作中ご飯12:アジア風角煮丼

 俺だ。吉岡だ。今回は時候の挨拶はねえ。すまねえな。思い入れのあるブツで、ちょっと感傷的な気分なんだ。まずはブツを見てくれ。


今回のブツはこれだ

https://www.instagram.com/p/BjM9APcBeDv/


 本編中ではコータが切り札として出す、MAKA-MAKAフェス飯のエースとなるであろう、アジア風角煮丼だ! アジア風のアジアってどこかって? 日本の富士宮だ! 嘘は言ってねえぜ!


 丼に白いご飯を盛り、サニーレタスを1枚敷き、その上に角煮を2ブロックと半熟のゆで卵を縦に割った物を並べる。角煮を煮た煮汁を回しかけしたら、仕上げに黒コショウを角煮の上へと削って振りかければ完成だ。


 インスタを見たり、説明を聞いたりして、ん? と思った人も多いだろう。角煮にサニーレタスを敷くの? だとか、わざわざ油の多い煮汁をかけるの? だとか、和からしでなくて黒コショウをかけるの? とかな。


 答えは全部イエスだ。こいつは角煮であって角煮でない。「角煮の名を借りた、豚バラ肉を煮た何か」だ。作り方は恐ろしく大雑把だ。まず、うまい油を出す豚バラ肉を用意して下さい。そして、にんにく・ショウガを入れた寸胴で下茹でする。下茹でして灰汁を取ったら、余分な油はそのままに、創味のめんつゆを入れて煮る。1時間ほど煮たら、味を入れるためにいったんそのまま放置して常温まで冷やす。そんだけだ。食う時はまた火を入れて温めてから食ってくれ。できることなら、そこそこ長く炊いてから食って欲しい。


 コイツは、角煮道の勇者たちが目指しているような、「箸を入れるとすっと通る」「口に入れるとほろっと溶ける」ような仕上がりじゃねえ。表面はむしろ歯ごたえがあり、噛むと中はほどける様な食感ではあるものの、けっして諸手を挙げて「やわらかい」と言えるような状態じゃあない。それでも、いったん肉の外に出た旨味と、溶けだした油の旨味を吸った豚肉は、噛めばじゅわっと味が溢れだしてきてうめえんだ。存分に、「肉を噛む」事を楽しめる仕上がりになってるはずだぜ。


 その食感に味は、和食の角煮のような、甘辛しっとりぷるぷる路線とは一線を画す。ワイルドで、パンチの効いたそれだ。ヨーグル豚みてえに、油にアドバンテージがない豚でやってしまうと、少々獣臭くなってしまうかもしれねえ。噛むとじゅわっと染み出す味は、豚の油の甘さはあるものの、どちらかといえば、「しょっぱい系」の美味さだ。


 うまいが、やはり少々しつこい。そこで出番になるのが、サニーレタスに白ご飯、そして、煮卵ではない普通の半熟卵だ。普通、角煮に添える煮卵と言えば、味の沁み込んだ卵が定番だ。あれおいしいですよね。しかし、この「角煮」に限っては、豚のしつこさをやわらげるために、プレーンな煮卵の方が合うというわけだ。爽やかプルンな白身でお口直しして、またワイルドな角煮をガツンと腹にブチ込むのさ! 決して上品な味じゃあねえが、うまいぜ。


 実はこの角煮丼は、俺の想い出のメシだ。前にチキンご飯のところで、「もうひとつだけ作りたいメニューがある」と書いたが、それがコイツだ。この話、ならびに本編を書こうと思ったのも、コイツをもう一度作ってみるか、という動機が大きい。想い出補正もあるんだろうが、うめえんだ。俺は鶏肉が一番好きだが、それとは別格で好きなメシが、この豚の「角煮」だ。


 ある種の飯ってのは不思議なもんで、作って食ってた時の想い出込みで味わっちまう。音楽とよく似ている所があるぜ。多感な時期の飯はもちろん、そんな事意識しないで親が作ってくれた飯を単に食ってただけの時期でも、食うだけでいろいろな事を思い出しちまうメシがある。


 チキンご飯の方は、その気になればすぐできるメシだが、いかんせんコイツは、手順は単純だが時間がかかる。それがネックなって、最後に作ったのは年単位で前だ。もの凄い懐かしい旧友のようなメシなのさ。


 おっと、なんか湿っぽくなりそうだな。すまねえな。さすがの俺も、今夜ばかりは包丁とフライパンを置いて、夜空でも眺めていたい気分なんだ。


 まだテロリストになる前の俺。あの頃を思い出して、煌めく星と想い出を肴に、良く冷えたビールを茹で上がったばかりの枝豆に塩を振ったおつまみを食べつつ一気にごくりと流し込み、2杯目のビールのおかわりにまで手を伸ばしたい気分だぜ! ひっかかったな。今の俺はテロリストだ。お前らの腹を鳴らせるためには手段を選ばねえぜ!


 ともあれ、この角煮丼は俺にとって、ちょっとした想い出の丼なのさ。本編はもう少し先がクライマックスの予定だが、こちらの日記帳は、ここがクライマックスだ。正直、これが書けたら俺は満足だ。だから、こちらの更新は少し途絶えるかもしれねえ。本編もなんとか8万字を越えたし、ここらで「コータ達のたたかいはこれからだ!」とか書いて[完結]ボタン押しちまっても別にいいかな、とまで思っている。


 一応、本編中であと1~2品はメシ関連出るのかな、という感触なので何かしらは書くとは思うが、とりあえずは、俺の気持ちとしてはここで一区切りってわけだ。


 今まで、俺のテロに付き合ってくれてありがとう。礼を言うぜ。1ヶ月にも満たねえ期間だったが、楽しくて、そしておいしかったぜ。朝霧周辺食材って、本当にいろいろあって今回初めて知ったのもありました。1発でもお前らの腹に響いてる弾があったら嬉しいんだがな。


 それじゃあ、良い週末を! お前らもこの週末に、想い出のメシを食べて英気を養ってしまうがいいさ!

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