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「なるほど」
桜が納得したふうで言った。
「天職かもしれませんね」
「オーディションがあるっていうからね、あたしが、応募しろってプッシュしたの。あれだけすごいアクション出来る子なんか、絶対、他にいないんだから。それに、かわいいから、人気爆発は間違いなし」
大学の敷地の広場で、学生達を看板で退け、カメラがまわされている。
向こうから走ってくるのは、どれもかわいい五人の女の子。
あまり似ていない子もいるけど、でも、やっぱり記憶が呼び覚まされて、遥は遠い目になった。
五人のなかには、なにかのCMで見たことがあるアイドルタレントもいるし、まったく見たことのないアクション出身らしい子もいるし、遥達のよく知っている顔もいる。
五人は途中まで駆けてきたところで、すとんときれいに転んだ。
後ろから、二メートルぐらいはありそうな醜い怪人がやってきた。
「おおっ!」
桜が、とても嬉しそうな声を上げた。
「相変わらずね、あんた」
「でも、わたし達、あんな怪人とは戦っていませんよ」
「仕方ないのよ。映画なんだから。作られたストーリーなんて、そんなもんよ。真実を知るのは、本人達だけ」
「みんな、変身よ!」
と、真ん中の、高校生の頃の遥に少し似ている子が声をかけた。
「念焼!」
と、きれいに五人がポーズを決めた。
「はい、カットォォォォ!」
と、監督の声が飛んだ。
「変身後、続けていくよ!」
すぐに五人は、ひっこんだ。
一人だけ、違うほうに行き、鮮やかなコスチュームに身を包んでいるスーツアクター達のところに走ると、ぱっぱっと手早く制服を脱いだ。
彼女は、差し出された青いコスチュームをすぐに着こむと、屈伸を始めた。
「へー、スーツアクターもやるんだ」
「本人が、どうしてもやるって言い張ったらしいの。しかも、やる予定だった人よりいいアクションするもんだから、それで通っちゃったの」
「らしい話ですね」
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