開きました。
ホライ「助手さん、盗賊達の隠れ家ってどこにあるの?」
助手「か、隠れ家ですか?
そのようなことを聞いて一体何をしようと…?」
ホライ「ニコル先生と、さらわれた町の人達を助けるんだ!」
助手「え!?」
ロゼ「ホ、ホライ!何を言っているんだ!?」
ホライ「可哀想だよ…平和に過ごしていただけなのに盗賊達に好き勝手されて…」
ロゼ「確かに気持ちは分からなくもない!
だが君のような子供が行ったところで盗賊達を倒せると思っているのか!?」
ホライ「そんな事やってみないと分からないじゃないか!
それに町の人も困ってる!こんな状況を放っておくわけにはいかないよ!」
ロゼ「でも…ホライ…!」
ホライ「僕は勇者を目指しているんだ!
勇者は困ってる人を見捨てたり、無謀な事だからって諦めたりしない!
困ってる人を助けられないで、世界を救えるわけない!」
ホライの目は真剣そのものでした。
ロゼはホライのどうしても助けたいという意思に押され、仕方がないという表情でホライの頭に手を置きました。
ロゼ「君は昔から変わらないな…
分かった、私も君についていこう
君一人を危険な目に会わすわけにはいかない」
ホライ「ロゼもついてきてくれるの?
ありがとう!」
ロゼがついてきてくれる事を知り、ホライの真剣な表情は次第に和らいでいきました。
助手「せ、世界を救うとか何やら詳しいことは分かりませんが…どうやらお二人共行く気なのですね…
分かりました、あなた達が先生や町の人達を助けてくれることを信じて盗賊達の隠れ家を教えましょう」
助手はホライ達に盗賊達の隠れ家の居場所を説明しました。
隠れ家は海に囲まれた孤島にあること、そこは海流が激しく盗賊達が乗っているような大きくて頑丈な船じゃないと行けないことなど全て話しました。
ホライ「大きくて頑丈な船かー…
そんなものに乗って行ったら盗賊達に簡単にバレちゃうね…」
ロゼ「ニコルも、大きな船に乗って行ったのですか?」
助手「先生は海流を計算して小さくてバレない船に乗って行くと言っていたので…」
ホライ「そっか…僕達にはそんなこと出来ないし…どうすればいいんだろ…」
ホライ達が悩んでいた時、突然荒っぽい声と乱暴なノックが聞こえてきました。
「オラァ!ここを開けろぉ!とっとと金と食い物をよこしやがれぇ!」
ホライ「わっ!なになに!?」
助手「と、盗賊です!」
ロゼ「さっき言っていた通り金品と食料を奪いに来たのか!」
時間が経つにつれノックと大声が激しくなり、今にも乗り込んできそうな勢いでした。
その時扉の向こうから話し声が聞こえてきました。
「おい、どうしたんだよ」
「ここの家のやつがなかなか出てこなくてよぉ、お前も手伝ってくれよぉ」
ロゼ「まずいな…2人で来られたら扉が蹴破られるかもしれない…」
ホライ「2人…?そうだ!」
その時ホライが何かを思いつき、助手にまた詰め寄りました。
ホライ「ねえ助手さん!あの盗賊達って船でこっちに来てるんでしょ!?」
助手「え?は、はい…そうですが…」
ホライ「よーし…ロゼ、ちょっと耳貸して」
ホライはロゼに自分の思いついた事を話すと、2人は扉の前に立ちました。
ホライ「わかったよ…今扉を開ける…
大人しく渡すからもう騒がないで…」
「お?やっとその気になったか」
「早く開けろぉ!」
ホライが恐る恐る扉を開けて盗賊2人を家の中に入れました。
「おぉなかなか豪華な家じゃねえかぁ
こいつぁいいものがもらえそうだなぁ」
「で?俺達に何を渡してくれるん…
うぐぉぉ!!??」
盗賊2人が豪華な内装に気を取られている間にホライとロゼは盗賊の懐に入り、強烈な一撃を喰らわせました。
「ぐおぉ…いてぇ…」
ホライ「よし、作戦成功!」
一撃を受けた盗賊はそのまま気絶して、ピクリとも動きませんでした。
ホライ「ごめんね、ちょっと服を借りるよ」
ホライは気絶した2人の盗賊に駆け寄り、盗賊が着けていた土汚れ付きの服とボロボロのバンダナを脱がしてしまいました。
助手「な、なるほど
盗賊達の服を奪って変装すれば…」
ホライ「うん、怪しまれず盗賊達の船に乗れて奴らの隠れ家に行ける!」
ロゼ「こんな不潔な服…私の美しさを汚すものだが…今は仕方がないか…」
ホライ「うーんちょっとぶかぶか…まあいいや
それじゃあ助手さん、行ってくるね
この盗賊達は縄で縛ってその辺に捨てておいても良いから」
助手「分かりました
必ず無事で帰ってきてくださいね!
私はあなた達を応援しています!」
盗賊の変装をして、盗賊達の船に乗り込んだホライとロゼ。
2人はニコルとさらわれた町の人達を助けるため、盗賊達の隠れ家に潜入したのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます