第14話
校門前。それは生徒たちの賑やかな話し声や、男子共の注目を浴びたいがために大声で行う下世話や、はたまた教師による生徒に送る叱咤の声など、様々な毛が飛び交うで場あるものだ。
だが今俺の目の前にあるのはそんな物など欠片一つ残さないものだった。
校門前には溢れんばかりの人が溜まり、肉壁のように群がっている。
「何かあったのかな?」
普段ならばここまでの渋滞にはならず、すらすらと走り抜けることが容易なほど人とHと荷は間が出来ているくらいの余裕があるのだが、今はその校舎までの道のりすら見ることが叶わない。
「……茜?」
身長が茜の方が上のため、やってみたい見下げるのは出来ず、覗き込む。
俺の顔が視界に入っても気付かないのか、茜はただ視線を前に向け、怪訝そうな表情を浮かべるだけだ。
「……まさかアイツッ!」
「はい?」
最近彼女のようすがちょっとおかしいんだが? なんてことは言わない。
茜は怪訝そうな表情を険しいものに帰ると、集団に向って走り出そうとした。
「ちょっと待ったぁ!」
「なッ!? とめるなよ!」
「まぁまぁ。もちつけもちつけ」
十中八九、茜をいじめているグループが関係していることは明らかなのだが、ドードーと茜をあやす。
俺の行動が奇に桑なのか、獰猛に前髪を揺らして「私! いまめちゃくちゃ不機嫌ですよ」というアピールをしてくる。こうもあからさまな表現ならば、いや、こんなに素顔を見せてくれるのならばとても嬉しいのだが、今はそれが逆に邪魔だと感じる。
「怖い顔しないで。結構来るから。それ? 今言って何するつもりなの?」
俺にまで怖いといわれたのがショックだったのか、先程まで舞うという表現があっていたはずの前髪が、今では水に晒されたように力なく額に吸い付いている。
「……別に何もしねーよ」
反抗しているつもりなのか、顔を背け口を尖らせている。
茜は大体嘘を吐くときには言い渋ったり、顔を背けたりと分かりやすい反応をすることがある。
今もそうだ。横に何があるという訳でもなく、あからさまに不自然に顔を背けている。
「別に何かするかしないかは置いておいてもいいけどさ。この状況から見て何かや倍kとが起こってるんだよ。そこに教師たちに顔色をよくされないお前が突っ込んだらどうなると思う?」
茜は喉をごくりと鳴らし聞き入る。
自分の環境に関わるリスクリターンの計算は普段の適当さとはまるで違い、それこそ熟考するように考える事もあるのだ。
だがこのときままではプレッシャーに負けたのか。
「どどど、どうなるんだ?」
答えを出す事は出来なかった。
そこまで警戒している茜らばn、多少強引だが、話を盛って止めることも出来るだろう。
「最悪、退学だろうな。問題児は即処分って考える先生もいるくらいだしな」
嘘はつけなかった。
だが、放しは盛る、までは行かなかったとしても、最大の最大は出せただろう。
案の定茜も顔を歪めているだろうと、校門の方を、校舎のほうを見つめる茜の顔を覗き込んだ。
「……何でやん」
驚いて臆するはずの茜の顔には、まるでそんなものは見えず、見えるのはチャレンジ精神のようなものを浮かべていた。
そうだ。
俺は忘れていた。
「最高がそれなら、最低を目指して頑張ればいいってことだろ!」
茜がギャンブルのような確立を伴うものが好きなことを。
「大輝。お前は着いてくんなよな」
茜は精子をさせようとする俺の手を拒み、集団の中に歩いていった。
「……茜、君は詰めが甘かったよ。着いていったら駄目なんだよ。でも」
――偶々会うのなら構わないだろ?
俺はにやりと笑みを浮かべ、茜が作った開けた道をなぞる様に進んでいく。
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