14

遥は、急ぎ足で社に戻った。


「あ、あれれれ?」

隼はいない。代わりに…。


像だ。

木で出来た、丈一メートル程の大蛇の像。

この社にまつられているというツチノコをかたどった像だ。


「な、なんだ、びっくりした。ただの置物か。おかしいわね。こんなの、さっきはなかったのに…。そ、そうだ、隼さんは、どこ?」


遥は、薄暗い部屋の中を見回した。

壁にあるわずかな隙間から夕陽が挿して、ところどころ縞模様のようにオレンジに染めている。

隼はいない。


「はるか、どうしたの?」

いちばんに追いついた燕が聞いた。


「え、う、うん…」

遥は、ツチノコの像をまじまじと見つめた。


さっきここに来たときはなかったのに、いつのまにか置かれていて、代わりに隼さんが消えていて…。

「そっか! そういうことだったのね!」


「遥さん? 怪我をした人というのは…?」

後ろから由布も声をかけてきた。


「え? うん、もう、いないわ。きっと、怪我が治って、一人で山を下りたのよ。みんなも、たまには神様にお参りでもしてみれば?」


「僕は神様なんか信じないんだけど…」


「あたしも信じないわよ。でもあたしは自分の目で見たものは信じるもん。ここの神様は、きっと静かな雰囲気が好きなのよ。ねっ?」


「???」

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