12

「…ここが、宮殿内のホルスの研究室だった場所です」

一つの扉の横を通過するときに、ひかりがそう言った。


…近い。

マヌと、もう一人、誰かがいる。

「もうすぐだな? ひかりさん?」


ひかりは、返事の代わりに立ち止まった。

通路の一部がやや広がって空間になっている。

その壁に、たいした意匠の彫り込みがある直方体の石柱に挟まれた、大きな石の扉があった。


扉には、取っ手という概念に該当しそうな場所はない。

ただ、手帳ぐらいの大きさの凹みがある。


博斗は、手のひらを凹みに重ねた。


…ゴゴゴ。


かすかな振動とともに、扉が上に引き上げられていく。


「いざ」

博斗はグラムドリングの柄をきつく握り締め、扉が身長よりも引き上げられると、足を踏み出した。

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