女子高生が手ブラでやってきた_02
コスプレ。
簡単に言うと、漫画やアニメとかの恰好をして遊ぶ行為。
正確に言うにはあまりに色々ありすぎるのでそのへんは割愛。
近年ではメディアでも普通にコスプレという言葉を聞くし、twitterとかでも画像が流れてきたりと、市民権を得た趣味なのではないかと思う。
昔は同人即売会とかに好きなキャラの恰好で行くくらいの事でしかなかったらしい。
それがコスプレ専門で集まるイベントができ、音楽を流して踊るなどクラブ的な感じになった。
さらに、スタジオを借りたり、アトラクション的な施設などへロケに行ったり、はたまた街ぐるみでイベントが行われるようになったりと多様化していった訳だ。
アニメや漫画の恰好をするだけでも特異な事なのに、衣装も自分で作らないといけなかったので昔は敷居の高い趣味だったかもしれない。
でも今は衣装も売っているし、作り方を載せているサイトや雑誌まである。
だいぶコスプレしやすくなったと思う。
やりやすくなったとはいえ、30歳過ぎたおっさんがやってるモノなの?
そう思うかもしれない。
確かに、コスプレしているのは女の子の方が多い。
画像で見るのも女の子が多いだろうし、売っている物も女の子向けが多い。
男キャラの衣装でさえ女の子向けがほとんどだ。
だが、男でもコスしている人は結構いる。
この辺の話をしていると脱線しまくってしまうのでもう少し本題に近いところへ戻ろう。
とにかく、レイヤーと言っても色々なタイプがいる。
衣装に関してだけに絞っても、購入する人もいれば自分で作る人もいる。
自作する人の中でも色々あって、布を得意として衣装を作成しちゃう人、材料を駆使しアイテムや鎧等なんかも作っちゃう人。
自分はその材料を駆使して作る造形レイヤーと呼ばれる部類になると思う。
例えば、今の問題になっている鎧。
ソフトボードとかウレタン、コスボードっていう、堅めのスポンジ的な素材を切ったり曲げたりくっつけたりしてそれっぽい形を作り、その表面に布を張り付けたり、表面加工する塗装をしたりして本物の鎧っぽく作るって訳だ。
自分で作るなんて簡単にできる訳がない!
そう思うかもしれないけど、やってみると結構何とかなったりする。
小学生の頃にやった図工とか、プラモとかを作った人はいると思うけど、その延長なのだ。
「あの、カオルンさん?」
「ああああああ、ごめん!」
つい、目を閉じたまま色々考え込んでしまっていた。
ちなみにカオルンというのは俺のコスネーム、ネットでいうところのハンドルネームみたいな物だ。
単純に本名からモジっている。
ひじりさんもコスネームだと思う。
好きな作品あたりにちなんでつけたのではないだろうか。
例えば『高野聖』が元ネタなら、だいぶ昔に流行った孔雀なんとや天空戦記なんとか。
もう少し最近なら、シャーマンなんとかの作者さんが描いた前の作品等、密教絡みの関係とか。
とはいえ、それを元にしているにはひじりさんは若すぎる。
場合によっては『親が好きでした!』なんて事もあるのがコスプレ、ひいてはオタク界の業が深いところだ。
……本名じゃないよね?
本名を知らないなんてコス界隈では良くある話だし、なにより些細な事でもある。
「私、服は作れるようになってきたんですけど、鎧とかは作った事なくて……だから何が必要なのか解らないんです」
やればできるって言っても、普通はそうだよね。
まして彼女はコスプレを始めて半年くらいのはず。
「えっと……そうだね、作るんならサイズは確かに解っていた方が……」
ふいに目をあけてしまった。
そう、彼女はまだパンツいっちょなままだった。
「いやいやいや、そうなんだけど!! サイズは知らないと作れないと言えばそうなんだけど!」
慌てて視線を逸らす。
「えっと、その、服は着てて大丈夫……だ……から……!」
「え、そうなんですか?」
「うん……あ、確かに身体のラインが解らないと作りづらいっていえば作りづらいけど」
胸を隠す彼女の手に力が入るのが横目で解る。
いや、胸を見ていたんじゃないんだ!
見てたんだけど違うんだ!
つい、見えちゃったというか……。
「いや、違うんだ! 決してヨコシマな意味じゃ……!」
「はい……ラズさんも……サイズを測るのは必要だって……だから衣装作る時は服を脱いでって……」
「ラズさん? ……造形で有名な?」
「はい」
名前を聞いた事がある。
コス界隈では有名な人で、お金をとって衣装制作している人だ。
プロと言えばプロだが、会社化しているのかとか詳しくは知らない。
そもそも元にしている作品の版権問題とかもあるだろうし、この業界はその辺がかなり曖昧だ。
まあ、とにかく、造形で有名な人だ。
「でも、私……そういう事はちょっと無理なので……直接の採寸は断ってしまったから……だから怒ったのかなって……」
「んんん? 裸でサイズを測るのを断ったから怒った? 鎧部分作るのに、服を脱いでって言われたの?」
「はい、身体のサイズにあった鎧を作るからって……サイズ自体はお教えしたんですけど、直接計らないとちゃんとしたサイズがわからないって」
言ってる事は解らなくもない。
けど、なんか変だ。
身体にあった衣装を作るという意味でフィティングというか、サイズが間違わないようにするのは大事な事。
ただ、全部脱ぐ必要はない。
もし、身体に直接つける鎧だっていうならまだ解らなくもないけど、それだってやり方は色々ある。
しかも、彼女は女の子だし、ラズさんは確か男性だったはず。
流石にそこは配慮があるべきだろう。
あまり人の事を詮索するのは良くないけど、かなり邪な感じがする。
「あの……」
気が付くとひじりさんが不安そうに見ていた。
「と、とにかくちゃんと着て! 必要最低限着てくれてて問題ないから!」
「え? ど、どういう……」
「えっと……あぁ……そ、そう! せめて衣装と同じ感じに! キャラは『PRECIOUS...』のマリーだよね?」
「そうです!」
『PRECIOUS...』というのは10年くらい前から続いている人気作。
近年ソシャゲ化して爆発的なヒットをした作品で、偉人とかが英霊と化して戦う話だ。
ファンタジックな衣装も多く、鎧等、造形パーツが多い事もある。
マリーはかの有名な、パンがどうだかでケーキを食べればアレな人が元ネタだ。
社会の教科書とかに載っていたモノモノしい西洋貴婦人姿とは打って変わり、可愛らしい少女的な服に鎧パーツが付いているような感じだったはず。
「確かワンピースっぽい服を着てるよね?」
「はい! 布部分はもうできてます!」
急いでスマホに保存したマリーの画像を見る。
「なら、そのワンピースくらいな感じで! その上にパーツつけるんだし!」
「あ……確かに……そうですよね……」
何故気が付かなかったんだろう。
そんな顔でひじりさんが考え込む。
「胸と腰と肩と手の甲、脚はブーツだけだよね? 特に鎧的なパーツはないから、ブーツは履かないでもいいかな」
「は、はい……! すぐに着替えてきます……!」
そう言ってひじりさんはバスルームの方へ消えた。
そうか、バスルームで着替えていたのか。
着替えてというか脱いで……。
もしかすると、いつも俺が使っている脱衣カゴには……。
いやいやいやいやいや。
何を言ってるんだ。
これ以上あの恰好でいられたら色んな意味でもたない。
なにより、ひじりさんが無理をしていたはず。
これで良かったのだ。
うむ。
……うむ。
名残惜しい訳じゃないよ?
しばらくして、ベースになるワンピース的な物を着用し、ひじりさんが戻って来た。
「あの……お待たせしました」
「おおお! 凄いね、ラインが綺麗だね!」
まるで既製品の服のように、縫い目や合わさりにチグハグさがない。
何より、身体のラインにピッタリとあっている。
パーツこそ足りてないし、ウィッグも被っていないけど十分可愛かった。
「ありがとうございます……! 頑張りました!」
衣装を誉めた事が良かったのかもしれない、凄く嬉しそうだった。
ようやくいつもの明るいひじりさんになってきた。
そう、普段は明るくて元気な子なのだ。
気も使えるし、なによりこんなおっさんにも優しく接してくれる。
好きな作品の話で盛り上がったりもできる。
そんなひじりさんのために、力になりたいと思うのは変じゃない事だよね?
うん、変じゃない。
変じゃない!
まるで自分に言い聞かせるみたいにしてから本題に入る。
「さて、時間も惜しいから鎧のサイズ決めちゃおっか」
「は、はい……!」
そう、だってここからがまた問題なのだ。
可愛い女の子、それも10歳以上離れている女子高生が薄着一枚で目の前にいるのだ。
しかもスカート丈が短い。
そこから生足がスラリと伸びている。
ふともも出まくりだよ。
もしかして、服の下はさっきの……。
想像したらいかん!
いけません!
さっき人の事を邪なんて思ったけど、俺こそ大丈夫なのか。
考え出すと本当におかしな事になってしまいそうだ。
とにかく、事を進めよう。
早いとこ鎧制作を始めよう。
そのために必要な事を終わらせよう。
「じゃ、じゃあ、採寸を始めます」
「は、はい……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます