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カプセルが地上に戻ったのは、記憶に間違いがなければ、射出されたときからものの数時間後だったはずだ。
着いた場所は、ほんらい想定されていた場所とはだいぶずれていた。
正確な地理はわからないが、見事な熱帯雨林の真ん中に放り出された。
一万年の間になにかが壊れていたのか、一人乗りのところに二人乗ったからなのか、あるいはその両方が原因なのか、はっきりとはわからない。
ただはっきりしていることは、人のいる土地からはずいぶん遠いらしいということだった。
それから、とにかく方角の見当だけはつけ、私と博斗は森を歩き始めた。
いったいどのぐらい歩けば人里に出るのかもわからない。緩慢でつらい行程は始まった。
それから何日歩いたのだろうか。
もうはっきりとはわからない。
そろそろ一カ月になるのだろうか。
私一人なら日付は正確に覚えていただろう。
一週間、二週間までは日数を数えていた。
だがいつの間にか正確な日数を忘れてしまった。
こんなことはいままでの私にはないのだが。
私が、日付を忘れたことを伝えても、博斗は動じた様子ではなかった。
博斗が数えていたからというわけではない。
博斗ははじめから数えていない。
ただ、日数を数えても人里が近づくわけではないと言っただけで、それっきり日付のことは話題にしなかった。
そうして私も博斗も、いつしか日数など気にしなくなっていた。
陽が昇ると歩き始め、陽が暮れると適当な場所を見つけて眠る。
その間はただひたすら歩くだけ。
とはいえじめじめとして猛烈な暑さのこの土地では行程は思うほど進まず、一日かけても進む距離はたかがしれていた。
はたしてどの程度人のいる場所に近づいたのかもよくわからない。
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