Web小説創作を通じて得られたもの、或いは、Desire/Disaster 制作秘話

Desire/Disaster 『三神麻里亜の五日間から、雪本つぐみの一年五ヶ月間へと』


 三神麻里亜という無神論者の女の子が僕の頭の中に降り立ったのは、人生三回目のセンター試験を間近に控えた大学二年生の秋だか冬だかだったと思います。当初は悪魔契約伝奇×異能バトルロイヤルなんて設定は存在せず、『順風満帆な人生を送っていた女子大生が、ある日突然通り魔に刺されて死んでしまう』みたいな短編を書く予定でした。


 はい、もうこの時点で突っこみどころ満載ですね。


 自分でも、何故こんな作品を書いたのだろう? いや、書いてしまったのだろう? と疑問に感じたので、この場を借りて執筆体験記のようなものを書かせていただこうと思います。四章完結してキリ良いし、そしてここまで拙作を読んでくださった皆様に、伝えなくてはならないことがあるので。


 突然ですが。


 本作、『Desire/Disaster』は、2019/10/14に投稿した第四章最終話を以て、連載を中止、いや、恐らくは終了させていただきます。つまり、これで終わりです。  


 未完という形で畳んでしまい、本当に申し訳がないです。何も言わずに消え去るよりは釈明をして消え去る方がいいかと思った次第です。本当に、申し訳がないです。「続きが読みたい、いや読ませろ、読むまでは〇ねん」という方は、コメント欄にその旨を記載していただくか、カクヨムに紐づけられた僕のTwitter(雪本つぐみで検索すれば出ます、過去ツイは遡らないでくださいお願いします)の方に突していただければ、四章以降の簡易なプロットを送付する、どんなに時間がかかっても完結させる等、何らかの対応は取れると思います。僕としてもこのまま未完で終わらせる気はさらさらないし、というかまだまだ書きたいシーンとか形にしたい構想とか未回収の伏線とかは沢山あるので、ネットでの更新は止めてもこの物語は書き続けます。


 その他何かご用件がありましたら、何でもお気軽にコメント欄の方にお願いします。アカウントは記念として残す予定ですが、これが本作の読者の方と交流する最後の機会になるかもしれないので……。連載お疲れさまでした、とかでも嬉しいです。

 

 連載を中止する理由に関しては、挙げようと思えばいくらでも挙げられます。


 たとえば、


『評価やPVに否応にも振り回されるWebでの創作活動に限界を感じたから』

『単純に心身ともに多忙で、ネット小説創作に充てる時間が取れないから』

『カクヨムロイヤルティプログラムの導入によって、泥沼化しそうだから』

『構想では第四章が一番書きたかった章で、最後まで無事書き切れたから』

『全盛期と比較して評価や反応が芳しくなく、作者のモチベが尽きたから』

『ネット独特の、マウンティングや馴れ合いや誹謗中傷に心底疲れたから』


 などなどなど。理由もとい言い訳ならいくらでも挙げられます。

 ですがやはり、本命はこれです。

『このままだと、ネットに時間を取られ過ぎ他のことに手が回らないから』


 。これが詰まるところ、一番の本音かもしれません。


 自分語りはするのもされるのも嫌いなんですが、敢えてするなら、僕は人生の一定期間にしか与えられない青春という貴重な飴玉をインターネットの海に落として溶かしてしまったような人間で、まあ平たく言うと「やるべきことをやる時にやれなかった」人種なのです。おかげで色々なことに失敗して様々なものを喪ったし、というか恐らくは失敗することにすら失敗しています。


 勿論、ネット漬けの日々全てが無駄とは思いたくないし、現にこうしてインターネットを通じてWeb小説を発表でき、当初の想定からは思いもよらないような評価をいただけたり、本作を通じて多くの人と交流できたり、そして何より書いていてとても楽しかった(!)りしたわけですから、まあ一種の青春の形としてはアリだったのかなあとか思ったり思わなかったり。


 要約。いい加減ネット絶ちしたいからネット小説も止めます。更新を楽しみにしていてくれた方、申し訳ありません。

 

 再開するかこのまま打ち切るかは今現在も未定(忘れ去られたころに戻ってくる可能性も無きにしも非ず)ですが、ひとまずの区切りがついた2019/10/15の今日、書いていた当時想ったことを書き連ねていきたいと思います。ただの自己満足かもしれません。需要があるかもわかりませんし、蛇足かもしれないですが、自身のWebでの創作活動の締め括りとして自分のために書きます。思い出にもなるし。


 さて、遅れ馳せながら、まずは。


 本作、『Desire/Disaster』をここまで読んでくださった方、感想やレビューを送ってくれた方、コンテストのランキングで覇を競い火花を散らした方、面白いと言ってくれたり応援してくれたりした方、同人書籍版を作るにあたり快く協力してくださった方、そして何よりこの作品に関わってくれた全ての人に、この言葉を。


『ありがとうございます』


 冒頭で何故こんな作品を書くに至ったか解らないみたいなことを書きましたが、それは詰まるところ、です。読者がいなければ作品は作品足り得ないし、作者は作者足り得ないのだと思います。

 ここ一年五ヶ月間、カクヨムでの活動を通し、一人で書いているだけでは決して得られないような創作経験をさせてもらいました。感謝してもしきれないほどです。


 ここまで連載を続けられたのは、読者の皆様のお陰です。


 まあ、頑張って書いたのは自分なのですが、書き「続けられ」たのは間違いなく読者様のお陰です。改めて、ありがとうございます。

 

 「作者が作品を語る」ことに幾ばくかの抵抗意識を覚えないでもないのですが、ここから適宜本編に触れつつあとがきらしいことを書いていこうと思います。

 

 2018/5/20の連載開始日から数えて約一年五か月。本日2019/10/15に、本作のPV

は25000を数えるまでになりました。作品の面白さや評価を完全に数値に置換することは出来ないし、第一そんなことで作品の優劣を決めてもつまらないと思いますが、「よくこんなに読まれたなあ……」というのが第一の感想です。連載開始当初はかなり伸び悩み、「1000でも読まれたら上出来か」「まあ趣味だしなあ」「十人読んで二人好きになってくれたらいいかなあ」といった具合でした。本作がここまで愛好されたことに一番驚いているのは、間違いなく作者の僕です。僕はあまりネット小説やラノベは読まないので自作の立ち位置が把握できていないのですが、今日のWeb小説の本流からかけ離れた、確実に万人受けの作風ではない作品であることは誰よりも自覚しています。情け容赦のないハードな展開の連続。チートもハーレムも無双もない。徹頭徹尾シリアス。よくもまあこの作風で人気が出たなと思います。

 でも、電撃新文芸四日連続週間12位(今思い返してもある意味凄い)やカクヨムコン4中間選考通過を筆頭に、本作が作者の予想を超えた評価を得られたのは、読者に媚びず世相に流されず、「自分の好きな話」を突き詰めたからなのでは? と思います。書籍化されてから言え。そう言われればそこまでですが……。


 連載をしていて一番手ごたえを感じた瞬間、及び読者の皆様から一番高い評価を得られたと思うのは、第一章ラストの展開です。麻里亜が道流に殺されて、その道流も連城に殺されて、一章の伏線やシーンが収束していく、あの展開ですね。ここの登場シーンのインパクトが強いからか、登場回数こそ少ないものの、「連城が好き」という意見が多かった気がします。先日読み返してみたのですが、凡そ常軌を逸した話ですね、これは。『願いを持たない少女が願いを見つける話』だけで一編書けそうなのに、それを擲ってのあの展開。「今もう一回書け」と言われてもこうは書けないと思います。振り返ってみると、ここ繋ぎが雑だなあとか麻里亜と結花の絡みが少ない(!)とか文体拗らせすぎとか色々突っこめますが、一番思い入れがある箇所だったので、一章を纏めた同人書籍も作りました。同人サークルを結成し、プロのイラストレーターの方に表紙を描いて戴け、初めてイベントに足を運ぶまでのあの時の高揚感は、きっとこの先一生覚えていると思います。本当に充実していた。


 折角第一章に触れたのだから、二章以降にも順に触れ、そして総括していきたいと思います。あと1000文字くらいしか尺ないぞ急げ。


 二章はゲームが始まり、契約者たちが一堂に会する関係上、一章のようなパッチワーク形式は諦め、その分キャラの顔見せや能力の打ち合いに割いています。テンポの良い展開を意識しました。本作の展開の速さ、ないしテンポの良さは度々読者の方から言及されたのですが、これは毀誉褒貶両方の意味ででした。自分の手癖として、面倒なところはすっ飛ばしてしまったり説明を簡略化してしまったりするところがあるのかもしれません。これは今後の重要な課題ですね。

 この頃は今から思うと異常に過ぎる更新ペースを誇っていました。何だよ二日に一回更新って。それだけ創作意欲に満ちていたのもありますが、当時は電撃新文芸に参加していたため、少しでも流れに乗りたかったのでしょう。何れにせよ良いことです。


 続いて三章。三章は一番楽しく書けた章だと思います。中でも自分の中で筆の乗りが良かったのが、Ep.16-1からの四話。ここではアイデアが次から次へと湧出し、書く手を止めることができませんでした。文体の観点からも、この辺りから安定してきたような気がします。文章評価に関してですが、これは「読みやすい」「語彙が豊富」「読んでいて楽しい」等、肯定的な意見が多く、自分にとってはかなりの自信になりました。

 三章で特筆すべきはアリスとの遊戯から摩天楼での戦いを描く第十九節から第二十一節までの展開。事実この時期が一番数字の回転が速く、書いていてとても楽しかった時期でもあります。ここでキャラクターについて言及すると、僕が書いていて楽しかった、つまりは好きなキャラは加賀美アリス、法条暁、朱鷺山しぐれの三人です。番外ではルサールカちゃん。御厨翼という作者の自己投影が見え隠れするような歪んだキャラを描いたのはつまりはそういうことです。アリスが好きなのは、彼女が大暴れする第十九節は、実はプロットというものを一切使わずに書いています。書き溜めも無し。つまりは全てが出たとこ勝負。彼女の精神構造を読み解く過程はとても楽しくて、書いていてとても楽しかったです。法条としぐれは言わぬが花と言うやつでしょう。

 そして三章は、一章終盤の展開を更に返す展開があります。周=ネヴィロスのあれですね。ここも割といい評価をいただきました。


 最後に四章。シリーズ最長となり、Web連載版の最終章ですが、やりたかったことはいたってシンプルです。それは「御厨翼と法条暁の対決」。「悪魔=嘗てのゲームの参加者の成れの果て」もありますが、これはおまけみたいなものです。御厨と法条の二人の対峙こそが、歪んだ思想を持った歪んだ人間同士が戦う展開こそが、本章で一番やりたかったことです。その実、戦いというよりは詭弁合戦みたいな感じになってしまいましたが、書けて良かったです。

 本章がここまで長引いてしまった理由として、主人公である周くんをわざと話の本流から外したから、というのがあります。これはかなりの賭けで、正直上手くいったかどうかは微妙なところでしたが、その分別のキャラクターに焦点を充てられたのでこれはこれで。本章の前半部分(Ep.25-2まで)を書き上げた段階ではカクヨムコン4真っ最中だったこともあり、苦しかったですが創作というモノに真摯に向き合う機会としては良かったと思います。


 四章後半からは文字数も増えその分更新ペースは落ち、一時期はかなり伸び悩みましたが、何とか着地できてよかったです。暗い展開の果てに最後に残された希望、みたいなものが書きたかった。最終話はその願いが如実に表れています。

 法条と御厨に限らず、本作に登場するキャラクターたちは誰もが著しく歪んでいます。その歪んだ人間たちが抱く願いはどういったものなのか。彼ら彼女らを戦わせたらどんな物語が生まれるのか。彼らの願いの先にはどんな光景が待っているのか。

 そんなコンセプトのもとに生まれたのが本作なのだと思います。結果論かもしれないですが、これは大正解でした。「雪本つぐみらしさ」が現れているので。

 あまり「テーマ性」というものは考えないで書くタイプなのかもしれませんが、僕は本作をここまで書き上げて、漸く自分が「書きたいもの」「書きたい作品」が茫洋とではありますが見えてきた気がします。


 さて、そろそろ纏めに入ります。

 

 繰り返しになりますが、本作を少しでも読んでくれた方、ありがとうございます。

 一章から三章を連載している当時、かなりハードなバイトをしていたこともあり、帰りに星やコメントを貰えていたり、PVが増えているのを見たときは電車の中で欣喜雀躍したものです。一つの青春のカタチがここにありました。

 本作を読んでくれた方が少しでも楽しんでいただけたのなら、作者冥利に尽きます。それから、広大なネットの中でカクヨムという場にも巡り合えた良かったです。掲示板や動画サイト、Twitterやブログと放浪と変遷の果てに最後にここに行き着けたことはかなりの幸運だったと思います。カクヨムに投稿を始めた当初のあの時感じた創作の楽しさはきっと唯一無二でしょう。


 それから最後に。

 本作を書くにあたり、数多くの作品から影響を受けました。


 骨子となる設定は金色のガッシュや未来日記、情け容赦のない異能バトルはバジリスクや魔法少女育成計画、能力の論理性や相性は戦闘破壊学園ダンゲロス、悪魔と少女という題材はクロノクルセイド、可愛い女の子×絶望展開は魔法少女まどか☆マギカ、他にも噛み締めるように読み漁ったミステリーやサスペンス、そして「こんな話を書きたい!」と思わせてくれたFate/stay nightや空の境界。


 数えきれないほどの作品から影響を受けています。

 いや、影響を受けたからこそ、本作を書いたのです。


 本作を通じて沢山の人と交流できたこと。影響しあえたことに感謝しつつ、筆をおきます。


                     2019/10/15 雪本つぐみ








 






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