第四十七話「帝国から来た兄妹」プロフェッサー・ホルス登場
第四十七話「帝国から来た兄妹」 1
ピラコチャは酒の入った壷を放り投げた。
壁に当たって、壷は砕けた。
ピラコチャは怒りに苛立っていた。
すべてが憎らしいが、特に不快なのは自分の不甲斐なさだった。
「なんという臭いですか。ピラコチャ、酒を飲むのもたいがいにしたほうがいいですよ」
ピラコチャの部屋の入り口に、ホルスが鼻を布で覆いながら立っていた。
「あなたの怒りはよくわかりますとも。僕たちは二人が二人とも、マヌ総帥にひどい失態を見せてしまったのですからね」
「総帥にいい遊び相手がいたからよかったがな。あのままいってりゃあ、総帥のオモチャにされたのは俺達のほうだった…」
「ふふふふふ」
ホルスが、ぞっとする声色で笑った。
「そこでイシスの身を総帥に献上すれば、僕達の首も長くつながるとは思いませんか?」
「…ああ? てめえ、まだイシスのことをあきらめてねえのか? もうはっきりしたろう、奴も敵だ!」
ホルスはすっすっと部屋に入ってくると、ピラコチャの肩に触れた。
「少々荒っぽいかもしれませんがね。僕の手で、連れ帰ってきます。そして、僕の愛を二度と忘れぬよう、しっかりと教えるのです」
「連れて帰るだと! てめえごときじゃ無理よホルス! 俺のこの傷を見ろ! 悔しいが奴らは強ぇ! 軟弱なてめえにゃ不可能だ! それにな、神官怪人だってあの始末だ! てめえの造る怪人じゃあ、しょせんスクールファイブどもには勝てんのよ!」
哄笑するピラコチャにも、ホルスは顔色一つ変えなかった。
「なに、ピラコチャ。もう新しい合成怪人を造るつもりはありませんよ。元々たいした能力もない素材をいくらコアで増幅したところで、強力な怪人が生まれるはずはない」
「わかってんなら、てめえはあきらめな。怪我が治りゃあ、俺がまた行ってやらあ」
「いえ」
ホルスは根気よくピラコチャに繰り返した。
「まあ、見ていなさい。最強の合成怪人は、とっくの昔に造ってあるのです。いよいよその出番が来たようですね」
「なんだと?」
ピラコチャの目が光った。
「そいつはどこだ、どこにいる!」
「いますよ。動作テストも終了しています」
「てめぇ、神官コアの他にも、そんなもんをまだ隠してやがったのか…」
「最強怪人の力は、他の怪人とは桁が違います。今日のところは、イシスと連中に、最後通牒を突きつけるだけとするつもりですよ。彼の力を見せるなど、そのあとからでも充分です」
「そうか、けっ、けけけっ、ようし、いける。やはり俺達は、奴らを倒すことが出来る!」
大笑いし始めたピラコチャを残し、ホルスは悠然と歩き始めた。
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