32歳童貞男の部屋で女子高生がパンツいっちょになる事から始まる物語

伊藤全

第一話

女子高生が手ブラでやってきた_01

「カオルンさん……わたしもう……」


それは、もうすぐ終電も無くなろうという深夜の出来事だった。


「貴方になら……」


場所は東京都中野区。


32歳独身(童貞)な俺の部屋で女子高生と二人きり。


彼女は一糸まとわぬ姿で俺に言った。


いや、正確にはパンツは履いてる。


履いているが、それだけ。


こぼれ落ちそうなほど豊満で柔らかそうな胸をなんとか手で隠そうとし、恥辱に顔を赤らめ、身体を震わせ立っている彼女の名前は『こうや ひじり』さん。


女子高生と聞いている。


恐らく本名ではない。


とある事で知り合った女の子。


アイドルとかには疎いので誰に似ているとか例えらないけど、ぶっちゃけてかなり可愛い。


スタイルも良い。


いや、他の女性と比べた事がないから本当に良いのか解らないけど良いんだと思う。


痩せすぎず、太りすぎず、スラッとした手足なのに胸が大きい。


そう、くびれというほど明確な感じのラインではないが、胸とオシリが良い感じに大きいのは確かだろう。


良い感じってなんだよって思うかもしれないが、twitterとかで見かける絵師のナイスバディの一歩手前位な感じだ。


まったく上手く例えられていないがそんな感じなのだ。


特に下腹のライン、おへそからパンツへ入っていくカーブが美しいのがまた素晴らしい。


そんな女子高生(自称)が1DK一人暮らしなおっさんの部屋でパンツいっちょなのだ。


もう少しムードのある言い方をしてみたいが、そんな事ができるなら俺はいままで童貞では無かったと思うので察して欲しい。


余談だが、彼女は胸が大きいので手で隠していてもアレだ、ソレだ。


うん、こう、手からこぼれてしまっているお肉が、ぷにっとね。


いやいやいやいやいやいや。


そんな事を考えている場合ではない。


とにかく、上(胸)を見ても下(パンツ)を見てもマズイ状況なのは確かだ。


冷静に考えるんだ、冷静に。


付き合ってる訳でもない30歳過ぎたおっさんの家で女子高生がパンツいっちょだぞ。


捕まる。


間違いなく捕まるヤツだ。


頭の中を東京都の条例がかすめる。


何歳なら良いんだっけ?


東京なら良いんだっけ?


いやいやいやいやいやいや。


考えるのはソレじゃない。


冷静になるんだ。


冷静に今の状況の把握と改善策を導き出すんだ。


「お願いです……わたしもう……限界です……」


気が合う、俺も限界だ。


だが、視線を彼女の顔に戻し、今にも泣きだしそうな彼女の目を見た時に俺は冷水をぶっかけられたような感覚で我に返った。


そう、そうだった。


元々彼女は泣きながら俺に連絡してきたのだ。


困った状況に陥ってしまい、どうしたら良いか解らないと助けを求めてきたのだ。


だから、俺なりに出来る解決策を提案したのだ。


それでやっと泣き止んでくれたのだ。


そう、彼女のピンチを救うと約束をしたのだ。


「ちょ、ちょっと待って……! っっっ……ふぅぅ……」


目を閉じ、大きく深呼吸する。


良し、完全に落ち着いた。


うそ、まだちょっと焦ってる。


でもだいぶ落ち着いた。


俺の名は『遠野かおる』32歳の社会人。


一般企業のSE。


彼女なし。


ぶっちゃけて童貞、魔法使いだ。


いや、それはいい。


とにかく、彼女が今おかれている状況から助けだすという理由で家に来てもらっただけの話なのだ。


それだけのはずなのに、ちょっと予想外に彼女がパンツいっちょなだけなのだ。


予想外過ぎだけどな。


いや、来た時はちゃんと服を着ていたんだよ。


この後に必要な事の話をしていた時、気が付いたらパンツいっちょだったのだ。


何を言っているのか解らないと思うけどってアレだ。


まさかこの台詞を自分で言う日がくると思ってなかった。


とにかく冷静に。


そうだ、俺は目をつむって話せばいい。


それで話は収まるはずだ。


お互い限界、何か言わなきゃ。


起死回生となる一言を。


そう。


何か。


何か、恰好良く!


「えっと……その、えっとね……」


「は、はい!!」


ほらみろ、あんまり恰好良くなかったけど、彼女も俺の言葉を待っていたのだ!


「な、なんで裸なの……?」


「え?」


なんでそれかなー。


なんでそれ言っちゃうかなー。


そこをスルーして話をまとめるべきじゃなかったのかなー。


赤くなっていたひじりさんの顔がさらに赤くなる。


あ、違うよ、薄目で見ちゃったてた訳じゃないよ!


「だ、だって……サイズ……測れませんよね……?」


「サイズ……?」


「身体の……その……胸とか……おしりとか……」


「あ、あああああ! なるほど!」


ようやく彼女の意図が読めた。


何故彼女がパンツいっちょなのかを。


そう、彼女は俺から提案した解決策を実行するために必要な情報の提供をしてようとしていただけの話なのだ。


そう、彼女のために、とある物を作ってあげる事。


そのための情報を。


「いや、ちょ、ちょっと待って! 俺そんな……いや、確かにサイズは必要だけど、無理矢理聞き出そうなんて……!」


「でも……サイズがわからないと……教えてくれないですよね?」


「なにを!?」


「よ……鎧の作り方です……」


そう、それだ。


鎧。


彼女は俺に鎧の作り方を聞きに来たのだ。


現代日本で何を言ってるのかと思うだろ?


何故俺のようなおっさんの元に女子高生が来たのかって思うだろ?


理由があるからだ。


俺達は共通の趣味を持っている。


コスプレ。


アニメとかマンガとかの衣装を着るアレだ。


この物語は32歳にもなって自分で衣装を作って着ちゃうおっさんの物語なのだ。

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