番外:五島手延べうどん(長崎)

 田植えも済み、おたまじゃくしも増えた田圃では、ツバメや鴨、ときにはカラスまでもが、泥を突いてみたり、水浴びをしてみたりする時期になりました。珍しい所ではキジなども。ヒトの勝手な見方なのですが、華やかな雄のキジが田圃を突いているのを見ると、なにかこう、場違いのようなおかしみを感じてしまいます。本来の場所ではないと言えばいいのでしょうか。地元ではない他の県の食材でも構わずお前らの腹にブチ込みに来たぜ! 俺だ。吉岡だ。


今回のブツはこれだ。

https://www.instagram.com/p/BjTfEEvhOou/


 長崎は五島列島名産の五島手延べうどんだ。インスタを見て貰えば分かるように、普通のうどんより遥かに細い。友人に見せたら、せいろに乗せていたこともあって、蕎麦と勘違いしていたほどだぜ。


 テロリストとしては恥ずかしい話だが、実はこのうどん、初めて食った。初めての物を作る場合には、どうするか。袋の裏とかに書いてある作り方をキッチリ守るんだよ! 作った奴がうまいと思う調理方法を書いてあるんだ。間違いがねえはずだ。自分で工夫をするのはその後だ!


 なんでもこのうどん、「地獄炊き」というテロリスト心をくすぐる調理方法があるらしい。鍋に張ったたっぷりのお湯を沸騰させ、7~10分加熱したとこで火を止め、そのまま蓋をして2分ほど蒸らす。そして、茹で上がったうどんを、水で締めずにそのままダイレクトにアゴ出汁でいただくそうだ。いわゆる釜揚げうどん方式だな。


 袋に書いあてる通りとはいえ、こんな細いのに水で締めねえで大丈夫かよ。フニャフニャになるんじゃねえのか? と思ったが、まずは書いてある通りにするのが鉄則だ。実際やってみて驚いたぜ。うめえ。


 確かに、一番外側はふんわりとした食感だ。しかし、中はキッチリとコシがある。それも茹でそこねの時の粉っぽい硬さじゃねえ。例えとして適当かどうかはわからねえが、タピオカを噛んだ時みたいな、キュッとしたコシがあってびびったぜ。


 さらに、熱々のうどんを漬けたアゴ出汁。トビウオでとった出汁の事だな。これが「ぶし」感が半端ねえ。「ああ、魚の出汁で食ってるわー」という感慨にどっぷり浸れるぜ。ごちそうさまでした。そうそう、地獄炊きのルックは、インスタの2枚目を見てくれ。


 そして、釜揚げを試したら、ざるも試すぜ。今度は既定の時間茹でたら、水で締めてざるに上げる。例によってアゴ出汁でいただいたんだが。この口当たりとのど越しの良さと言ったら! やはり水で締めると全然変わるぜ。キュッとしてエッジとコシがあって、細いのに噛みごたえがある。讃岐うどん系のどっしりとした食感とは違う、きっちりとしたコシがあるのが面白い。うめえ。個人的にはうどんの食感はこっちの方が好きだ。


 ただ、問題はアゴ出汁だ。冷やしてもうまいにはうまいが、やはり温かい時のあの香りが立ってこねえ。麺は冷たい方が好みで、出汁は温かい方が好みだ。だが、俺が思うに、きっとこれは長崎の奴等の策略だ。出汁が気になって温かいうどんを食ったら、麺が気になって冷たいうどんを食うハメになる。そしてまた出汁が気になって……という無限ループに巻き込む気に違いねえ! 油断も隙もねえぜ。


 さて、今回俺が食った……いや、食らった弾は、氷月あやさんの「エボリューション・アイランズ!」というお話内に出てくる弾だ。


エボリューション・アイランズ!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885662544


 五島列島を舞台にして、歴史や文化、そして食事にレースバトルと、盛沢山の内容が楽しい話だ。そして厄介な事に、氷月さんは話の作りと文章がうめえ。人が五島列島の文化だとか電気自動車のシステムとかポニーテールの話に夢中になっている所に、いきなり飯の話をぶち込んできやがる。読む時は気を付けるんだな! 俺だから思わずうどんをお取り寄せするくらいで済んだが、お前らなら長崎行きのチケットを手配する事になりかねねえからな!


 だが忘れるなよ。俺はテロるためなら手段を選ばねえ。他の方の話を読んで自分が食らった弾でも、躊躇いなく打ち込んでやるぜ!


 氷月さんのお話は、五島列島の事を知るの事もできますし、普通のお話として楽しむこともできますので、お勧めです。お前らも読んで、そして、えっハコフグってそんな風に調理して良いんですか!? とか思ってしまうがいいさ!

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