第3話
「優? あんなことしちゃってよかったの?」
母、優理が包丁を使う手を止め、あやすように優に聞く。
優も多少の罪悪感があるのか、普段のように反抗する様子はせず、頭を垂らし、どこか元気を失くしていた。
「だって私にはこれくらいしか出来ないんだもん……」
その言葉を聴いた優理は呆れたように域を吐き、包丁を握り、キャベツを刻み始めた。
「だもんってね優。優雅今していること、ちゃんと分かってるの?」
ぎゅっとマグカップを強く握り締める。
涙こそは出ていないが、すこしばかり、目が潤い始めた。
「もう分からないよ! 自分が何したいかなんて……きっとお母さんにも分からないよ」
そう言うと、大輝と同じようにコーヒーを飲み干し、席を立つ。
「ごちそうさま。それじゃあ学校、行ってきます」
最低限の挨拶だけし、優は椅子に立てかけておいた水色と黒の落ち着いた色のバックを手に取り、そのまま部屋を出て行った。
「もう……大も気づけば変わるんだろうけどねぇ」
同情にも似た優しさの篭った眼を優の方に向けてそう呟いた。
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