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電車が止まってからかれこれ三十分ほどが経ち、ようやく博斗は、混乱の局地にある陽光中央駅を抜け出した。
足元に気をつけながら駅前のロータリーを抜け、にこにこ銀座に入ろうとしてためらった。
駅の広い空間でこの始末では、にこにこ銀座の商店はどうなっているやら。
博斗はにこにこ銀座を使わずに、陽光本線の線路沿いを歩いてから学校に向かう裏道を使うことにした。
博斗は目を細めて立ち止まった。
前後を見回し、そばの電柱の陰にすっと隠れる。いま確かに青が見えたような気がした。
博斗はそっと首だけ出してもう一度前方の様子を確かめた。
やっぱり。
青服の戦闘員が見張りのつもりだろうか、突っ立っている。
博斗は不敵に微笑んだ。ようし。
博斗は、戦闘員の頭がこっちに向いていないことを確かめると、すぐ横の柵を乗り越えて内側の草むらに入った。
聞き覚えのある笑い声が聞こえた。
博斗は草陰からそっと様子を見た。
たぶん向こうとこっちの間の距離は優に三十メートルはあるだろうが、ピラコチャの声は途切れ途切れながらよく聞こえる。
「…行ってこい! 人間どもが混乱している隙に、どんどんエネルギーをかっぱらって来るんだ! けっ、いい気味だぜ。地上人のゴミみたいな技術じゃあ、デンジムーのウィルスは止められないだろうぜ」
ウィルスと言ったのか、ピラコチャは? コンピューターウィルスか。
そいつはちょっとやばいんでないか。
司令室も実験室もコンピューターにつながっている。
ムーのウィルスが司令室へのハッキングを目指して動くことは想像に難くない。
「さあ、いまのうちに行ってこい! ウィルスはぐんぐん広がるからな、狙える範囲もどんどん広がる。なんたって空気感染するんだからな。こいつは地上人の手には負えねえさ」
ピラコチャは哄笑した。
博斗は耳を疑った。
空気感染するコンピュータウィルスなんて、実際問題として防御策はゼロじゃないか。
コンピューターをシャットダウンするしかない。
博斗は静かに、しかし出来るだけ急いでその場を離れ、道路に戻った。
ピラコチャのところに怪人はいなかった。
おそらく二手に別れて行動しているのだろう。
怪人がウィルスを撒いて混乱を招き、その間にピラコチャ達があちこちからエネルギーを奪う。
こうしちゃいられない。とにかく早く学校に行こう。
博斗は走り出した。
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