塔がびりびりと揺れた。


イシスは穏やかに閉じていた瞼を開き、もの憂げな眼を窓に向けた。


イシスは扉を開け、通路に出た。

石の階段を降りようとすると、階段の下から、むっと熱気が押し寄せてきて、イシスはたじろいだ。


階下が燃えている。

イシスはそう素早く判断すると、階段を駆け降りた。


一人の男が階段を駆けてきて、イシスの姿を認めると、段に膝をつき腰を沈めた。

「爆発が…爆発が起きました! 制御システムが現在暴走中です!」


イシスは愕然とした。この塔の制御が失われると、一時的とはいえ宮殿の防衛に穴が出来ることになる。

「補助機構はどうしたのです? 爆発の原因は?」


「原因は不明、目下調査中であります。爆発は個所を変えながら現在も断続的に続いており、補助機構の作動は不可能です」


イシスは眉根を寄せ、不機嫌に言った。

「わかりました。では、私が行きます」


牢のあるフロアーへの入り口で、イシスはぴたりと足を止めた。

イシスは倒れている同志に駆け寄り、助け起こした。


「私のせいです。間違いない。あの男が…!」

「どういうことですか?」

イシスは、動悸が早鐘のように激しくなるのを抑えようとした。


「申し訳ございません。とらえていた男が…牢から逃げたのです」

五番牢は、すっかりもぬけの殻だった。

牢を閉じていたエネルギーカーテンは消滅している。


イシスは唇を噛み締めた。

オシリスには、イシスの行動を妨げるなにかを感じさせるものがあった。その躊躇がこんな事態を招いたというわけだ。


イシスは、階下に大きく意志を広げた。

強い力の持ち主が力を奮っていることに気付いた。

オシリスは、階下、爆発の中心部にいる。

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