人がざわざわと動く気配に気付き、遥は、かすかに声を上げて、目を細く開いた。


アンドロメダに飛び乗ったことまでは覚えている。その後の記憶が判然としない。

横に寝返りを打つようにして体を少し起こした。

ここは司令室の隣にある別室のようだ。


並んだベッドに、遥と同じように他の四人も眠っている。

そうか。

あたし達、負けたんだ。これ以上ないぐらいに。変身も破られて、これからどう戦えばいいの?


遥はよっこらしょと足をベッドから下ろした。

左の肘のあたりが張ったようになっている。

足に出来たすり傷は消毒され、包帯が巻かれている。

たぶんひかり先生がやってくれたんだろう。


博斗先生は?

謝らないと。

そして、これからどうやって戦えばいいのか、教えてほしい。


「おはよう、遥」

桜が、首だけ横に向けて笑っていた。

眼鏡をしていない。壊れてどこかに行ってしまったのだろう。

「具合はどう?」


「体は、ちょっと痛いけど、大丈夫みたい」

遥は証明するように床に立った。

平衡感覚が薄れていて少しふらついたが、ぎゅっとシーツを握ってしばらくこらえると、すぐにまっすぐ立てるようになった。


「いやあ、参ったね。完全にやられた」

桜は悪びれた様子もなく言った。

「変身できないんじゃ意味がない。どうしたものかね」


遥は腕を組んだ。

確かに。

力が上がれば怪人を倒すことは出来るようになるかもしれない。でも、それは変身できればの話。


「とっくん」

がばっと起きた燕が言った。

「とっくん。変身も、必殺技も、とっくんしてなんとかしよう」


「特訓すれば確かになんとかなるかもしれません。でも、わたし達には時間がありません。こうしている間にも三つ目、四つ目の十字架が埋められているのかもしれません」

由布が淡々と言った。


いつの間にか、みんな起きて、遥を見ていた。


「どうしますの遥さん。あなたの考えは?」


「もう少し、考えさせて」

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