宮殿は、精緻に強度を計算して構成されていたその一角が崩れるや、海水の侵入を許し、爆発と水圧によって、たちまち崩壊した。


狂える水流は、自然の力の前に人間の権威がいかに無力であるかを誇示するように、支配者が着けていた王冠を粉々に砕いた。

だが同時に、すべての生命の母である海として、すべての生命を守るために散った一つの人間の体を優しく包み、そして、永遠に静かな海の底に連れていった。


急激な水圧の変化に、海水は悪魔の角のような巨大な渦と高波を生んだ。

宮殿からほど近いところにあったイツア島は高波に飲まれ、この一夜にして地図から消滅した。


空を鉛色に染める凶々しい茸雲がそびえたち、天高く舞い上がる瓦礫と砂塵、そして耳を裂かんばかりの轟音と、激しい振動が襲った。


震動と騒音は何千キロと離れた島々にも届き、島の原住民達は、その神の激しい怒りに、一様に畏れ、神を鎮める儀式を行った。


遠く日本でも、この震動が観測された。

ニュース速報では津波の心配がないことがただちに報告され、正体不明の核爆発は、それから一ヶ月ほどの間、マスメディアと学会を賑わせた。


そして、海は静かになった。

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