12
ひかりは、すべての流れが一気に動き始めたと確信し、博斗に寄り添うようにして、その姿を現した。
いままでは細心の注意を払って、ピラコチャと、そしてもちろんホルスに、自分の姿は見せないようにしてきた。
だが、もはやそんなときではない。
博斗に諭されて、はっきりと決心がついた。
ひかりは、頭を振りながら起き上がったブルーを助け起こした。
「ピラコチャのことは、博斗先生にお任せなさい。あなたは、みんなと離れては駄目です。あなたがいなくては勝てないのです」
「うんっ、いかなきゃ!」
ブルーは飛び起きて、負傷などものともせずに戦線に戻った。
ひかりは、ブルーの後ろ姿を見送ると、ゆっくりと立ち上がった。
ホルスの気配がある。
近くの雑居ビルを見上げた。案の定、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてこっちを見ているホルスの姿を、その屋上に見い出した。
ひかりの頭に、ホルスの陰鬱な声が飛びこんできた。
(こんなところでなにをしているんです、イシス。探しましたよ)
(私はイシスではありません。酒々井ひかりです)
(く…。僕に逆らおうというのですか? 笑止)
(むしろ反対ではありませんか。あなたにも最後のチャンスがあります。どうか不毛な研究などやめていただけませんか?)
(なにを言いますか。怪人は僕の長年の研究の結晶です。完成された新しい人間の姿です。イシス、お前がいればさらに研究ははかどります。さあ、こちらへ来なさい)
ひかりは念話を切った。
およそ無理だろうとは考えてはいたが、やはり、ホルスの考えを変えることは出来ない。
「となれば、せめて私の手で彼を討つ以外に、やはりないのですね」
「ちい! そうか、それがお前の返事ですか!」
ホルスが、ゆっくりと空から降りてきた。
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