第10.5話  属に言うその後の物語

…現在時刻、朝の5時。

今日は平日。つまり学校がある。


何でこの時間に起きる羽目になったのかというと…


「おはよーじゃ!!リナぁぁ!!」


横で元気に掃除しているメイドのせいである。


「気合い入ってるね…コーンさん…」

「おう!雪に頼まれた以上、命を懸ける覚悟で全うするぞ!!」


…そこまでしなくても…


「リナ、朝飯はもう作っておいた。今日はフレンチトーストというものを作ってみたぞ?」

「いや…それは…ありがとう…なんだけど…」


…お願いだからもう少し寝させてください。


* * *


…私は二度寝したあと、結局いつも学校がある日の起床時刻に起きることとなった。


「そういえば影雪さんは…?」


私は辺りを見回してみたが、影雪の姿はどこにもなかった。


「儂が起きたときはまだ寝ていたぞ?」

「あ…そういえば一緒に寝てるんだっけ…」


影雪はコーンの寝床が無いと私が悩んでいたときに「なら私の部屋で構わない」と言ってくれた。

…ありがたいのだが、同時にコーンが影雪を襲わないか若干心配でもあった。


まぁ…影雪くらいの魔法少女ならすぐに察知して防ぐだろうけども…


「儂がメイドになる前までは雪が支度をしてくれたのであろう?雪にはしっかり睡眠をとってほしいのじゃ。」

「そうだね。影雪さん大変そうだし…」


そんな事を話ながら私がコーンに「行ってきます」と言うと、コーンは「行ってらっしゃいませ主殿」と笑顔で見送ってくれた。


* * *


「おはよう、水無月さん。」

涼風すずかさん…おはようございます。」


私が登校していると、涼風が駆け寄ってきていた。


「今日もいい天気だね……ウッ……」


ニコリとしていた涼風だが、次の瞬間足がよろめき、崩れるように私の肩へと体重を乗せてきた。


「涼風さん…!?大丈夫…!?」

「う…大丈夫大丈夫…ちょっと貧血気味でさ…」


…涼風は八百屋で働いている身だ。無理がたたっているのだろうか…?


「…ちょっと…やり過ぎちゃったかな…?今度から少し改善しなきゃ……あ、ゴメン、水無月さん。もう大丈夫だから。早く行こう、遅刻しちゃうよ。」


涼風は若干顔色が悪いままだったが、私の肩から離れ、学校へと歩き出した。


* * *


何とか遅刻をせずに来れた私と涼風。

…しかし、息付く暇もなく、先生が教室に入ってきて結局休めず仕舞いだった。


しかし…今日はやけにホームルームが早いな…


「おはようございます。今日はいきなりなのですが、転校生を紹介します。」


先生のこの一言に、クラス中が騒ぎ始めた。


「どんな子だろ?」

「可愛い子だといいな~!」

「もしかしたら暗い性格の子かもしれないよ?」


「はいはい、それは見てのお楽しみよ~転校生さん、入っていいわよ~」


先生の合図で、教室の扉がガラリと開かれた。そして、転校生が一歩ずつ教室に入ってきて…………


………え?


「わあ…可愛い子だね。」


涼風が声を潜めて隣にいる私に話しかけてきた。


「……そりゃ…当然でしょ……」


…肩まで伸びた艶やかな黒髪、切れ長の目の瞳は、黄色に輝いている。一見男性にも見えるかもしれないフォルム。そして、三日月の髪飾り…


「松城高校から転校してきました。『霜影しもかげ 雪乃ゆきの』といいます。皆さん、宜しくお願いします。」


…転校生は『氷と影の魔法少女の影雪』だった。



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