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怪人は、相変わらず同じ場所にいた。

戦闘員に監視される形で、野菜にされた人間達が夜の地面に座っている。


「くっそー、ひかりさんをあんな目に合わせやがって。俺はどうでもいいけど、それだけは許せない」

博斗はささやくと、建物の影にいる遥と翠に目配せした。


あの怪人の攻略には、光線をなんとかしなければならないが、光線技には、伝統的な、いい対処方法がある。


フォークムーは、夜空から舞い降りてきた二つの影を見上げた。


黄色い奴が右側から、赤い奴が左側から、両手を背中に回して、まるで無防備に飛んできた。


「面白い、くらえ!」

フォークムーは両手を突き出し、右手から野菜化光線を、左手から野菜嫌い光線を送り出した。

「馬鹿な奴らめ!」


イエローは、背中にまわしてた両手を、体の正面に突き出した。

「馬鹿はあなたですわっ! いつまでも同じ攻撃がわたくし達に通用すると思って?」


イエローの両手には、等身大の鏡が握られていた。

学校の階段の一階の踊り場から拝借してきたのだ。


レッドも同じように二階の踊り場の鏡をかざしていた。


イエローとレッドに放たれた光線は、鏡に当たり、そのまま180度進行方向を変えて、元来た方向―怪人フォークムーに向かった。


「お、おおっ?」


フォークムーは、自分の放った光線を体に浴びた。


フォークムーの繊維質の脳が必死に考えた。

俺は野菜化光線と野菜嫌い光線を放った。

それが両方ともはね返ってきて、両方とも浴びたんだから…。


はっと気付くと、目の前に大きな鏡があった。

そこに映っていたのは、見るも憎らしい巨大なナスの姿をした怪人だった。


「!!!???」

遅まきながら、フォークムーは問題に気付いた。

このままではまずいと振り向くと、そこにも鏡があった。


「ヤサイイイイィィィ、ヤサイイイイイイ!」


フォークムーの叫び声を聞きながら、博斗は腕組みして、ふんと鼻を鳴らした。

「へ、ざまあみろ」


「キーーーーーエーーーーーローーーーッ!」

一人で勝手に苦しみ、唸り、怒り、ついに怪人フォークムーは、自分を殴りつけ、どっかーんと、自爆してしまった。

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