第四十三話「大防具作戦」名刀怪人ムーラマサ登場

第四十三話「大防具作戦」 1


保健室で、博斗はひかりの正面向かいに座って世話を受けていた。


「はい、これで、もう、いいはずですよ。動かしてみてください」


ひかりに言われて、博斗は、包帯の取れた右手でグーチョキパーを出してみた。

「おお。完璧に回復してるぞ。これでいつでもあんなことやこんなことが出来るな」


博斗は、白っぽくなっている右手をためつすがめつした。

変色している部分やでこぼこになってしまっている部分は多少あるが、それでも、ここまで回復できたのは驚きだ。

ひかりがどんな治療をしたかというのはよくわからないが、しかし、たいしたものだと思う。


それにしても…。

「かゆいなあ」

博斗は左手でボリボリと右手の甲を掻いた。


「駄目ですよ、博斗さん。掻くと治るものも治りません」

ひかりが、頬を膨らまして博斗の手をとり、自分の手の中に包んだ。

「我慢してください」


「…そんなことをされると、別のことを我慢するほうが難しい」

「なんですか?」

「いや。なんでもない」


あの、向井仁という怪人の気持ちが、よくわかる。

どうして人生ってのは、うまくいかないものなんだろう。

これで、いいじゃないか。他になにもなくたって。

俺がいて、俺の世話をしてくれる人がいて、それでいいじゃないか。

なんで、それだけじゃ駄目なんだ? なんで、それだけで終わってくれないんだ?


「どうしたんですか、博斗さん? 考えごとですか?」


「ん? …うん、まあ、そんなところ」

博斗は、椅子から腰を上げた。

「さてと」


「どうするんです?」

「そろそろマジもんに戦いがヤバくなってきてる気がするから、俺も、きちんとグラムドリングを使えるようにしようと思うんです」


「それはいい考えですね。でも、どうやって?」

「いるじゃないですか、俺達のすぐ近くに、グッドな剣術の先生が」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る