OP03「自信過剰な宣戦布告」
Side by 叶音
総合商業施設「イザナミー」は島唯一の娯楽施設ということもあって、充実したレジャーが揃っている。映画館や屋上遊園地、レストラン、そして海上のライブステージ。
今日はここで亜霊島観光大使を決めるアイドル選挙ライブが行われる予定だった。
主催が大手企業の威座涛コンツェルンということもあり、近くで活動するいわゆるロコドル達が今後の飛躍を狙って集まって来ている。
千浦叶音もそのうちの一人であった。
叶音「久々のまっとうな歌のお仕事…ちょっと緊張するかも」
その緊張を破るように、部屋にコンコンとノックの音が響いた。
叶音「はいはーい、どうぞー?」
かなで「ほーほっほっほ!」
ドアをばぁーんっ!と思い切り良く開け、高らかに笑いながら入ってきたのは、他のプロダクション所属で、同年代のアイドル、十条かなでだ。
叶音「げぇっ…」
かなで「来てあげましたわよ、千浦さん!」
叶音「お帰りはあちらよ?」
叶音は扉に指を向ける。
かなで「奇しくも同期、そしてアイドルよりバラドル活動の方が売れている貴方!」
それを無視して、かなではその場でくるくる回りながら台詞を続ける。
かなで「今日こそは貴方より優れたアイドルであることを証明しますわ!」
びしぃッ!と指を突き付ける。
叶音「うんうん…聞いてないよねー…」
叶音は半ば諦め気味だ。
叶音「で、今度は何?ロシアン饅頭対決?」
かなで「……あの時の話はやめましょう千浦さん。あの、6個中5個がハズレだったロシアン饅頭の話は……」
叶音「そうね…」
二人は遠い目をしている。
気を取り直して、かなでは本題を切り出した。
かなで「今回の勝負はシンプルに!より会場を湧かせた方が勝ち!よろしいですわね?」
叶音「あれ、意外とまとも。でもでも、今回は健全なアイドル活動」
かなで「そう、私達には貴重なアイドル活動」
叶音「かなでちゃんには悪いけど、今回は実力見せちゃうよー」
愛らしくガッツポーズを決めてみせる叶音。
かなで「千浦さんにはここで業界から消えてもらいますわ」
それに対し、かなでは首を切るジェスチャーで荒々しく返した。
叶音「私が勝ったら、今夜の呑みは奢ってもらうからね!」
かなで「ふん、私はうわばみですから、今夜の奢りで懐をスカンピンにして差し上げますわ!」
ライバルの二人の火蓋は、割とゆるーく切って落とされたようだった。
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