由布と中庭で別れ、桜は実験室に戻った。

メイドグリーンはきちんと仕事をしてくれただろうか。


実験室のドアを引いて中に入った。すぐに準備室に入る。

「グリーン、いるんでしょ? 返事してよ」


メイドグリーンの返事はない。

おかしいなと思いながらも、黒板の下にある隠しスイッチを押して黒板を回転させ、裏実験室に入ろうとした。


ぐるりと忍者屋敷のように回転した黒板の陰から、なにかが飛び出してきて、いきなり桜の腰に当て身をした。


蛍光灯の光を跳ね返しててらてら光る銀の色が視界に入り、あまりに突然のことにどうすることも出来なかった桜は、小さな悲鳴をあげて跳ね飛ばされた。


「なん、で…」

桜の意識は消えた。がくりと顎が落ちた。


メイドグリーンは、気を失った桜を見ると、その腕からナイフを突き出した。

そして、桜の喉元にぴたりと刃を当てたが、一分ほどそのままなにもせずにじっとしていた。


やがてメイドグリーンはなにもせずにナイフをしまうと、立ちあがって、実験室の外に出た。

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