夜が来た。


どこもかしこもじめじめとして葉の積もった地面だが、それでも多少は快適そうに見える辺りを切り開き、火を焚く。

そして交代で眠りにつく。


夜は無限に思える長さだ。


進めど進めど続く深い森を歩いてきて、そしていまもその森のなかにいる。

森から永遠に出ることが出来ないのではないだろうかという錯覚にともすれば陥りそうになる。


闇がこれほど怖いものだとは。


かつての私にとっては、夜はただ過ぎゆく時間。

私にとってはむしろ活動のしやすい歓迎すべきものだった。


闇はすべてを隠す。

私の姿も無論のこと。


だが。

いまは。

夜が恐ろしい。

身の回りすべてが闇に包まれてしまうのが怖い。


闇はすべてを隠す。

博斗の姿も隠してしまう。

それがいまの私にはとても怖い。


博斗が私の前から消えてしまうことは恐ろしい。

博斗と片時も離れたくない。

これが恋するということなのだろうか。


よくわからないままに私はそれでも眼を閉じる。

しかし瞼にぐいぐいと押しつけてくるような闇の重みに耐え切れず、眼を開く。


手探りをして、博斗の手を見い出すとそっと握る。

博斗は柔らかに握り返してくる。


私の猜疑と恐怖は、その手触り、触れ合っているという安堵によって溶かされる。


そうしてようやく眠りにつくことが出来る。

ひとりではとても眠れない。


ひとりでいることはなににも増して苦しい。

ひとりでは、自分がいったい誰なのか、わからない。

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