10
「朝っぱらからたいへんな一日ですわねえ」
翠はうなだれていた。
「歩いて学校に行く羽目になるなんて、きっと怪人のせいに決まってますわ」
「そだね」
燕は自転車を押しながら歩いていた。
二人はやっと陽光学園の正門にやってきた。
こんな状況では生徒達もみんな遅刻しているようで、もう九時をすっかりまわっているというのに、まだまわりには二人の他に知った顔が歩いていた。
正門をくぐると、燕がいきなり翠の腰を抱いて横に大きくジャンプした。
二人がいた辺りにボボボンと連続した爆発が起こった。
生徒達が浮き足立って悲鳴を上げながらあちこちへ走り去っていく。
翠はきょとんとした顔で、元いたほうを眺めた。
「あれは、メイドグリーンじゃありませんの」
でも、なにか様子が変。
確かにいまの爆発は、メイドグリーンが自分達を狙って起こしたものじゃないのかなと翠は思った。
その疑問を裏付けるように、メイドグリーンの右腕が地面と水平に持ち上げられた。銃口が突き出ている。
「目標補足。掃射シマス」
燕がまた飛んだ。
二人がいた地面を機銃がが掃射し、土くれを飛び散らせた。
「ご冗談を! 二十六の武器をもっているんでしょう? 生身のわたくし達じゃ殺されますわ」
左腕に伸びかけた翠の右腕を、燕がつかんだ。いやいやをするように首を振っている。
「ダメだってば! あれは桜の大切なのなんだから!」
燕は翠の手を払って言い返した。
翠は燕の瞳を見て、そして頬を緩めた。
「燕さんには負けますわね。…じゃあ、逃げますわよっ!」
二人は手をとりあって中庭のほうに逃げ出した。
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