第2話
家電や薬局、飲食店に喫茶店。その明かりがまとまり新宿は今日も怪しく光る。
山崎は慣れた足取りで人の波を避けながらライブ会場に着く。
会場は新宿某所にある小劇場。チェーンのラーメン屋の二階のテナントに劇場は構えている。
山崎が劇場のドアを開けるとすでに集まってる芸人達が挨拶をする。
「おはようございます!」
気がついた奴からまばらに挨拶、中にはネタ合わせで気がつかない奴らもいる。
「ういっすー。」
山崎は息が抜けような力の無い返事で返す。
芸歴20年になると周りは全員後輩。気を引き締めて挨拶する事もない。
山崎は楽屋の空いたスペースに荷物を置き、若手の小道具や私物で錯乱する椅子に座れる範囲で道具などを床に置き腰をかける。
するとライブの主催者がネタ合わせをしてる芸人の間を縫ってこちらに歩いてくる。
「スクランブルさん、今日もいつものようにMCとゲストなのでトリでネタよろしくお願いします。ネタの時間はだいたい5分でお願いします。」
山崎はまた息が抜けるような返事をして答える。
ライブの進行表をもらい適当か流し見て携帯をいじる。
ライブの進行表を特に細かい事も書かれておらずMCの挨拶、ライブのシステム、ネタの時間分数、客に配られたアンケートの説明くらいのもの。
何度もこのライブやMCをやってきた山崎にとってはもう感覚で分かってるものなのでそこまで重要な事では無いのだ。
ライブのリハーサルが終わり、ネタのキッカケを済ませて楽屋に戻ると北条が来ている。後輩と喋っているみたいだ。遅れるという連絡から20分もオーバーしてる。
「キッカケ終わった?」
北条は謝りもせず、キッカケを済ました感謝の言葉もない。
山崎は北条に目を合わせずに舞台衣装に着替えながら答える。
「今日のネタなにする?」
息の抜ける声は変わらない。
北条は後輩との話しを止める事なく
「この前のネタと一緒でいいだろ。」
それを聞くと何も答えず山崎は喫煙所に向かう。
出番前のネタ合わせ、ライブ本番まで二人はほとんど喋らない。
この関係性がもう1年になる。
そんな二人だが心に思ってる事は一緒だ。
これからやる事はただの作業だと。
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