第14話 もこふわベジタボー
「着いたーッ!!」
「ゼー…ゼー…も…もうダメ…」
「雪ー!?しっかりするのじゃー!!」
到着早々騒がしい。…いや、私を含む人間四人を乗せてここまで飛んできた影雪にその言葉を使うのはかなり失礼になると思い、「お疲れ様」と影雪に言って、私は軽く伸びをし目の前の光景を眺めた。
…私の目の前に広がっていたのは、見渡す限りの畑、畑、畑だ。
本当広いな…あの遠くに見えるのはビニールハウスだろうか?すぐそこにはとうもろこしと思われる植物が生えている…程よく日も当たっているし、何処からか川の流れる音も聞こえてきている。
…畑としては絶好の場所なのだろうな…
「ここは、魔法少女の経営する畑なんです。オーナーさんが植物を自在に操る魔法の持ち主で…周りの木をなぎ倒して一から作った畑だと聞いています。」
「それ凄いね…ここから野菜を?」
「はい…ここの畑はエリアごとに持ち主が決まっていて、私達の八百屋は、他の魔法少女さんとの共有…の様な感じなんです。」
へぇ…
「オーナーさんは植物にとても詳しくて、時々どんな感じに育てたら良いか教えてくれるんです。ちょっと幼い所もありますが…」
…?どういう事だろうか?
「とりあえず…その持ち主さんに合おうよ。」
「そう…ですね。私が案内します。」
キューラが目の前にあった道へと足を運ばせようとしたその時だった。
「あらあら~?そこの忍者さん大丈夫モコ~?」
何処からともなく声が聞こえてきた。
そして、畑の中からひょっこりと誰かが顔を出した。
「お…お前は誰じゃ!!」
「む~…初対面の人に向かってお前はダメモコよ~。モコは皆と同じ魔法少女の『コットンメリィ』モコ。コットンって呼んでほしいモコ~」
コットンメリィと言った魔法少女はニコニコとしながら影雪に近寄っていった。
薄い緑色のツインテールを腰まで伸ばし、ラフな格好をしている美少女。麦わら帽子を被り、その先からは角のような物が顔を覗かせている。
…動物系の魔法少女だろうか?
「お…おっぱい大きい…ゆーちゃんの倍くらいあるよ…」
バニラはコットンの胸元を見て唖然としていた。
…バニラの言う通り、コットンの胸はとてつもなく大きい。畑仕事の服装である動きやすいラフな服装は、コットンっぱいを隠しきれず、今にもこぼれ落ちそうな状態だ。
「ほらほら~…忍者さん」
コットンはぐったりしている影雪を抱き抱えた。すると影雪はコットンのこの場にいる誰よりも大きな胸に顔が埋まってしまい、結果的に影雪は息が出来ない状態になってしまっていた。
「!?……!!!」
突然息が出来なくなった影雪はコットンに抱えられている状態で暴れまわった。コットンの胸も連動して右に左に揺れ動いたがコットンが影雪を更に強く抱きしめると影雪から抵抗の力が無くなり、その後にスースーと寝息をたて始めた。
「忍者さんの寝顔可愛いモコね~」
「お前ぇぇぇ!!儂の雪を誘惑するなぁぁぁ!!!」
「え~…誘惑なんかしてないモコよ~…」
コーンはコットンに食って掛かっていた。何時もはバニラと違ってそこまで騒ぐことがないコーンが感情を爆発させているのは珍しい事だ。
「コーちゃん落ち着いて~イライラしたときは…はい!気分スッキリミントアイス~!!」
「す…すまぬ…」
コーンはバニラから渡されたアイスを少しずつ舐め始めた。
「こっちにモコの家があるモコ。付いてきてモコ~」
コットンは影雪を抱き上げたまま、畑に作られていた道をテクテクと歩き出している。どうやら案内してくれるようだ。
「リナちゃん行こー!」
私はコットンとバニラにつられ、歩き出した。
* * *
「よいしょ…ここでいいモコかな?」
コットンは家に入ると早々に影雪をソファーにそっと降ろした。
気持ち良さそうにスヤスヤと寝ている影雪の身体には、何故か所々に綿がくっついている。
…タンポポの綿毛…?それとも何か動物の毛だろうか…?
「コットンさん、いきなり来て申し訳ありません…スズさんが体調を崩してしまって…」
「スズカちゃんが!?大丈夫モコ!?あ、じゃあ…だから野菜の仕入れを手伝いに来た感じモコか?」
「はい…でも私太陽の光苦手なので…手伝うと言っても出来るのは日陰で野菜の仕分けくらいですけど…」
「それでも助かるモコよ~!」
「あ、この人が私達に野菜を分けてくれるコットンさんです。さっき言っていたエリアの持ち主さんですよ。」
「じゃ、改めてご挨拶モコ。モコはコットンメリィって名前モコ。気軽にコットンって呼んでほしいモコ。魔法は『魔法の綿で癒す』モコ。モコの綿は気持ちも怪我もフワフワに癒すモコよ~」
綿…そうか、影雪の身体に付いていたのはコットンの魔法の綿…コットンは家へ案内する間に影雪を治療していたのか…
「ねーねー!コットンちゃんっておっぱい何カップー!?」
突然のバニラによるセクハラ質問。
恐らく、さっきからコットンが行動の度に動き回る巨乳を見て、我慢が出来なくなったのだろう。
「Hカップモコよ~ヒツジだけに~」
…答えてくれた!?ってかデカっ!!
「おっきーい!!ねーねー、コーちゃんはー?」
「え…Fじゃ…くぅ……負けた…」
…何故か悔しがるコーン。
もしかしてコーンはコットンをライバル視しているのだろうか…?
「ありがとうございます。コットンさん。」
「ん?おっぱいの話モコ?」
「そうじゃなくて…影雪さんの事です。」
「ああ、いえいえモコ~でも、かげゆき…忍者さんは日頃から疲れが溜まってたみたいモコよ?いくら魔法少女でも疲労は病気の元モコ。他の魔法少女ちゃん達も気遣ってあげた方がいいモコよ~」
コットンはニコニコしながらそう言った。
…何だろう…コットンには包み込む様な優しい雰囲気が漂っている…まるでお母さんみたいな…
…お母さん…たまには電話してあげようかな…
「さてと…そろそろお仕事の時間モコ~」
そう言うとコットンは立ち上がり、腕を伸ばし、ストレッチの様な物をし始めた。
「さて、皆も手伝ってくれるモコか?」
「うん!やるやるー!!」
「魔法少女じゃからな。力仕事は任せい!」
「私も陰ながら頑張りますー!」
「むにゃ……スー…スー」
バニラ達は気合い十分なようだ。
…影雪はまだ夢の中のようだが…
「私も何か手伝うよ。」
「リナちゃんありがとうモコ!…でも…魔法少女が四人いるし…人手は足りてるモコ…う~ん…」
コットンはしばらく悩んだあと、ハッとして私の顔を見つめてきた。
「そうだ…なら…フウルちゃんを元気付けてくれないモコか…?」
「フウル…ちゃん…?」
誰だろう…もしかしてキューラの言っていたオーナーさん…?
「あっちに坂道があるモコよね?あそこの上の方にログハウスがあるモコ。そこに…う~ん…違うモコかね?多分そこら辺の切り株の所にいると思うモコ。」
…最後だけ雑い。
「…でも、何でそのフウルさんを元気付ける必要が…?」
「それはフウルちゃんに聞けば分かるモコよ。あと…フウルちゃん多分何も食べてないと思うモコから…はい、モコ特製サンドイッチ~これもあげてほしいモコ。」
手渡されたのは海外とかでよくありそうなサンドイッチの入ったバッグ。中から美味しそうな匂いが漂ってくる。
「それじゃ、お願いするモコ~」
…とりあえず、私はフウルさんに合うためにバッグを片手に坂道へと向かって歩き出した。
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