15

怪人が消えると、野菜になっていた人達が次々に元に戻っていった。


「ふう」

桜は萎えた表情をして辺りを見回した。


由布が燕の肩を抱いてなにか言いながらうなずいている。

…そういえば、燕の行動、少し変わったかな、と桜は感じた。


博斗は血相を変えて走り、ひかりがキャベツから元に戻るやいなや、抱き起こした。

「ひかりさん?」

「はい、大丈夫ですよ、博斗さん」

ひかりは目を細めた。


さて、いっぽう玉次郎は。

博斗達が戦っている頃には、もう家に帰っていた。


母親は、玄関からひょっこり帰ってきた玉次郎を抱きしめると、さんざん叱った。


でも玉次郎は文句を言い返さなかった。

ただ、抱かれていてくすぐったいなあと思った。


そして台所に戻ると、自分の残したピーマンのかけらを、しっかりと食べた。


玉次郎は、少しだけ大人になった気分がした。

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