第五十話「紙上最大の侵略(前編)」シータ参謀登場

第五十話「紙上最大の侵略(前編)」 1

いったい、海に沈んだ宮殿にこれほどの広がりがあるとは、誰が思うだろうか。


ムーの宮殿は、ちょうど氷山のように、外見の建造物だけでは判断のつかないところにまで、その空間が広がっている。

いまは亡きホルスが、戦略と研究上の双方の理由からそのような配置をとったのだ。


宮殿はおおざっぱにみれば、ほぼ方形の敷地を擁している。

一階はあくまで粉飾であり、外見だけの楼閣に過ぎない。

地下にこそ核があり、地下一階には大広間があり、その下部は巨大な空洞となっていて、秘められた入り口から下降して入っていく事が出来る。


この空洞には、ムーの中枢であり、かつて世界の中枢でもあった巨大な動力炉が鎮座していた。

この動力炉が宮殿の本格的な起動を支える設備であり、また、宮殿に配置されたあらゆる悪魔的兵器の起動も、この動力炉に委ねられていた。


いまやその鍵は再び取り戻された。

動力炉は、再起動し臨界に達するための不気味な運転をすでに再開していた。


この愉快なときを妨害しようとする不愉快な人間達が近づいている。

「愚か者が何人寄ろうと、同じことよの」

マヌはくつくつと笑った。


「必要なものは、一つの力。すべてを統べる力」

 マヌは、傍らに静止して立っている黒い甲冑に触れた。

「地上の人間どもに、神の怒りを。貴様の手で下すのだ」


黒い仮面が、縦に小さく揺れた。

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