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早朝の陽光ブリッジを、滑るようにして、レッドメタリックのボディをした一台のツーリングワゴンが走っていた。
早朝で車が少ないためもあり、海の青を背景にする陽光ブリッジでは、その赤は際立って目立つ存在だった。
二分ほどで陽光ブリッジを越え、都市高速を北へとひた走り、さらに十分ほど走ったところで、ウィンカーを出してループ状の分岐に降りていった。
「陽光国際空港 出口」
ほどなく高速を降り、標識の誘導に従って車を駐車場に滑り込ませ、遥は空港のビルに入った。
コンコースの案内版を見たが、大きな遅れの出ている便はない。
遥は、約束をしてあった広場まで行くと、近くのベンチに座った。
ポケットから定期入れを出すと、中を開いた。
とたんに目頭が熱くなって、遥は、ずっと高いところにあるアーチ状の天井を見上げて、しばらく目をつぶっていた。
みんなが顔を会わせるのは何年ぶりだろう。
何かを告げるアナウンス。
行き交う人たちでざわつくコンコース。
遥が見ている間にも、実にさまざまな人間達が行き来している。
その一人一人にドラマがあり、人生がある。
遥は、定期入れを元に戻した。
大切なものだから、いつでもしっかりと持ち、見られるようにしてある。
まだみんながいたとき、五人がいて、博斗先生もひかり先生も理事長先生もいて、そして、稲穂もいて、たまちゃん達もいた、その頃に撮った大切な写真だ。
くじけそうになったとき、自分の信念に疑問を感じたとき、落ち込んだとき、遥はこの写真を見て自分を勇気づけた。
あの頃を思い出せば、どんなつらい時間だって乗り越えられる。
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