第18話 書庫

結局その日、2科目のテストが行われたが、両方ともキメラが試験官を務め、そして騒いだ割には何も起こらなかった。


急に現れて何が目的だったのかと思うが、結局あくまでキメラは試験官であって、それ以上では無かったという事だったのだ。


確かにキメラは、騒がれるほどには綺麗で年齢も不詳。そんな美貌だからこそ、あんな噂が立つのだろうと考えればそれで納得はいく。


ひなたにしてみれば、テストを無難に終えて待ちわびた放課後をようやく迎えた。


ゆいは用事があるので待っていてくれと言っていた。どれだけの用事でどれぐらい時間がかかるか分からなかったので、ひなたは図書室で時間を潰す事にした。


テストが終わったというのに、図書室は割と混んでいた。ひなたには秘密の場所があるので、そこへ向かう。秘密の場所というのは図書室の奥にある書庫だ。


もちろん鍵がかかっていて本来は入れないのだが、本棚の裏に使っていない扉がありスペース的に開け閉めが出来ない為か鍵がかかっていなかった。


よほど注意して見なければ、そこに扉がある事にすら気がつかない。そこから書庫に入るにしても人がひとりギリギリ通れるくらいの隙間しかないくらいの場所だった。


そんな滅多に人が来ない場所だから、ひなたは男たちとよく“利用”していた。秘密の書庫は、ひなたの秘密も一緒に貯蔵している。


人目を盗んで部屋に入り、乱雑に積み重なっている本の脇にある台に腰をかける。改めて凄い本の量に圧倒される。


いつも誰かと、それだけの為に来ていた場所だから、こんなに落ち着いて書庫内を見渡す事は無かった。


何回来たかも覚えていないが、今となってはどんなふうにしていたかも覚えていない。


考えてみれば、毎日のようにいろいろな男としてきたセックスは、ただの消費だったのかもしれない。自分にとっても、彼らにとっても。


それに引き換え、ゆいはたっぷり貯えてくれる。ゆいといるだけで、ひなたの中にはゆいが満たされている。


はやくゆいに会いたい。そう思った時、ゆいからメッセージが来た。


「第2保健室に来てください」


“第2保健室かぁ”


今日は、ゆいの家に行くはずだったのに第2保健室に来てく欲しいと書いてある。


“エロゆいめ。我慢出来なくなったな”


思わず顔がニヤける。ひなたは、そわそわしながら立ち上がった。


「何だ1人か?」


誰もいないはずの書庫でイキナリ声をかけられて、ひなたは驚く。


そこに立っていたのは、君塚蒋平だった。

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