Welcome to Underground(囁き声)_02
「極端な例だけどね。男キャラをした時に腹筋が割れている表現が欲しい場合にネットで探して拾ってきた腹筋部分を切り張りするみたい。んで、加工。酷い場合は目とかでもやってる人がいた」
「目って、それってもう別人じゃないの?」
「別人だったよ」
「え?」
「ネットでは知ってたんだけど、実際に会った時に名前聞いてもわからなかったのね。だけど名詞をもらった時の写真と名前の漢字を見て思わず『あ!』って言っちゃった……」
コス界隈では『実際に会ったら別人』は良く聞く話だ。
フォトショでちょっと加工しても別人に見えるっていう事はあるけど、さらにその上を行く感じで別人だったのだろう。
ちなみにコス界隈ではコスプレ写真を載せた名詞を作り、撮影会やイベントで会った時に交換を行ったりする。
最近はネットで先に繋がってから併せをしたり、ツイッター等を直接繋げてしまったりする事も多いので、名詞も段々作らない人が増えてきた。
「持っていない物を表現するという意味ではありかもしれないし、気持ちもわからないくないけど、じゃあその人である意味はあるの? とは思ったかな」
「そういう自分も気になる箇所は修正しているんだろう?」
エクスが再びツッコミを入れる。
「だから程度の話! ……度合いが違うだけで、人それぞれだって言いたいんでしょ?」
「別に」
モモがエクスを不機嫌そうに見る。
モモが言うように、持っていない物を表現するという意味で、加工はありだと思う。
例えば、造形で筋肉を作ったり、女性の胸を作ったりなんかはする人も多い。
もっと手軽なところでは、テーピングして顔のパーツを調整したりなんかも普通におこなわれている。
実際に会った時に目で確認出来る表現の方法だ。
これらの生え際やテーピングのテープを消す修正なら、顔のパーツなどはあまり変わらないしね。
じゃあ、それ以外のCG的な修正加工はダメなのかっていうと、結局は人それぞれなんじゃないだろうか。
他にも、背景とかCG合成的な事が凄い人もいる。
だけど、カメラマンさんによっては撮った写真をそのまま使って欲しいので加工を嫌う人もいるらしい。
このあたりは言いだすと切りがない話の一つだと思う。
「コスプレは元作品があってこそって思ってるけど、そういう意味では加工して寄せるっていうのは正しいのかもね」
モモがキャラに合わせるため、テーピングでやや垂れ目気味な目を釣り目にしているのを見た事がある。
メイクだけでもかなり変わるのに、テーピングも追加するとかなり印象が違う。
「あたしがコスを褒める時って、コスしている本人がどうこうよりも、キャラに似てる、作品イメージに合っているってのが多いもん」
「なるほど。それは俺も賛成……」
「あ、ウソ。レイヤーが好きな場合もある。可愛い子は好き」
「ブレブレだな」
「違うの、自分推しが強い人が苦手なの! ROMレイヤーなんてまさにその巣窟だし!」
ROMレイヤーというのは本来なら、コスプレで同人ROMを出している人全般を指すのかもしれないが、この場合はお色気レイヤーさんの事を指しているようだ。
「原作にない露出衣装って意味がわからなくない? もしくはもっと露骨なエロポーズとか、酷いのだとウィッグだけで全裸とか。まさに自分推しの博覧会!」
「露骨なエロは置いておいて、原作に無い衣装っていうのはアレンジとしてならありじゃない? アニメ雑誌とか、ソシャゲでオリジナル衣装を着る場合があるんだし」
ソシャゲで好きなキャラが新しい服装を見るとテンションあがるし、場合によってはそれまで気にしていなかったキャラに興味を持つ事もある。
……はい、本当は露骨なエロも好きです。
今は言わないけど。
「それは……。原作に合うアレンジなら有り」
「判断基準は?」
再びエクスが切り込んでいく。
たぶんだけど、これだけ口をはさんでくるのはモモの反応を楽しんでいるからじゃないだろうか。
「……あたしが好きかどうか」
「完全に主観だな」
「だってぇ……」
このまま見ているのも面白いけど、モモに助け船をだそう。
「俺は正直なところを言うと、楽しければなんでも良いと思うんだよね」
モモとエクスが俺を見る。
「コスは結局元がありきなんだし、同人誌的っていうのかな、楽しくできてればなんでもあり。もちろん人に迷惑はかけない事でね。不快に思う人がいるかどうかって話をすると、それこそ、とりとめが無いんだし」
「むぅ……」
「ロムの人達も、そういう意味では意欲的で良いと思うんだけど」
「いいワケないでしょ!?」
あれ、モモに助け船を出したつもりが、モモに噛みつかれた。
「だって、公式と関係ない下着姿が並んでたら、なんじゃコリャってなるじゃん!」
「え、モモも下着の写真出してたじゃん」
「あれは公式の絵であるの!!」
「同じようなもんだろ。露出してアピールをする点では」
エクスも一緒になって突っ込む。
「違うの! 全然違いますー!!」
「そうですか」
「そうなんですー!!」
段々俺も楽しくなってきてしまった。
モモに意地悪を言ってみたくなる。
「じゃあ、自分が好きなレイヤーさんがそういう恰好をしたら?」
「う……モヤモヤするけど。ニヤニヤもする」
「お前はおっさんか」
まあ、俺もきっとニヤニヤしちゃうけどね。
ROM界隈はさらに闇が深いらしいがその話はまたいずれ。
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