「遅い」

快治はつぶやいた。


様子を見に行くといったきり一時間も戻ってこない。まさかとは思うが…。


快治は立ち上がり、モニターに向かった。

三番目の十字架の場所である陽光中央病院をスキャンしてみたが、すでに怪人の気配はない。

スキャンの範囲を広げると、怪人の気配は、四つ目の十字架を埋めるためだろう、西に向かっていることがわかった。


コンピューターに行き先を計算させると、市街を離れた場所にある「建覚寺」が映し出された。

ここが最後の目的地ということか。十字架を仏教の寺に埋めるとはたいしたものだ。


それにしても遅い。


ひかりが、額に手を当てて司令室に戻ってきた。


「酒々井君、どうだね?」

「コアの分離にかかりました。これから調整にとりかかるところです。博斗さんは…?」


「君のところではないのかね?」

「いいえ。実験室には一度も来ていませんが」


快治の顔が青ざめた。

「ちょっと待っていてくれ」

そう言うと快治は遥達の眠っている部屋に入った。


博斗はいない。

「…困ったものだ」

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