第三十四話「ステージの淡い夢」電波怪人タワームー登場

第三十四話「ステージの淡い夢」 1

ホルスが最後の確認をしていると、ピラコチャが研究室に入ってきた。


「ピラコチャさん、いいところに来ましたね。ちょうどいまから生み出すところですよ」

ホルスはカプセルを示した。


「恐怖は原始的な感情ですからね。もっとも引き出しやすいといえます。いかにして絶望に追いこみ、恐怖を導き出すか、それがいまの目標と言えます」


「なに言ってるのかよくわからねえぞ。怪人をさっさとよこせばそれでいいんだ」

「まあ落ち着いてください、ピラコチャさん。大切なのは恐怖と絶望です。少しづつ、スクールファイブに、夢も希望もないということをわからせてやるのです。精神が消耗すれば、奴等もパンドラキーを我々に渡すようになる。奴等を倒してからあれこれ探すより、そのほうが無駄が少なくてよいのですよ」


「相変わらずお前の考えることはよくわからねえな。それじゃあ俺は、しばらく酒飲んで寝て待つとすらあ」


ピラコチャは巨体を揺すりながら部屋を出ていった。

それを見届けてから、ホルスは、怪人を製造する最後のプロセスを実行した。


白い蒸気を上げながらカプセルが開き、なかから怪人が飛び出してきた。

陽光市のシンボル、陽光タワーをあしらった斬新なデザインは、いままでの怪人のなかでもとくにホルスのお気に入りだ。


「電波怪人、タワームー!」

「よく来ました、タワームー! お前の任務はわかっていますね? 陽光タワーを襲いなさい! そして陽光市の電波を乗っ取り、街を混乱に陥れるのです! 邪魔する者には容赦する必要はありません!」


「ムー!」

タワームーは勇んで部屋を出ていった。

それを見送るホルスは、期待に満ちた歪んだ笑みを顔に浮かべていた。

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