放課後になると、司令室に博斗、ひかり、五人が揃っていた。


「はい、博斗さん」

「やあ、ありがとう、ひかりさん。でもなんで二個なんです?」

博斗は、ひかりから渡された二個の包みを持って聞いた。


「一つは、稲穂さんからの預かりものです」

「稲穂君の? やあねえもう、引っ込み思案なんだからん。直接渡してくれればよかったのにん」

博斗はでれでれと笑った。


「なんか喋り方が変になってるよ」

「う、うるさいなあ。とにかく、これでもらいたい分は一通りもらったということになる。では、試食といくかな」


博斗はにやにやしながら、もらった順にチョコの包みを開けていった。

「豆乳チョコは後回しで…」

「えーっ、どうしてですかあ?」


「ど、う、し、て、も。翠君のは…な、なんだこれは…」

博斗は、包装を解いたところで手を止めて凍りついた。

翠をモチーフにしたらしい、ダイナマイトなボディの水着ギャルをかたどったチョコレートが現れた。

添えられたカードを見ると、

「食・べ・て♪」


「…ものすごい寒気がする。誰か助けて…」

「ど、ど、どうしてですの?」


「燕君のは…? ありゃりゃ。割れてるじゃないか」

燕のチョコは粉々に割れていて、まるで原形をとどめていなかった。


「あれ~? やっぱりぶつけちゃいけなかったのかな?」

味はどうかわからないが、こう粉々だと食うのにはちょっと手間がかかりそうだ。


「う~ん。そうすると残りは由布とひかりさんと稲穂のだな」

「あの~、誰か一人ぶん忘れてない?」


「まあ、ひかりさんと稲穂君のを先に食ってもいいんだが、やっぱり一つ目は五人の中からにしたいから、由布かな」

「ねー、僕のは?」

桜がくいくいと博斗の袖をひいた。


「よし、決めた。由布のだ」

「もしもーしっ」

「だあっ! 桜君のはパスだ! なんか怖い」

「な、な、な、なにを言ってるのさ? こ、怖いことなんかなんにもないってば。ただちょっと幻覚を見てハイな気分に…」


「そんなヤバイものをつくるんじゃない! 駄目!」

「ちぇっ」


博斗は、しっしっと桜を遠ざけると、包みをがさがさと開けて、底浅の缶を出した。

缶を開けると、紙の仕切りで区切られた、何種類かのチョコが顔を出した。


そのうちの一個をつまんで、博斗はあんぐりと口を開けた。

「ふっふっふっ。では、さっそく味見といくか」

ま、市販のチョコなんてそんなに味が変わるもんでもない。

うまいとかまずいとかそういうことではないだろう。

特に由布の場合、何をあげるかではなく、人に何かをあげるという行為そのものに貴重な価値がある。


ふと、博斗は考えを止めて、こめかみに手をあてた。

「ん…?」

なんだろう、頭がくらくらする。世界がぐるぐると回り始めた。

「博斗先生? 博斗先生っ?」


博斗は上半身から崩れ、椅子から転げ落ちた。

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