13

博斗は、グラムドリングを正眼に構え、ピラコチャから片時も視線を外さずに睨み付けていた。

全身は緊張していて、ピラコチャの一打を回避するためにどう動くか、それをひたすらに考えていた。


最初のひと振りか、多くてもふた振り。

そのぐらい攻撃を回避できれば、ピラコチャは落ち着きを失うと博斗はみていた。


あとは、由布に教わったことがどれだけ実践できるか、そして、オシリスとしての戦闘記憶がどれだけ戻ってくるか、だろう。

「かかってこないのか? 俺もお前には恨みがあるんだ」


ピラコチャが口を大きく開いた。

そして咆哮しながら突進してきた。

ピラコチャが、どんどん視界をふさいで巨大になってきて、その肩口から白い刃が…。


「!!」

体が反応して、横っ飛びをして受け身をとった。

ピラコチャの斧は空を斬り、アスファルトに叩き付けられた。

小さな地震が起きた。


博斗は体勢を戻すやいなやピラコチャの無防備な背中に斬りつけた。

さーっと白い光がピラコチャの背を撫で払い、バッと赤い血が吹いた。

止まらずに走り抜け、博斗は充分に間合いをとってから向き直った。


ピラコチャはのろのろ立ち上がった。

だが、再び博斗に向けられたその表情には、「なぜだ?」という問いと、わずかに生じ始めた恐怖が入り交じっていた。


「どんどん行くぜ。俺は、お前みたいな奴が嫌いなんだ」

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